ユーリが向こうの世界に帰ってから、どのくらいの月日が流れただろう。
お前の香りの残るこのベットに潜り込んで考える。
日々薄れていく残り香に、
ぼくの中のユーリの存在まで消えてゆくようで辛い。
初めの頃こそ、ユーリのいないときにまで
彼の自室で過ごすのはどうだろうとか、
ギュンターもコンラートも色々言ってきていたが、
今ではぼくがこの部屋で過ごすことに対して、
何もいわなくなってきている。
何故かなんか聞かない。
そんなことどうでもいいと思っている。
ただぼくにとって重要なのは、ユーリにあえるかどうかということ。
もしかしたら何時の間にかお前が帰ってきていて、
朝になって目覚めたら、隣で眠っているのではないかと思ったり。
それがありえないことであるのは、明白だけれど。
でも。
そっとベットから降りてユーリの部屋の・・いや、
実質二人の部屋の窓を開け放って空を見上げる。
お前の住む世界を、想像すら出来ないぼくの気持ちを分かってくれ。
心配する事は無いと聞かされても、どうしたらいいのか分からないのだ。
何が危険で、何が安全か、分からない。
コンラートやお前を送った眞王様を信用しないわけではないけれど、
それでも・・・。
お前のいる世界は、この世界とは違うのだろう?
教えてほしい、聞かせてほしい、見に行ってみたい。
そうすれば、待つ時間をこんなに苦しく思ったりはしないだろうに。
ユーリ、今何してる?
ユーリ、お前の見ている空にも星はあるか?
ユーリの世界はどんなところだろう?
きっとこことは違うところが多いのだろうが、
また「きゃっちぼーる」や「やきゅう」や、ぼくの知らない色んなことを、
ユーリは楽しんでいるに違いない。
・・・・・・・・・。
ユーリ、このへなちょこ!!!!尻軽!浮気者!!!
悔しかったら、返事の一つでもしてみろ!!!
届かないことくらい分かってるけど、
もしかしたらお前の声が聞こえてきそうで。
「へなちょこいうな!」
お前の決まり文句が、耳の中で小さく弾けた。
もし、もう一度お前が帰ってきたら、
今度は二度と離さない。
二つの世界に愛された、大切な、陛下。
どちらか一方の世界で独占することは許されない。
でもその前に、ユーリはぼくの大切な婚約者だから。
永遠と言うものがあるなら、信じたい。
そこに二人があるのなら。
今すぐ逢いたくて、でも逢えなくて。
お前も同じ気持ちでいるだろうか?
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