インターバル**
なんてことはないんだけど。
ちょっと嬉しかったんだ。
ヴォルフとホントの意味で『婚約者』らしくなってきた今日この頃。
『恋人とのデート』というものに夢を見ている花の16歳の俺としては、
街角を二人で手を繋いで何とはなしに歩いていたりしたいわけ。
だからその旨を愛しの婚約者様に訴えたら、
人前でそういうことをするのは不健全だとか、
手を繋いでいたら何かあったとき剣を抜き難いから嫌だとか、
顔を真っ赤にしながら嫌がるんだよね〜、これが。
だったら安全な城の中でなら問題ないんだろうとどうにかこうにか説得して、
今日は城内一周のデートと相成った。
見慣れた城を手を繋いでてくてく歩く。
お馴染みの兵士やメイドさんがキャーキャー言ったり、
なぜかオイオイ泣いたりしている横を、本当にただテクテクと。
「おい、ユーリ。」
「ん〜?なに?」
「・・・お前はこんなのが、楽しいのか?」
「本当は町に一緒に行きたかったのに、断ったのはヴォルフだろ?」
また無言でテクテク。
しばらく行くと城内の一角にいくつもの美しい装飾の鏡が並んでいる場所があって、
その横も手を繋いでゆっくり歩いた。
鏡から鏡。
歩いてゆくたびに俺たちの姿が鏡から鏡に出たり入ったりしていく。
「あ・・・」
そしてその時、あることに気付いた。
「どうした?」
「意識してないのにな〜?」
「何がだ?ちゃんと説明しないとぼくには良く分からないぞ。」
足は止めずに困惑気味の瞳をこちらに向けたヴォルフに、
おれも同じく足は止めずに空いた手で鏡を指差した。
「俺とヴォルフのインターバル、同じなんだ。」
だからなんだと問われても、答えは出ないし。
背格好変わらないのだから当たり前だといわれたら、まぁそうなんだけど。
でも。
何とはなしに嬉しかったんだ。
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