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ためいき>
ふぅ、と。
ヴォルフラムは、深い深い溜息をひとつ吐いた。
『溜息をつくと一緒に幸せが逃げるんだって、知ってる?』
前にユーリがそんな話をしていたのを思い出す。
だけど今、実に面白くないのだから仕方ない。
今日はユーリと二人、執務は休みのはずだった。
だから二人で遠乗りにでも行こうと思っていたのに、
出かける直前に走りこんできたギュンターに止められてしまったのだ。
なにか難しい草案のようで、随分と時間を食っている上、
先ほどから兄上まで借り出してきて、あーでもないこーでもないと、
三人でごちゃごちゃやりあっている。
対するぼくはというとユーリの向かい側に座り、
二人に挟まれ四苦八苦している姿を眺めているというわけで。
・・・実に面白くない。
「ふぅ。」
もう一度深い溜息。
すると向かい側のユーリが、大きな目を見開いてぼくをみていた。
「?なんだ?どうかしたのか?」
「いや・・・ちょっと、こっち寄って?」
手招きでテーブルに上半身を乗り上げたユーリをまねて、
ぼくもテーブルに上半身を預け、身体をユーリに寄せた。
ちゅっ・・
「・・っっ!?」
「溜息ついてる唇が、あんまり可愛かったもんだから・・・つい、ね。」
前にユーリが言っていた。
『溜息をつくと一緒に幸せが逃げるんだって、知ってる?』
だけど、これは地球だけの話だな。
だって、ぼくの溜息はちゃんと幸せを運んできたから。
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