13.ひとのよい夫婦
「あぁ、かえすがえすも残念だ・・・。」
「あぁ、本当にねぇ・・・」
「残念?一体何がそんなに残念なの?」
商人とおばさんが店先で語り合うのを、上腕二等筋も素晴らしいよく熟れた柑橘類の様な髪の色の若奥さんが、
フリルの愛らしい白いエプロンをひらつかせながら割り込んだ。
「あぁ、当代魔王さまと婚約者であらせられるヴォルフラム閣下の事だよ。」
聞かれた商人は嬉しそうに話を続けた。
「お2人とも類稀なほどの美しさ!このお二人の間に望んでもお子が生まれないというのは、
かえすがえすも残念じゃぁないか!」
その言葉におばさんがまた、本当にねぇと頷くのを見て、
若奥さんはそれはそれは楽しそうにハスキーヴォイスを響かせてこう言った。
「おやおや!あんたたちは知らないのかい?当代魔王陛下夫妻は類稀なる子沢山夫婦だって言うのに!」
「なんだって!?」
驚く店主に見せ付けるように指を折る。
「まずはグレタ姫を筆頭に、某所で親代わりに孵化させたというクマハチ12匹に、
人間の国で出産を手伝って生まれたラバカップの子5頭、それからお2人が散歩中に見つけた卵を
孵して生まれたエンギワル鳥と・・・・それに、」
ぽかんと口を開けたままの2人を置いて若奥さんはうふふと笑いながら加えてこう言った。
「確かにさ、お二人の血は残せないかもしれないけれどね。でもあのお人ならきっとこう言うよ。」
『え?グレタ以外でおれとヴォルフの子供?ヴォルフが産んでくれるなら別だけどそれはムリだしなぁ・・。
あ!でもさ、ヨザック!おれ、この国の・・・・眞魔国の皆のこと、自分の子供みたいだって思ってるよ。
あ〜・・・まぁ、その〜・・甲斐性無しの父親で悪いけどね。』
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