<炎の中で>
激しい火山の噴火に急いで撤退している時、
大シマロンに差し出された子供たちと遭遇した。
『魔族・・・。』
子供の口から吐き出された言葉。
その言葉に聞こえる嫌悪の重さが緊急時なのにぼくの耳に深く残った。
無数の炎が森を焼く。
次に次に退路が立たれ、それでもどうにか生き延びようと足掻くぼくら。
兄上やコンラートの声が周りの兵をなんとか奮い立たせていた。
「うわぁぁ〜ん、こわいよぅ〜!!」
その時、一陣から離れた一人の子供が、燃えた大樹に阻まれて炎に飲まれた。
「くっ!!」
「ヴォルフラム!」
子供の影が炎に消え行く瞬間にぼくは咄嗟に駆け出していた。
「大丈夫か?!」
炎を払った剣を仕舞い、泣きながら炎の中で立ち尽くす子供に声をかける。
「う・・うぅ・・っ・・」
恐怖に引きつった顔。
自らを取り巻く炎からの本能的な恐怖と、
魔族であるぼくに対しての人間としての知識の与える恐怖。
その狭間で揺らぐ幼い命。
「大丈夫だ、怖くない。ぼくがお前を守るから。」
震える小さな身体を両腕に抱く。
怖いのなら目を閉じていて。
ぼくの愛する主は、お前の死を望んでなどいない。
だから焼き尽くすために地を舐める炎からぼくがお前を守ろう。
そう______癒しの雨が降るまで。
「ヴォルフラムっ・・っっ!!!」
確かにそう聞こえた。
愛しい人の声。
じゅわっと激しい音と熱い蒸気の狭間から、ユーリの姿を見つけたのは間もなくの事。
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