無上のこと
肩にユーリが頭を預けて、小さな寝息をたてはじめた。
ささやかで、尊い、幸せな時間
幸せな日々は、時にぼくを思考の迷路に落とす。
例えばもし。
母上が魔王の座を去るのがあと少し、遅かったなら。
ユーリとぼくは、こうして並んで過ごしていただろうか?
たとえばもし。
グレタと打ち解けられなかったとしたら。
揃って弁当を抱えてピクニックをした今日と言う日に、
ぼくらは何をしていただろう?
たとえば__もし。
僕と言う存在がこの世界に生まれていなかったら?
もしくはユーリと言う存在がこの世に存在しなかったら?
ぼくは一体誰を愛し、そしてユーリは一体誰の隣で笑っていたんだろう?
思えば思うほど、僕らは自分の及びも付かない力で引っ張られている気がする。
それを思うとき、ぼくはいつも一つだけ、誇りに思える事がある。
例えもし、これからの道行きで傷つき倒れたとしても、
たった一つだけいえる、ぼくの誇り。
無上の事。
それはユーリに出会えたということ。
星の数ほどの可能性の中から、あなたと出会い、愛し合えたこと。
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