もし・・・2(ユーリの許婚が現れたら?)

 

コンラッドも帰ってきておれたちは、また「日常」を手に入れた。

当たり前だと思ってた毎日を、失って初めてその重さに気付く。

けれどこうしてもう一度、手に入れた喜びも同時に重い。

だから、今度は大事にしよう。

そう心に決めて、歩き出した「日常」は、思ったよりも早く崩れようとしていた。

 

・・・いや。

ある意味では崩れたんじゃなくて、

おれたちらしいといえば、「らしい」話ではあるんだけど。

 

ようやく帰ってきたコンラッドと共に、

久々の朝のジョギングに出かけたときのこと。

普通だったらこの時間では、まだまだ夢の中にいるヴォルフも、

珍しく起き出して来て、「一緒に走るぞ!」と意気込んで外に出た。

いつもは城内を数週廻るだけだけど、

せっかくだから近くの丘まで走ってみようかという事になって、

向かった丘の上に何故かウェディングドレスを着用した娘さんを一人、発見。

・・・気になる。凄く気になる。

なんでこんな時間に、こんな場所に、花嫁さん???

どう考えても可笑しいだろうと、好奇心が騒ぐのを押さえられなくて、

おれはコンラートが止めるのも聞かずに、娘さんに声をかけた。

「おはようございま〜す。・・・どうかしたんですか?お嬢さん??」

「あのっ!眞魔国は、ここですよね?」

「え、えぇ。そうですけど。」

「あのっ!私、私、この国の王の・・・魔王の許婚で・・・」

「はぁ、そうですか。この国の王様のね・・って・・・えぇーーーーっ!?」

それって、おれ、だよな??

この国の、眞魔国の王様って、渋谷有利原宿不利、だよな?

「ゆ〜う〜り〜〜っ!!貴様というやつはーーーーっ!!!」

混乱するおれの後ろからは、紅蓮の炎のオーラを立ち上げながら、

おれの公認婚約者がゆらりと側にやってきて、

今にもおれの首を締め上げようと、白磁の指を鳴らしている真っ最中だった。

 

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本当はユーリの許婚を名乗る女の子は「村の掟で数百年に一度、魔王の花嫁として差し出す」生贄みたいな子で、

ユーリが「そういうの馬鹿げてるから〜。お家に帰っていいよ?」みたいに説得しようとするのを、

「据え膳食わぬは男の恥といいますけど、差し出されたのにつき返されるのは女の恥ですっっ!!」みたいに言って

なかなか引かない頑固者で、それを横で聞いていたヴォルフが「うるさいじゃりっ!ユーリの婚約者はぼくじゃりっっ!!」

といつものように割って入り・・・。

「あぁら、だったら私と勝負してみる?」「臨むところだーっ!!」っていう展開を想像していたんですけど・・・。

シリアスバージョンに思いを入れすぎたせいで、何度書いても、締まらないので・・・(苦笑)ま、予想という事で。

 


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