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「大賢者に聞いたぞ!」
ヴォルフラムは嬉しそうにおれに駆け寄り、話し出す。
呼気にはわずかに酒の香り。
「何でも地球には『魔王』という名の酒があるそうだな!」
「あ〜・・なんか聞いたことはあるけど。美味しいけどスゲー高いって話・・・」
「当たり前だ!なんと言っても『魔王』だからな!
そんなに庶民が軽軽しく手に出来るものであってたまるか!」
「いや・・・結構酒好きの方は飲まれてると思うけど・・・」
「なにーーっ!?ならばおまえはなぜ持ってこない?!」
現魔王の婚約者ともあろうものが『魔王』の名を戴くものを口にしていないとは!と、
激しく憤慨するヴォルフの頬は常より赤い。
「・・・・おまえ・・・酔ってるな?」
「酔ってようが、酔ってまいが今は関係ないジャリ!
今は『魔王』という名の酒の話をしてるジャリ!」
「なんだよ、そんなに飲みたいの?」
「のみた・・・い。」
「・・・やけに素直だな。」
「でも、のみたくない!」
「なんだそれ?!」
「だって・・・」
唇を尖らせて俯くヴォルフが一言。
「お前が・・・ゆーりが、禁酒禁煙だからな。
お前がいつか大人になって一緒に酒を酌み交わせるようになったときに、
一緒に・・・・・飲みたい。」
真っ直ぐで、ひたむきで。
でも言われる方としては多少、こっぱずかしいヴォルフの直球。
いつだっておれの気持ちど真ん中を狙って投げ込まれるそれに、結局敵わないおれ。
「それなら・・・さ。」
「なんだ?」
「おれが25過ぎて、成長期が終わったら・・・『魔王』買ってきてやるからさっ!
そん時に一緒に飲もうよ。な?」
その言葉に満面の笑みで頷くヴォルフに、
『魔王のほかに美少年も持って帰ってきてやるよ』とこっそり誓ったのは内緒の話。
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