◎ お花畑で会いましょう ◎
卒業式出席だけで解放された、その午後。
嬉しさではしゃぐ両足に力を込めて、自転車を漕ぎ出す。
軽くなるペダルをご機嫌で走らせていたが、
河川敷でふと足が止まった。
それは、おれのホームグラウンド。
煌く水面に沿った河川敷の坂を埋め尽くすのは、一面の菜の花。
「もうすっかり春だなぁ・・・」
どこから現れたのか、愛らしい蝶が沢山舞い飛ぶ。
吹く風さえも、菜の花の香りを含んで春満載だ。
「すげー花畑!向こうの皆にも見せてあげたいな。」
菜の花は咲く期間は短いけれど、まだ楽しみはある。
揺れる菜の花と入れ替わるように、大根菜の花が咲くからだ。
形状は菜花と大差ないけれど、花びらの色は真っ白でまるで雪のよう。
河川敷一面が真っ白に変わるのも本当に綺麗だから、
きっと皆喜んでくれるだろう。
「あれはアレで綺麗なもんだしね。」
そうしてそれさえも終わればまた、深緑の緑で埋め尽くされる。
深緑が夏を呼び、空高く、一面に青い青い空。
そうしておれの暑い夏の到来。
「緑と青って相性いいのな。」
それから、青空にゆれる、黄色と白い花も。
それは、かの国においてきた大切な人を思い出す要因にしかならず。
「結局どこにいても、お前を思い出すんだから。」
当然だ、と大好きなアルトの声が耳の奥に響いた。
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