◎ キャンディ・キス ◎ *微エロ?注意
 

バレンタインの贈り物と言って渡した飴を、ころころと口内で転がすヴォルフの頬が、

まるで向日葵の種を銜えたハムスターの頬みたいに、小さく膨れていたから、

なんだか可愛くて気を抜いて眺めていたおれに、それは不意に訪れた。

「あ・・・・そういえば。」

「ん?ヴォルフどうし・・っっ!!?うっ?!う・・ぷっ、ぅ、な、なにするんだよっ!!」

突然後頭部を押さえられ、ヴォルフラムに口付けられたのだ。

しかもただのキスじゃなかった。

口内を荒らすような、深い、深い、キス。

その証拠に、おれの口内には食べた覚えの無いのど飴が転がっていて、

本来ならこの飴がいるべき目の前の彼の口の中は、空っぽになっている。

動揺するおれとは裏腹に、その奥に悪戯心を映して、細められた翠の瞳。

「思い出したからだ。」

「なにを?」

いきなりの口づけに、一旦は引いた熱がまた頬に上った。

おれはそれを宥める様に、頬を拳で隠したが、

当のヴォルフはというと、何事も無かったかのように飄々としている。

「ま、ましまろか飴玉は、ばれんたいんのお返しに贈るものだろう?

 だからぼくは今お前にお返しをしただけだ。」

「だからって、おまっ・・!こんなっ、急に・・!」

「そうは言っても、お前のこちらとあちらの行き来は予想がつかないからな。

ばれんたいんも、ほわいとでーも、折角の行事ごとだ。

できる時に、きちんと、ぼくにとってお前がどんなに大切で、

特別な存在なのか、伝えておきたいと思ったまでだ。」

また瞳を細めて、そうして横に引かれた桜色の唇。

「!!・・もっ、おまえなぁ・・・」

さっきのおれの言葉をまるっと持ち出してきたヴォルフに、

してやられて悔しい気持ちも、今は無く、

ちゃんといえてないマシュマロの発音さえ、もうどうでもよくて。

ただわかったのは自分の中にあった、理性の糸が、ぶつりと音をたてて切れたことだけ。

どうしてくれよう。

この、小悪魔を。

魔王を惑わすなんて、本当にいい度胸だ。

でも。

あぁ・・・おれはなんて、幸せなんだろう。

「ばっか、ヴォルフラム。ホワイトデーのお返しは、バレンタインの三倍が基本なんだぜ?

 たった一回のキスじゃ、足りねーよ。」

ヴォルフラムの白い頬に手を添えて、続きを促すようになぞる。

一瞬身を引いた彼を抱き寄せて、強引にくちづけて、

おれの口内に押し込まれたのど飴をもう一度、ヴォルフラムの口内に押し返した。

「んっ・・・ふっ・・・・っう・・」

ヴォルフの形の良い鼻から抜ける魅惑の吐息。

押し返された飴を受け取るように絡められる、苺みたいに赤い舌。

それがまた、触り心地の良いマシュマロみたいな唇までも舐め上げるから、おれは。

「・・・仕方が無い。三倍だな。ユーリ、覚悟しておけ。ぼくを甘く見るなよ?」

「・・・望むところだよ。おまえこそ、もう、泣いても、逃がさねーからな。」

きつく抱き寄せてまた、口付ける。

飴玉が、小さく小さく、甘く、溶けゆくまで。

 

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2007/3/7

本当は二つで一つだったんですが、繋ぎがね(苦笑)

ここ、陛下が流されてきた場所なんですけど・・・この後の二人って・・・ね(笑)