『麗しのヴォルフラム。
王宮の花よ。
どうぞ、その綻ぶ笑顔が零れる前に、
わたくしの方を一目・・・・』
歌うように。
囁くように。
耳をくすぐる、甘い言葉。
こんな言葉、ウンザリするほどに捧げられてきたぼくなのに。
どうして今、たった一言の言葉にこうまで心揺さぶられるのだろう?
_________綺麗だよ、ヴォルフラム。
たった一言、ユーリが囁く。
可愛いなんて、綺麗なんて、
82年の年月の中でそれこそ聞き飽きるほどに、
浴びるほどに聞いてきたはずなのに。
「なんでだっ・・・っ、こんなっ・・!」
ユーリの一言にこんなに動揺している自分がいる。
「顔赤いよ、ヴォルフ?てかお前・・・・緊張してる?」
ユーリの丸い、漆黒の瞳がぼくを覗き込むと、
その瞳に映るぼくは、今まで見たことも無いような姿をしていた。
「う、う、う、うるさいっ!!」
どうしてこんな?
なぜだ?
自分の動揺が、自分でも良く分からない。
「そう?なら・・いいけど。」
「・・・・・!!?」
腰に回されたユーリの腕にほんの少し、力が篭る。
また、どくんっと鼓動が跳ねた。
なぜだろう?
でもこの胸の揺れを不快には感じ無いぼくも確かにそこに居た。
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