ピロートーク
「今日、こんな事があったよ。」
風呂上りの温かな体を、冷えた魔王ベットに滑り込ませながらおれはそう切り出した。
「また突拍子もないことでも提案して兄上を困らせてきたか?
全くお前という奴は本当に・・・」
先に布団にもぐりこんだ温かな体は、優しい手触りの夜着に包まれ、
ゆっくり少しづつ動いて、最後にはぴったりとおれの体に寄り添った。
「まぁね、突拍子もないってことは少しは自覚してるんだけどね。」
「それが分かっていながら改善の余地が無いとは、お前は本当にへなちょこだな!」
生まれも育ちも、基本的な常識すらも違う世界で生まれ、育ったおれたちは、
身を寄せ合っていても、意見が真っ向から対立する事もしばしばだ。
人が見れば驚くくらいの剣幕ではじき出すお互いの言葉。
最後には罵りあいに近い形になってしまうことだってある。
でも、黙っていたって心は見えない。
それが痛みを、傷を、残すとわかっていたって伝えなきゃいけないことだって一杯ある。
おれたちはそれを無意識に理解しているだけなんだと、最近ようやくおれにもわかってきた。
「お前の意見をききたいんだよ。
合ってるとか間違ってるとか結論は急ぎたくないんだけどさ。」
「分かっている。で、今日の懸案はなんなんだ?」
「それがさ〜・・・」
月明かりの下、多分喧々轟々の話し合いが続くだろう。
もしかしたら薄明るい日の光と朝靄が、
眠りすら忘れたおれ達に水を射すまで続くのかもしれない。
でも、おれはそれを嬉しく思うよ。
だって。
だってさ。
それは新しい『今日』という日が生まれる瞬間を、
君という大切な人と共に迎えられる幸せ。
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