「裏・闇からきた魔物」
PART 1 〜 きみの名を呼ぶほどに 〜
大きなケーキに乗った、可愛い砂糖菓子のお菓子。
アニシナに追いかけられる、ギュンターとグウェンダル。
腕組みしてなにやら画策中の村田とコンラッド。
そして、花畑で遊ぶグレタとベアトリスを見守る、おれとヴォルフラムの人形。
それはぼくらのごくごく日常の風景で、それは切り分けられたケーキの上で愛らしく笑っていたのに、
一口も口に入れないまま、床の上で無残に潰れてしまっていた。
________けれどおれはそれに気付かない。
目の前で攫われていく君のその顔が、目に焼きついて離れないから。
「ヴォルフラムッ!!!ヴォルフラムッ−ッ!!!」
思えばおかしなことばかりだ。
おれが名前を呼んで、君が振り返らないことなんて、なかったのに。
おれが名前を呼んで、君の足が止まらないなんて事、なかったのに。
「ヴォルフラム!!止まれよっっ!!おいっーーーーーっ!!」
目の前で、訳のわからない奴の馬に、荷物のように乗せられた君の金髪が揺れる。
慣れない馬の手綱を取りながら思う。
『君を、取り返す。かならず・・・。』
おれが名前を呼んで、振り返らない君なんて見たくない。
おれが名前を呼んで、止まらない君なんて見たくない。
_________________おれの側を離れていくなんて、ゆるさない。
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