郷愁

 

落ちる夕焼けの元、ユーリと二人。

「お〜!お日様もお家に帰るのかな??」

おどけた調子のユーリの後姿を少し、可哀相かな?と思う。

見た目はぼくとそう変わらなくても、ユーリはまだ16だ。

地球ではまだまだ子供。

魔族でもようやく大人の仲間入りができる年だ。

ぼくが16の年を数えた頃は、見た目も今のグレタほどしかなくて、

優しい母や二人の兄に、うんと甘えていた気がする。

なのに、今のユーリはその年でその背に、王の責務を背負っている。

それが一体どんな事なのか、いまはぼくにも理解できるから。

「帰りたいか?」

「ん?城に?」

「いや・・・」

地球に、と聞くのが怖くて言葉を濁したぼくに、ユーリはいつものように笑顔を見せた。

「じゃぁ、地球に?そうだなぁ〜、そう言われれば随分帰ってないな〜・・う〜ん、でも・・・」

「でも?」

思ったような反応ではなかったので思わず聞き返す。

「おれ、こっちも好きだから。」

「・・・そうか。」

「こっちにも、手放せない大事なものが一杯あるし。」

その答えにどこかホッとしたぼくの頭にユーリの温かな掌がのせられた。

「ただ、一度でいいから向こうの世界を、ヴォルフに見せてやりたいなって思うよ。」

 

 

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2005/10/3

連作です。

望郷の念を感じる陛下に淋しさを覚える三男。

 

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