恋人に
ヴォルフラムに何かプレゼントをと思い、本人に相談してみた。
そうしたら、彼はおれに革表紙の美しい二冊の分厚いノートを注文した。
数日後。
2人で並んで、各自一冊目の一ページ目を捲る。
おれはそこに「和眞辞典」と書き、ヴォルフはそこに魔族語で「眞和辞典」と書き込んだ。
そう。
ヴォルフが贈り物に欲しがったのは、日本語から眞魔国語への、
そして眞魔国語から日本語への「特製の辞書」だった。
そしてこれは二ページ目の話。
「さて・・・これからが問題だな。」
「どうしてだ?あとは言葉をそれぞれを訳して書いていくだけだぞ?」
「うん、でもさ〜言葉を並べるって言ってもさ、分かりやすくするにはどうするか悩ましいだろ?
項目ごとに並べる方がいいのか、それとも地球の辞書みたいに
頭文字の音であわせていくほうがいいのか・・・」
首を傾げて悩んだおれに、ヴォルフもしばらく小首を傾げて、それからこう言った。
「頭文字にするのなら地球語にあわせてもいいが・・・。
地球語と眞魔国語と同時に約すのだから、頭文字より項目の方が妥当だろうな。」
「そうだよな〜、じゃぁ最初の項目は・・・」
そういって最初の項目は一番使うものがいいと思ったら・・・。
「あぁ・・なぁんだ〜。」
「ユーリ?」
「いや、最初の一言だけは項目でも頭文字でもどっちにしろ同じだったんだなぁって気付いただけ。」
何の事だか見当も付かない顔をしているヴォルフに笑いかけ、おれは最初の一言を書く。
もちろん「あ」から始まる文字で。
これからずっと二人の間で使われるべき言葉。
そう。
「最初の一言は『愛してる』だ。おれから毎日、毎朝、毎晩、
ずっと、一生ヴォルフに贈る、最大で最高の贈り物だよ。」
|