郷愁
落ちる夕焼けの元、ユーリと二人。
「お〜!お日様もお家に帰るのかな??」
おどけた調子のユーリの後姿を少し、可哀相かな?と思う。
見た目はぼくとそう変わらなくても、ユーリはまだ16だ。
地球ではまだまだ子供。
魔族でもようやく大人の仲間入りができる年だ。
ぼくが16の年を数えた頃は、見た目も今のグレタほどしかなくて、
優しい母や二人の兄に、うんと甘えていた気がする。
なのに、今のユーリはその年でその背に、王の責務を背負っている。
それが一体どんな事なのか、いまはぼくにも理解できるから。
「帰りたいか?」
「ん?城に?」
「いや・・・」
地球に、と聞くのが怖くて言葉を濁したぼくに、ユーリはいつものように笑顔を見せた。
「じゃぁ、地球に?そうだなぁ〜、そう言われれば随分帰ってないな〜・・う〜ん、でも・・・」
「でも?」
思ったような反応ではなかったので思わず聞き返す。
「おれ、こっちも好きだから。」
「・・・そうか。」
「こっちにも、手放せない大事なものが一杯あるし。」
その答えにどこかホッとしたぼくの頭にユーリの温かな掌がのせられた。
「ただ、一度でいいから向こうの世界を、ヴォルフに見せてやりたいなって思うよ。」
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