シャープペン
ずっと昔、女子が言ってた。
シャープペンを好きな人の名前の数だけノックして、
それを折らずに使い切ると。両思いになれる・・・とか。
今、なぜそんなことを思い出したのかも分からないけど。
今まで惰性で版書していた「相棒」の頭を机にコンと落とし、
カウントを0に戻した。
『フォ・ン・ビ・ー・レ・フェ・ル・ト・きょ・う・ヴォ・ル・フ・ラ・ム・・・と。』
かちかちと小気味いい音を立てて出てきた、黒い芯。
後はこれを折らずに使い切るだけだが、問題が一つだけあった。
それは出てきた芯の長さは約1センチ程度あるということ。
「・・・・・。」
これでどこをどうやって書けというのだろう?
『そうか、名前だけでやればいいんだ。』
ただでさえ長い姓を持った彼の名を、姓名でやるから大変なことになるわけで。
じゃぁもう一回とまたカウントを0にして、
かちりかちりと押し出せば、さっきの約半分くらいの長さの芯がお目見えだ。
これならなんとかなるかもともう一度、板書に取り掛かった。
折れないように折れないようにと必死に板書を続けること数十分。
授業の終わりを示すチャイムの音と筆圧の無いヘロヘロの文字にふと我に返った。
「ヴォルフとおれってすでに両思いなんだから・・・これって無駄なんじゃないか?」
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