10.火の騎士

 

夢を見た。

そこは戦場だった。

青いはずの空が、赤く、黒く、重く燃えている。

燻る香りに、鉄の匂いが混じる。

おれはその真ん中に立ち、呆然と世界を見ている。

 

夢を見た。

そこは戦場だった。

緑の草の絨毯は、赤く、黒く、隙間なく死体で埋め尽くされている。

立ち上る煙には、耐えがたい死肉の香り。

ぼくはその歪む世界の真ん中に立ちすくむ、彼の姿を見た。

 

ふと、視線を移すと、足元は火の海で。

炎に包まれた彼がおれを見つめて『ユーリ』とおれの名を呼ぶのを見た。

 

ふと、彼の視線がぼくを捕らえて。

今にも泣き出しそうな瞳で彼が『ヴォルフ』とぼくの名を呼ぶのを聞いた。

 

驚いて目を覚ます。

胸の鼓動が早鐘の様に鳴っている。

横に瞳を移せば、静かに眠る『彼』がいる。

その姿に、ホッとした。

身を寄せて温もりを感じながら思わず呟いた。

「どこにもいくな、おまえだけは。」

 

ふいにぬくもりを感じて、瞳を開ければ、

目の前には見慣れた青い、ユーリの夜着が目に入る。

僕は今、彼に抱きしめられているのだろう。

抱き込まれ、押し付ける形になった額に、

常の彼より早い鼓動が打つのを感じた。

「生きてる・・・ユーリ。」

その鼓動は命の証。

恐ろしい夢を忘れる子守唄。

 

 

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2006/4/9

50のお題も大分少なくなってきました。

また新しいのかかなきゃなぁ・・・・。

 

 

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