あなた…ひとりの夜

ちょっと前話題になった映画のビデオを借りてきた

たわいもないラブストーリー……

美男美女の彼と彼女がハッピーエンド、幸せなストーリー

でも……

ちっとも楽しくなかった……　面白くなかった

どうして？　なぜ？

わかってるくせに……　そう、ひとりで観たから

今朝、彼が行ったから……

いつものようの宇宙の海へ……

いつものように、私に笑顔で手を振って

彼は、旅立っていった



ひとりの夜は、とても静か

とくに……

彼が旅立った日の夜は、悲しいくらいに静かになる

昨日まで、彼がすわっていた椅子、読んでいた本、使っていたカップ

みんな私と一緒にいるのに

彼だけは、いない

いつものことだけど……

いつも寂しい



寂しい夜は早めにベッドにもぐり込もう

彼は、今朝慌てて出ていったから

ベッドには彼が脱ぎ捨てたままのパジャマ……

そっと手を通してみる

なんだかとても温かい

それに……彼の匂いがするの

彼のパジャマにつつまれて彼と眠ったベッドでまるくなると

なんだか、彼につつまれているようなそんな気がする

『愛してるよ、雪』

彼がそう言ってくれているようで……

涙がひとつ、こぼれ落ちた



ゆき……

僕はまた宇宙のまんなかに来たよ

宇宙は静かだ……　見えるのは星ばかり、なんの音もしない

そして、君もいない

宇宙は好きだ、きびしくてやさしいから

けど……

君がいないことだけが、寂しい

どうして僕は君を置いてここに来てしまうんだろう

わからないよ

でも……たぶん……

君にまた出会う幸せを味わうためなのかもしれない

愛してるよ、雪

with　love