船乗りが別れを告げるとき
「グレタ〜!!!勉強ちゃんとするんだぞっ!!」
「いいか〜!食事は好き嫌いせずにちゃんと食べなきゃ駄目だぞ!
それから夜は早めに休むように!!」
「向こうに着いたらまず白鳩送ってくれよ〜!おれも手紙出すからな〜!」
留学先に出るため船上に上がった愛娘に向かって、新米パパ二人で必死に最後の抵抗をしている。
そんな父二人の様子をみながら、娘はというとにこにこ笑いながら手を振っていた。
「おとうさまたちも〜、喧嘩ばっかりしちゃ駄目だよ〜!」
「「わかってる〜!グレタ〜愛してるぞ〜〜っ!!!!」」
「グレタも〜!!おとうさまたち、だ〜いすき!!!」
娘のことになるとシンクロ率がUPするらしく、また二人はほぼ同時に叫び声を上げた。
「「グレターーーーっ!!!カム・バァァァックーーーーーーッ!!!」」
「いやいや二人とも、『戻ってきて』もなにも、まだ出発すらしてませんからっ!残念っっ!!」
ボー・・・ボー・・・
何処で仕入れてきたか最新の・・・と、次男は信じているのだが、
相当使い古されたネタに弟と義弟は凍りついた。
『おとうさま〜!いってきま〜す!!』
可愛い娘の声と、汽笛を静かに聞きながら・・・。
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