「ヴォルフ・・」
スタツアをしてこちらに帰ってきてからどのくらいの月日が経っただろう。
窓辺に立って、星に彩られた宙を見ながらふと思う。
確か最後に君と交わした会話はこうだった。
あの日も君はいわれのない嫉妬に駆られて、
いつものように俺を責めたっけ。
そんな君を宥めながら苦笑いする俺を、
美しいエメラルドの瞳で射抜きながら、確かに君はこう言ったんだ。
「お前は、ぼくの事をすきか?」
即答するには虚を突かれて一瞬黙った俺に、加えていつものあの言葉。
「この、へなちょこっ!」
それは確かにちょっと怒っていて、
でもそれは確かにちょっと優しい声音だったんだ。
ヴォルフは知っていたんだろう。
俺の本当の気持ちを。
それでも知りたかったんだろう。
言葉としてきちんと。
ねぇ?今はそれすら聞こえない。
一緒にいるときには、少し鬱陶しいくらいの君の行動も、
耳にたこが出来るほど聞かされたあの言葉も、
こんなに離れてしまったら酷く遠くて淋しいよ。
もしかしたら、とまたふと思う。
今見つめているこの宙を君も見つめているのかな?
もしかしたら泣いてはいないだろうか。
案外本気で淋しがり気質の君だから。
あの日言えなかった言葉を、今すぐ君に届けられたら、
君は笑ってくれるのでしょうか。
君に今すぐ伝えられたら・・・。
だけど僕には戻る術がない。
行きも帰りも自らの意思とは無関係だから。
だったらいっそのこと、ヴォルフ?
君がこの地球までやってこないだろうか。
いつものように、情熱的に、何処までも何処までもついて来て。
「このへなちょこ!お前はどうしてぼくに黙って行ってしまうんだ!」と
俺を叱り飛ばしながら。
そして俺もこういうんだ。
「へなちょこいうな!!」
星が落ちて朝になって、また一日が始まる。
おふくろがいて、親父がいて、兄貴がいて。
決まった時間に目覚ましのアラームに叩き起こされる。
それは確かに16年間繰り返されてきた光景なのに。
カバンを片手に走る通学路。
道沿いの川に跳ねる、朝日の輝きに、
ハニーブロンドの君を思い出す。
君の髪を跳ねる、日光の輝きを。
逢いたくて、でも逢えなくて。
きみも、同じ思いでいてくれるかな?
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