くどき方も知らなくて
いつからだろう、こんなに彼を好きになったのは。
出会った時は本当に大嫌いで、戦いに負けた時だって、
心の中はプライドを傷つけられて絶対に許せないってそう思っていたはずだったのに。
何も知らない魔王陛下に手を出し、ルールも捨てて戦った事を母に叱られた時、
母に言われた一言を思い出す。
『嫌いも好きも、意味は逆だけれど心を揺さぶっている証拠よ。
だってどうでもいい人なら、あなたは全く心を動かさない子だもの。』
誰にでも優しいユーリは、あの時のぼくの暴挙も軽く流してくれた。
でもこの誰にでも優しいというのが大問題で、
彼はすぐにぼくが婚約者だという事を忘れてしまうんだ。
だからぼくは心の中で声高に叫ぶ。
『そばにいて。』
『一緒にいたい。』
『愛してる。』と。
けれどいつだって口から飛び出すのは、
『このへなちょこ!』
『尻軽!』
『浮気もの!!』
それは愛の言葉には程遠く。
吐き出せば吐き出すほど彼が遠のくような気さえするのに。
そうしてまた、同じだけぼくの心も痛むのに。
口説き方も知らなくて。
それでも彼を手放したくなんてなくて。
ただ側に居てほしくて。
聡い彼がこの「愛の言葉」に、気付いてくれるのを待っている。
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