苦しい至福と至福の苦しみ
渋谷有利、最近寝不足で困っています。
いや、原因は嫌と言うほど分かっているのですが・・・。
「んん〜・・へなちょこ〜〜〜・・・」
お馴染みの寝言で纏わりついてくるヴォルフ。
いままでは男同士だと濁してたから、なんてことは無かったんだけど。
認めてしまえば、愛しい人とこうして肌を触れ合わせて眠る夜を、
心底幸せだと思う今日この頃。
しかしまぁ、腕を回し、足を絡め、寄り添うというよりはおれの体の上に乗り上げてくるから、
寝苦しくてたまらないというのは変わらないけれど。
「うぅ・・苦しい・・。けど、幸せ・・・。」
なんとか自分の腕をヴォルフの下から抜き、彼の肩をぎゅっと抱いてやる。
抱きしめるのに反応して、おれの肩に押し付けた額をすりすりと寄せるヴォルフがまた愛しい。
「でも最近、ただ寝苦しいだけじゃすまないんだよな〜・・」
視線を移せばそこに見えるのは、滑らかな白磁の肩。
僅かに開かれた薄桃の唇から零れる小さな吐息。
震える金糸の睫と、甘い香り。
ヴォルフを愛しいと思えば思うだけ、意識してしまって、眠れなくなるのだ。
「全く・・・これって、蛇の生殺し状態じゃん・・・」
寝ている間に手を出せば、実は結構奥手な三男はきっとクローゼット篭城をきめこむか、
はたまた使われてもいない自室に帰ってしまうかもしれない。
そうすると、愛しい彼を抱きしめて眠るという夜を失ってしまうわけで。
ベットタイムは苦しい至福。
そして朝まで至福の苦しみ。
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