Good Morning〜古代君の優雅な朝のひととき〜(イラスト by めいしゃんさん)
めいしゃんさんから、古代君のイラストを2枚いただきました。このイラストからショートができませんか?というご依頼に……こんなものを書いてみました。
まだ一人暮しをしていた頃の古代君、飲み会開けの朝は、少し遅めに起きて、シャワーを浴びて…… 優雅なひとときをすごすのか?
朝……
外は快晴、朝日がまぶしい。
ふぁあああ…… 昨日はちょっと飲み過ぎたかな?
昨日の夕方、宇宙から帰ってくるなりあいつらとの酒盛り……いやはや、久々の再会に盛り上がったってもんじゃなかった。みんな若いよなぁ!
あれは数日前、相原から通信が入った。業務連絡の後にこうだった。
『古代さ〜ん! あさっての帰還日に飲み会しませんかぁ? ちょうど、南部も太田も地球に帰って来てるし、もちろん、島さんや徳川も誘っときますから…… いいでしょう? あっ、もっちろん雪さんもご一緒OKっすから』
これじゃあ、断わる理由なんかねーよなぁ…… でもまあ、一応、雪には了解をとっとこうと思って、火星基地から雪の自宅に電話したら……
『あら、いいじゃなぁい? たまには、男同士で飲んできたら? 相原君から聞いてるけど、私は遠慮しておくわ。ちょっと仕事も忙しいし…… 次の日はちょうど日曜日だから、地上勤務の人たちも休みとってるみたいよ。たっぷり飲めるんじゃなぁい? 日曜は私も家にいるから、二日酔いにならなかったら電話して、じゃあねっ!』
とあっさり了承されてしまった。
『地球にいるときくらいずっと一緒に居たいのに』
な〜んてベソかくんじゃないかと思ってたのにさ、まあ、それはそれで困るんだけど。あっさりとOKだされるってのも、どうも気に食わない…… 物わかりの良過ぎる彼女を持つってのも、時には考えもんだよなぁ。俺のことなんかどうでもいいのかよっ! なんて言いたくなってしまう。
えっ? 勝手な言い分だって、男っていうのはそういうもんなんだよ。
さあてと、飲んだ割には二日酔いはないし…… 天気もいいし、気分もgood。何をしようか……
まあ、とりあえず髭でも剃るか……
俺って、電器髭剃り機は嫌いなんだよなぁ。
なんとなく、綺麗にならないような気がしてさぁ。
なんてったって、シェービングクリームをつけて2枚歯のこいつで剃るのが一番だ!
不精髭ってのは嫌いだから、なんでもいい加減にする俺だけど、この髭剃りだけは毎日欠かさずやっている。
んーと…… っ!!っててて!!
あ〜あ、ちょっと切ってしまった……
まあいいや、こんなもの、すぐ治るさ。
あ、そういやあ、昨日は、っていうか今日は(帰りは午前様だった)家に帰って来てそのままバタンキューだったんだ。シャワーも浴びてなかったなぁ。んじゃまあ、シャワーでもあびるか……
ふうっ、生暖かいシャワーは気持ちいいな。飲んだ次の日は、やっぱりこのシャワーが最高だ!! すっきりするぜ!
おおっ! 太陽が随分昇ってきたな。
今日もいい天気になりそうだな。
さてと、気分も爽快!
今日は何をしようか……
今日は日曜日、雪も休みだって言ってたな。しかたがない、電話でもしてやるか……
いや待てよ、あんなつれないことを言ってたヤツなんかほっといて、俺だけの休日にするかなぁ。たまには、男ひとりの静かな休日ってのも悪くないな。女はうるさくていかん! うんっ!
着替えたら、まずは朝飯だ。何にしようか…… 冷凍庫には一枚ずつラップに包んだ食パンと、お茶碗に一膳ずつ盛ってあるご飯。小さなパックに入ったおかずが数種類。俺が宇宙に行っている間に、雪が来て入れておいてくれる。こう言うことはまめだよなぁ、彼女は……
ご飯の方は、雪は最初小さな冷凍パックに入れてあったんだけど、茶碗に移すのが面倒だから、そのまま茶碗に入れて冷凍しておいてくれといったのは、俺。これだと楽だろう? レンジに入れてチンとすれば、そのままテーブルに出して食べれるんだからさ。雪は最初ぶつぶつ言ってたけどさ。男の一人暮しなんてシンプルが一番さっ!
