しずく
噴水の端に腰掛け、水面を見ているヴォルフを見つけた。
一瞬神話で花になってしまった、美しい妖精の話を思い出すが、
今のヴォルフの表情を見れば、自分の姿に酔いしれて、
花になってしまった妖精とは似ても似つかぬような沈んだ顔をしていた。
俯くヴォルフの瞳から一粒涙が離れて落ちて、
それが空気を従えて、噴水の中へ落ちる。
その背中があまりにも寂しそうだったから、
声をかけようと一歩踏み出したとき。
「まるでぼくらのようだ。」
ヴォルフラムが小さく呟いた。
「まるで、ぼくと・・・ユーリのようだ。」
水の中をすり抜け、空に帰る泡を水に紛らせようと、
その白磁の手を差し入れているヴォルフ。
「どうしたらいい?」
その問いに、おれは心で返事をする。
知ってる?ヴォルフ。
空気ってさ、目には見えないけれど水を含んでいるもんなんだよ?
つまりはさ、泡の中にはず〜っとず〜っと雫が住んでいるってことなんだよ。
だから、ね。
泡の中の小さな雫が集まって、雨になって大地を潤すまで。
おれの中の想いが集まって、いつか形に出来る日まで。
どうか・・・もうすこしだけ。
|