何もかもを失った。
おれは______何もかもを失ったんだ。
何のためにここに来た?
もしおれが従順で、型どおりの真面目で大人しい王さまだったなら、
きっと麗しの王佐も、オレンジの髪のお庭番も、あんなひどい目にあわずに済んだ。
そして・・・蜂蜜色の髪の大事な、大事なおれの婚約者も。
もっというならこの旅さえ行かなければ、信じてやまないおれの名付け親と、
嫌な形で再開することも無かったし、そのことで心乱されることも無かったのに。
・・・・本当におれは何のためにここに来たんだろう?
でも・・・もはや、何一つ考える心は生まれない。
おれは何もかも失ったんだ。
そうして残ったのは、無力でちっぽけで、何にも出来ないおれだけ。
誰かがおれの手を引いている。
それに合わせて、おれは諾々と足を運ぶ。
そのことだけが、体を前に、前に、一歩一歩進めるけれど、
おれ自身はどこに向かっているかも分からないし、
どこに行き着くのかも分からない。
でも。
心のどこかでわかっていることがある。
『何をやっているっ!!あまったれるなっ、このへなちょこ魔王!!』
それこそが今、暗闇を歩くおれの「EXIT」を知らせる、
誘導灯だということに。
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