6BM8 真空管アンプ製作奮戦記

 

真空管アンプ 回 路 パーツ 筐体製作 前面パネル製作 配 線 いけません 再配線 完成

 

真空管アンプ

ある日新聞を読んでいたら横浜のある個人タクシーの運転者さんの車に真空管のアンプを積んでジャズを聴いているという記事があった。お客さんにも真空管アンプの音が好評でリピーターも多いそうだ。そういえば昔はほとんどの電気機器には真空管が使われていたという記憶がよみがえった。しかし、私の育った時代は真空管からICにかわり、子供のころは道端に捨てられたテレビやラジオなどから真空管をはずして爆弾としてコンクリートの道にぶつけて割って遊んでものだった。だから、ほとんど真空管でできたオーディオの音を聞いたことがないのだ。どんな音がするのだろう?オーディオや音楽が好きな人はみんな口をそろえて『やわらかい音でいいよ』というのでますます聞きたくなる。大型電気店で真空管アンプを探すとちゃんと数社から真空管でできたアンプが発売されているがとても手の出るような値段ではない。インターネットで『真空管アンプ』でホームページを検索すると自作の真空管アンプのホームページが多数あった。その上、回路図や作り方、調整のやり方まであった。回路は、なるべく単純なものを選びパーツリストを作成する。さらにパーツの調達もわざわざ秋葉原まで行く必要もなくほとんどネットで注文できそうだ。ネット調達で見積もりを作成すると、3万円くらいでできそうである。悩むこと1週間。ついに真空管アンプを自分で作ることに決めた。

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回 路

回路を1から作るのは大変なことであるし試行錯誤もあるので、すでにある回路図を使わせていただくことに決めた。使わせていただくのは、一番シンプルで信頼性がありそうな3極管接続Ver.1 6BM8 シングル ステレオパワーアンプ U』の回路図である。アンプの決め手となる真空管は6BM8というオーディオ用真空管で日本ではすでに生産されていないようだ。しかし、ロシアや東欧、中国で生産は続いているようなので一応入手はできそうである。

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パーツ

回路図とにらめっこして使われているパーツをひとつずつリストアップする。回路図は電源部と増幅部からなっており、増幅部はステレオだから部品も2倍にする。ちなみに図面は片チャンネルしかない。次にネットで部品調達をする。とりあえず秋葉原で検索すると当然のことながら秋葉原の電気街のホームページがたくさんある。その中で、『若松通商』というお店がネット通販をしていて取り扱い部品も多い。ちゃんと重要部品である真空管6BM8もあった。しかしトランスがいまいちなのでとりあえずトランス以外の部品をここで調達。次に残りの部品であるトランスを検索すると『ノグチトランス』というトランス専門会社がネット販売をしていた。回路図ではタンゴのトランスを使用していたが高い。オーディオトランスといえばサンスイが有名である。今は、サンスイブランドとして橋本電機が製造しているようだ。これも高い。しかし、世の中には救いの神がちゃんと存在する。ノグチトランスオリジナルというのがあり、それも真空管用である。安い!と驚くほどではないがこれを買わない手はない。

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筐 体

さて、最後に筐体の製作に使う材料であるが、アルミ板を加工して作ろうかと製図までしたが、アルミ板自体が高い。はっきり言って出来合いの筐体を買ったほうが断然安いのだった。計画の変更を余儀なくされ途方にくれていたころ、Todoさんがジャンク品なら200〜300円くらいで筐体が手に入る上、おまけに抵抗やコンデンサ、トランジスターなど使えそうな部品も取れるからお買い得だと教えてくれた。そういえばそうだ。さっそくジャンク探しに・・・しかし電車代使って数百円のジャンクを買いにいくのもどうかと思っていたら、ちかくに『ブックオフ』があることを思い出し、たしかハードオフといって電機製品も売っていた。ジャンクもあったはず・・・。車を飛ばしハードオフへ。店内を探すとありました。ジャンク品の山。ジャンクでも動くものが多数あり、単に古いという理由でジャンク扱いになっていたものもあった。値段は100円から1万円まであり、今回の場合筐体が目的なので中身はどうでもいい。見た目のよいもので適当な見た目のよいものを探す。あった!衛星放送の受信機のようだ。これを300円で買った。

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筐体製作

アンプの箱も手に入りさっそく加工の工程に入った。はじめにジャンク品で買ってきたものをバラス。前面パネルはプラスチック製ではめ込み式のために比較的簡単に外れた。次に中にある基盤をはずす。電源コードや後ろのコネクター類は使えそうなのでとっておく。つぎに全部ばらせたところで上部にトランス3つ乗せる穴を開ける。はじめに四隅にドリルで穴を開けジグゾーで四角に切るのだが、予想に反しててこずってしまった上に騒音がひどい。近所の方に迷惑にならないようにと思いながら遠慮したがたいして努力の甲斐もなく相変わらずの騒音だった。次に真空管のコネクターを取り付ける穴を開ける。円形なのでジグゾーでは無理。しかたなくドリルで穴をいっぱい開け後はラジオペンチで切るというよりは引きちぎった。雑な仕事だったが、トランスを載せれば上の写真おとおりでした。