ああ、でも今日はパンにしよう。パンなら、トーストしてからマーガリンを塗って、あとはミルクティーを作るだけ。おかずはいらないや。
雪が見たらまた怒るな、きっと…… 『ちゃんと野菜をとらなきゃだめよ!』って口癖だもんなぁ。雪はそう言うことにはめっぽううるさいんだ。
看護婦以外にも栄養士だかの免許も持ってるそうで……一体、あいつはどんだけ免許ってのを持ってんのかねぇ。聞いてみたこともないけど。
けど、今はうるさい……はいないしぃ、はっはっは、こういうのはやっぱり一人が気楽だよな。
兄さんには早く結婚しろって顔見るたびに言われてるけど…… いろいろとなぁ、考える事があるんだよな、俺も…… それに、ほら、こういう気楽な暮らしも捨てがたい気もするし……
雪のことは好きだし、愛してる。抱きしめて一晩中愛したいって思うこともしばしばだけど…… でも、実はまだ手を出してない。兄さんはその事を笑ったり、早くしろって脅したりするけどさ。俺だってそりゃあ、手を出したくないと言えば絶対にウソだ。けど、物事にはタイミングってもんがあるだろう? なかなかそれがうまくいかなくってさぁ。
雪はどんな風に思っているんだろう…… 今でも、結婚するまでって思ってるのかなぁ……
雪の素肌は白くて綺麗で…… あの胸の膨らみの中には…… ああ、想像するとたまらない! うっ…… こういうことを考えると……男としては……うーむ、むむむ。困った事になる。こら、お前、朝っぱらから騒ぐな!! それより、朝飯だ、朝飯!!
古代進、男ひとり。優雅な朝のひとときのはじまりだ…… 大人の男にはこんな休日が一番似合うぜ。ふっふっふ……
プルルル…… あん? 電話、今頃誰だ? 俺の時間を邪魔するヤツは!
「はい、古代です」
『あ、古代君!? 起きてたの? よかったっ!』
「雪? おはよう、起きてるよ」 雪だっ! 雪のヤツ、自分から電話してきたな。やっぱり淋しかったんだろう? って、実は俺も嬉しくてたまらなかったりして…… 雪の声はかわいいなぁ。
『うふふ…… 昨日飲み過ぎで、まだベッドの中かと思ったわ』
「大丈夫だよ。快適な朝さ」
『昨日は楽しかった?』
「ああ、盛り上がったよ。雪もくればよかったのに」
『ありがと、また今度ね。でも、男同士の内緒の話で盛り上がったんでしょ? きっと』
ムムッ! よく知ってるな…… 確かに雪がいたら話せない話がたくさんあったなあ。っと、これは雪には絶対内緒だ。
「そんなことないさ…… なぁ、今日は暇なんだろ? こっちへ来るかい?」
おっと、言ってしまった……確か俺、男の休日を楽しむはずだったんだけどなぁ…… 思わず口がすべってしまったよ。って、まあいいか。雪に会いたいもんなぁ、この前宇宙に出てからもう3週間だもんなぁ。会って抱きしめて、熱いキッスを……じゅる
『ええ、いいの? すぐでもい〜い?』
「ああ、いいよ」
へへへ……やっぱり、淋しかったんだな、雪のヤツ。仕方ないなぁ、惚れられてる男は辛いよなぁ。あははは……
ピンポーン……あれ? 来客??
「はい……な、なっ!! 雪!!!」
ドアを開けてびっくり仰天! 今電話してた雪がなんでここにいるんだよっ!?
「おはようっ!」
「なんで、ここにもういるんだ!?」
「うふふっ、だって、こっちに来てから電話したんだもの」
「あのなぁ、それじゃあ、『起きてたの』じゃないだろうがっ!」
「まあ、いいじゃなあい。起きてなかったら、ベッドからたたき起こしてあげようかと思ってたのよっ! どうせ朝ご飯だってろくなもの食べてないんでしょう? 作ってきてあげたのよ」
と、雪は勝手に玄関をあがってくる。勝手知ったるなんとかってヤツだな。確かに、雪はこの部屋の合い鍵も持ってるし出入り自由。俺よりいる時間は長いかもしれない。
「ほらぁっ! やっぱり、なあにこれ? パンと紅茶だけ?? もうっ!! いつも言ってるじゃないの!! お野菜食べなさいって。ほら、これ、サラダとお惣菜もあるから、食べてちょうだい。あ、私もまだだから、一緒に食べましょ」
「…………へいへい」 やっぱり言われた……
結局、男ひとりの静かな休日ってのは、あっという間に消え去ってしまった。
けど、その代わり、恋人たちの熱い休日が始まったってわけで、もちろん、朝メシを美味しくいただいてから、雪の唇も美味しくいただいたわけで…… それ以上は…… ま、まあ、今は朝だからね、おてんと様も高いし…… そのうちに…… はぁ〜
「古代くぅんっ! 淋しかったわ、会いたかった♪」
「僕もだよ」
俺に甘える雪の嬉しそうな顔の前じゃあ、俺はな〜んにも文句ありません!! やっぱり、休日は恋人と二人で過ごすのが一番だな!!
え? なに? さっき俺が言ってたことと全然違うじゃないかって? あれ? 俺なんか言ってたっけ? 忘れちゃったよ。
−お し ま い−