「それで?その、ひなまちゅり〜とやらには、しきたりとかないのか?」
普段は何故か僕を敬遠して、出来るだけ避けようとしている、
フォンビーレフェルト卿が、今日は小さな書き物用のノートを抱えてやってきた。
彼が進んでここに来る理由なんて、ただ一つ。
大好きな渋谷の為に、地球のことを知りたい時だ。
普段あんなに避けようとするくせに、この時ばかりは嬉々としてやってくるのだから、
彼も現金といえば現金だけど。
ん〜、これも愛だよね、愛。
ほんと愛されているね、渋谷ってば。
「そうだね、祭りの概要としてはさっき話した通りで。」
「うむ、そのあたりは理解した。」
僕が話した事をノートに書き付ける、フォンビーレフェルト卿。
その表情は真剣で、真っ直ぐだ。
きっとこうしてメモしたことを、渋谷に見つからないように何度も復習して、
完璧な名付け親に負けないように、渋谷の理解者になろうとしているんだろう。
・・・まったく。ほんとに妬けるよ、君たちには。
でもさ、こうあんまりおアツイところを見せ付けられると、
なんかこう苛めたくなっちゃうのが、僕の悪い癖らしく・・・。
「そういえばひな祭りといえば。」
「なんだ?なにかあるのか??」
「ひな祭りを讃える詩というのがあって・・・」
「それは有名なものなのか?祭りで必要なものか?」
「そうだね〜、日本古来のものだし、ウェラー卿も知らないんじゃない?」
僕のその一言にフォンビーレフェルト卿の表情が一気に変わった。
「なんだって?!コンラートも知らないことか?よしっ!その詩をぼくに教えろ!」
・・・・・・・単純だなぁ。
真剣にノートを広げて、僕の歌う歌の歌詞を書きつけながら、
必死に自分でも口ずさもうとする彼のエメラルドの瞳の中に、
僕にネタを仕込まれた婚約者から放たれる強烈なボケに、
細かく必死に突っ込みを入れるであろう双黒のマ王の姿を垣間見るのだった。
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「教えて、偉い人!!」みたいなノリで、ムラケンに地球のことを
レクチャーしてもらうヴォルフを補完。
ユーリがコンラッドと城下に出かけたりしている間に、
きっとヴォルフは執務を終えて、ムラケンのところに行って、
地球のことを(しかもなんか間違った知識)お勉強しているのでしょうね。
これはその4のユヴォルに続きます。
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