「裏・闇からきた魔物」 

PART 2  〜 揺られる船の上で 〜

 

揺られる船の上で、ぼくはこの場に見つけてはならないものを見つけた。

黒い髪に黒い式服、今は閉じられているがあの瞼の下にも黒い美しい瞳が隠れているだろう。

「・・・ユーリ・・・?」

近づいて、触れて、確かめたい。

けれどゆらゆらと揺れる船の上、いつもの船酔いとも違う妙な不快感が体を苛んで、

上手く体を動かすことが出来ず、その寝顔を見つめていた。

ふとユーリの瞼が震える。

瞼が開くのにあわせて、大好きな黒い瞳が瞼の下から現れた。

けれどその呼びなれた名前を呼ぶ前に、せり上がってきた嘔吐感に思わず窓辺へと駆け出した。

一頻り吐き出すぼくの背中に、温かいものがゆるりと上下する。

「・・・無事でよかった。」

「・・・これが無事なものか。」

そのユーリの言葉は酷く優しくて、掌がとても温かくて。

だけれど素直にそれに寄りかかることなど出来ず、悲しいくらいの習性で思わず返してしまった。

重たい体をなんとか寄りかけたあと、どうしても言っておきたい言葉を思い出し、ユーリに呼びかける。

「どうしてついてきたんだ!?魔王が一緒に捕まるなんて・・!!」

だって、そう前置きしてユーリにしては珍しく、目も合わせずに呟いた。

「だって・・・お前が訳がわからない奴に捕まるのなんて嫌だったんだよ。」

 

言葉も思考も、一瞬止まって。

その言葉を反芻する。

胸に競りあがってくる喜びと、お馴染みの嘔吐感をやり過ごすように、

一瞬の間ののちぼくはようやく、声にした。

「・・・・ぼくだけならどうにでも出来たのに。足手まといが増えただけだ。」

 

 

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2005/9/6

ある意味ヴォルフにも信じがたい光景だったのかもな、と思ってしまったこの船の上の光景。

目を見て笑って殺し文句を吐くユーリ、というのが常なのに、

今回はテレでも隠すかのように船室(??)内を見渡しながら何気なく・・・口説きましたよね(笑)?

吐いてる姿だって、見慣れた大好きな光景だよって。

側にいないほうが君が傷つく方がよっぽどつらいんだよ、って。

・・・うふふVv

 

 


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