愛するしあわせ
おやつにどうぞとくだものをもらった。
まるくて、いいにおいで、両手にすっぽり入るくらいのくだもの。
おなかもすいていたし、グレタひとりで食べちゃおうと思ったけれど、
でもみんなで食べたほうがおいしいだろうなって思って、
グレタは大好きなお父さまたちを探しにいったの。
「ヴォルフラム閣下、絵の題材にどうぞ。」とダカスコスから果物を貰った。
妙に角張って確かに絵の題材にするには面白そうな形の果物からは、
爽やかな柑橘系の香りがしている。
どんなものと合わせて静物画でも描こうかと思いをめぐらせたものの、
美味しそうな香りに大切な人たちの顔が浮かぶ。
「・・・ダカスコス、これはもう食べごろか?」
「えぇ、少し若いうちに食べる方がおいしい果物ですから。」
「そうか。・・・ありがとう。」
ぼくは急いで、大切な人たちを探しに出かけた。
コンラートと一緒に近くの町へ視察に出かけた。
おりしも村は収穫祭で大盛り上がりで、目の前にはたくさんの収穫物で一杯。
中に歪んだ三角錐のような果物を見つけて思わず足を止めてしまう。
「あら、おにいさん!それ気に入ったの?」
「うん、面白い形だよな〜!ねぇ、これうまいの?」
「えぇ、とっても!そんなに気になるなら1個持っていきなさいな!」
「えぇ?!い、いや、そんな、わるいよ!」
「子供がそんな事気にしないのよ!ほら!」
人の良さそうなお姉さんが、果物を一つとって自分のエプロンの端で軽く拭いて渡してくれる。
ありがたく受け取って一口齧ろうとしたけれど、この面白い形の果物を、
見せたい相手の顔が思わず脳裏に浮かんだ。
「おねえさん、有難う。でも今食べるのは止めとくよ。これ食べさせたい相手を思い出したから。」
おれはコンラッドと共に急いで血盟城に帰った。
「ヴォルフ〜!ユーリ〜!!」
「おい!ユーリ!!グレタもいないのか?」
「ただいま!ヴォルフ〜、グレタ〜!!どこに居るんだ?」
各人各所から、大切な人を探して歩く。
手には秋の贈り物が一つ。
出会えたら、三人だけの収穫祭を。
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