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前面パネル製作

次は見栄えが一番大切なフロントパネルの製作です。材質は何がいいか迷うところだが家にあるものを使うこととした。フロントパネルになりそうな家にあるものといえば亜鉛の板金と白色のプラスチック板があった。白色のプラスチックもなかなか研究室の手製の実験機材のようでかっこいいかもしれないと思い加工に入ったが電動工具できると熱でとけて無残な切り口となりあえなく挫折し、途方にくれていると泥だらけのステンレス版が物置の床下から見つかりました。洗えばきれいになるからこれを使うことにした。厚さは1mmにもならないので鉄板はさみでジョキジョキ切り、パイロットランプとスイッチとボリュウムと入力切替の穴を開けた。スイッチは四角いので鉄板はさみでジョキジョキ怪我をしてはいけないので端は後ろに折り返す。1時間か2時間で終わるだろうとたかをくくっていたら半日もかかってしまった。上の写真は外観が出来上がったところ。

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配 線

さて、いよいよ本番の配線作業です。配線図とにらめっこをしながら半田で部品を取り付ける。なれないので半田こてが指にあたりジューッという音とともにやけどがいくつかできてしまいました。配線が以外に難しくリード線を左手に持ち右手には半田ごて。そして半田はどこで持てばいいのだろうか・・・。手足口すべて使ってはんだの作業を行いました。上の写真のようにもともとの箱の構造を尊重して配線を行った結果、ふたをあけて調整することを考慮のうえ配線をしていったところ、リード線が異様に長くなってしまいましました。これはもしかしてアナログ回路では致命的な欠陥となるかもしれないと思いながらも極力短く短くしていきましたが・・・

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いけません

すべて組みあがったところでもう一度図面を見ながら配線のチェック!3回チェックし間違えないので、真空管1本を差込、電圧測定するところにテスターのプローブを取り付け震える手で電源プラグをコンセントに差込んだ。5秒たっても煙は出ない。OK!スッツチON!電圧が上がっていく50V・60・70・・・70Vに調整しなければいけないのに80Vで停止した。10ボルトも高い。可変抵抗器をいじっても調整の仕様がない。でも80Vは許容範囲だからまあいいか。電源を切りしばらくして残りの真空管を取り付ける。スイッチON!わっ!110Vになっちゃった!その上針が右へ左へ大きく揺れハウリングしている。だめだ!緊急OFF!これではいけません。いい音で聞くため1から回路を組みなおすことに決定。

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再配線
 

前回の失敗でやる気が失せ1ヶ月以上にわたりこの残骸と化した真空管アンプは部屋の片隅で寂しい思いをしていた。夏も本格的になり外に出るのもだるいのでこの真空管アンプの計画を練り直した。配線が長くなったのは箱の構造を尊重したことにあるため今回は徹底的に無視し箱の下に穴をあけることで箱を上下に開かずに電圧調整ができる構造にすることにきめたのである。今回はサンダーで豪快に切断した。基盤も本来はラグ板を使用するようであるが手持ちがないので右と左用に分離しリード線の距離を短くした。またアースもしっかり取れるように太い銅線を使用した。部品をすべて取り外し1個ずつテスターで異常がないか検査した。ダイオードが飛んでいた。トランジスターはOK。インターネットでダイオードを注文する。輸送費のほうが高いのでついでにA級のボリューム2個とちょっと高そうなつまみを注文した。後は気合を入れて配線だ!

完成したところで再度の挑戦!配線OK!テスターOK!真空管OK!電源投入!テスターの電圧の読みはいきなり30Vそして0Vへ。真空管のヒーターが温まってくると10V・20V・・・とあがってくる。そして60Vこの辺でとまれ!と思いつつ期待を裏切り100Vへ。電源OFF。だめだ!原因はなんだ!図面を見つめること1時間・・・。

図面では電源の二次電圧を220Vの端子から取っているがどうもこれが怪しいようだ。ためしに+B電圧をテスターで測ると330V以上ある。これではだめだ。使用しているトランスにはあと200Vと180Vの端子があるので200Vの端子に接続し再度電源投入!50Vちょっとで安定した。やったね!後は両チャンネルともVR2で70ボルトに調整した。あとは、どんな音が出るかお楽しみ・・・。

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完成

CDプレーヤーと20数年ものの自作スピーカーを真空管アンプに接続し準備は完了した。後は記念すべき第1曲がかかるだけである。電源ON!しばらくして真空管のヒーターが赤くなる。そしてCDを投入しPLAY。静寂がながれた。ボリュームを上げるとかすかに電源ハムの音がする。あれ?もう一度配線をチェックした。どうも入力端子の半田づけがあまいようなので付け直し再度電源を入れる。CDのPLAYボタンを押す。再び静寂が流れた。ボリュームを少し上げると少しずつ音が聞こえ始めた。やった!CD1枚ぶん慣らし運転で聞いていたらだんだんいい音になってきた。

 

1時間2時間するうちにどんどん音がよくなってくる。高音が伸びてきて低音が響き渡る。でも一番感心したのが中音の響きだった。うわさどおり、まろやかな音ででもこもった音ではない。このアンプは電子楽器の音楽にはあまり向いていないかもしれないが、昔のジャズはとてもいい音で再生していた。恐るべし6BM8真空管アンプ。

 

夜は照明を落として真空管のヒーターの光を見ながら音楽を聴いてお酒を飲んでひと時をすごすのはお金では買えない贅沢だ。

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