散歩
城の中庭に大きな花壇があって、そこには母上のお気に入りの花が咲いている。
品種改良されて色んな名前の付いた花が、一面に咲き誇っている。
「母上が新しく出来た花にユーリとグレタの名をつけたそうだ。」
白鳩便で知らされた母からのそんな話をすると、すぐにでも見行こうとユーリが誘った。
そんな事を言い出すのは・・・大方執務で疲れて来ているせいだろうが、
誘われればやっぱりなんだか嬉しくて、こうして花壇までやってきたというわけ。
「いつ見ても、すっごい花壇!!」
「あぁ・・ほら、これじゃないか?『未来の毒女グレタ』というのは。」
「うわぁ〜・・・名前と違って、可愛らしい花だな。」
「後はお前の花だが・・・」
あたりを見回して、探すとユーリが短く、あ!と叫んだ。
「見つけたのか?」
「うん、ほら!『麗しのヴォルフラム』の隣!」
指差す先には青みの強いマーガレットのような花が見えた。
ユーリの花の名前は・・・いや、それよりも。
「ユーリ?どうして、ぼくの名の付いた花を知っているんだ?」
「え?・・・・なんで、かな?」
驚いているのはぼくの方なのに、同じく不思議そうに小首を傾げるユーリ。
腰をおろして下からユーリを見上げていると、
いつかどこかで見たような、そんな気さえしてきた。
「お前とぼくは、前にもあったこと、あるのかな?」
それは、不思議な近視感。
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