Make LOVE−Second Passion−
 湘南の別荘で初めての夜を過ごした二人。その後、古代君は宇宙勤務へ。そして2週間後、古代君が帰還してきました。
 うれし恥ずかし初体験後、初めて再会する二人は、顔を見る前から、もう既に「あのこと」で心の中が一杯! でもでも二人とも21歳の健全な若者ですもの、これくらい許して……(笑)


 
 今日、古代君は帰ってくる。2週間のパトロールを終えて…… 2週間前のあの日、私達は初めて一つになった。ほろ苦い極上の珈琲を、少しだけ飲んだような気分だった。
 そう、夢のようなひと時だった。優しかった古代君……あの3日間の夜の事を思い出しただけで、体中が熱く火照り、心臓がドキドキと大きく鼓動し始める。

 彼が私の胸に触れたときのことを思い出すと、胸の先端がピクンと立ってくる。そして彼の手が、私の体に触れた瞬間(とき)を思い出すと、体中に電気が走る。そしてもう、私は潤んでしまうの。

 彼と結ばれたばかりで、まだ絶頂感っていうのは、よくわからないけれど、彼が触れてくれるのが溜まらなく気持ちよくて…… 彼が私の中に入った時、一つになれた快感が体中を駆け巡った。
 最初の夜はちょっと痛かったけれど、次の日からはなんともなかった。とっても私、幸せになれた。
 だから早く……古代君に、私を思いきり抱きしめてもらいたい。

 今日帰ってきたら、彼はまた……私のことを愛してくれるかしら? ううん、きっと……たくさんたくさん、愛してくれる。

 早く……会いたい……こ・だ・い・く・ん……


 
 もうすぐ地球に戻る。2週間のパトロールを終えて…… 2週間前のあの日、僕達は初めて結ばれた。雪の体を壊さないように、雪の心が満たされるように、少しずつ少しずつ彼女の体を慈しんだ。
 極上のワインを、ほんの少し味わったような最高の気分だった。彼女の肌は陶器のように白く、そして滑らかだった。けれど、陶器のように冷たくはなくて、触れる度に熱くなっていった。彼女はとても綺麗で、本当に夢のようなひと時だった。

 あの3日間の夜の事を思い出しただけで、体中の血液が1点に向って集まっていく。心臓が大きく鼓動し、熱にうなされたように体中が熱くなる。今ももう僕自身が硬くなってしまった。この航海の間中、あの瞬間(とき)を思い出し、何度そんな風になって人の目を気にしたことだろうか。
 僕はもう……彼女のとりこだ。だから、早く帰って彼女を抱きしめたい。

 今日帰ったら、彼女はまた僕の腕の中で可愛い吐息を吐いてくれるだろうか? いや、きっと美しい裸体をくねらせて、彼女の切ない声を聞くことができるに決まっている。

 早く……会いたいよ……ゆ……き……


 
 夕方の5時30分。仕事を定時に終えて、コスモエアポートには予定通り着いた。17時着予定の古代君の艇は、もう到着しているみたい。でも、出てくるのはもう少し後ね。
 ああ、どんな顔で彼を迎えたらいいのかしら。なんだかとっても恥ずかしい。ドキドキもじもじしながら、古代君の出てくるはずのゲートを見つめていたら、彼の姿が見えた。
 あっ! 古代君だ……!!

 「古代君っ! お帰りなさい」

 意外と自然な笑顔で迎えることができたみたい。自分でも不思議。

 「ただいま、雪」

 彼が顔一杯の笑顔で私のところに駆け寄ってきた。近くで視線があうとなんとなく気恥ずかしくて、二人ともちょっとだけ視線をそらせた。

 「帰ろうか……」

 古代君が出口の方を向いて行った。

 「うん……」

 まだ古代君の顔をまっすぐに見るのが恥ずかしくって、私も前を向いたまま頷いた。それから……古代君の左腕にすっと私の腕を通した。
 古代君が「ん?」と言うような顔で私のほうを見た。私もちらっと彼の顔に笑顔を向けてから、腕に顔ごと擦り寄った。あったかくてたくましい腕の感触と、古代君の匂いがする。

 「どこか寄るところはあるのかい?」

 「ん…… 晩御飯どうする? 今仕事の帰りだから、まだ仕度してないの。少し買い物して行かないと……」

 「雪が面倒なら、どっかで食事してってもいいけど」

 「面倒じゃないわよ。古代君はどっちがいいの?」

 「うちに帰ろう。雪の手料理が食べたい……いいかい?」

 「うふっ、ええ、いいわ。じゃあ、少しお買い物付き合ってね」

 古代君の顔を見上げながら、そう答えると、彼も私の顔を見て嬉しそうに言った。

 「OK!」

 本当は、すぐにでも二人きりになりたかったから、古代君にそう言われるととっても嬉しかった。だって、早く古代君に抱きしめられてキスしてもらいたいんだもの。それから……ベッドの中で一杯一杯してもらいたい。あら、嫌だ、今日の私って、とってもえっち?
 でも、古代君も同じ気持ちなのかしら?

 「俺もしたいな」

 「えっ? したいって!?」

 あんまりタイミング良く「したい」なんて言われたものだから、思わずびっくりして古代君を見入ってしまった。もうっ!古代君ったら、ここは公共の場で……やだわっ! と思ってたら、古代君、とぼけた顔でこう言うのよ。

 「え? ああ、料理の手伝いをしたいって……」

 「あ、ああ……り、料理のことね…… そ、そうだったわね、お願いするわ」

 やだっ! 私ったら……一人合点しちゃった。ああ、私の考えてたこと、古代君にばれたらどうしよう…… すごく恥ずかしくなった。

 「??? どうしたんだ? 何をしたいって言ったと思ったんだい?」

 「な、なんでもないわっ!」

 自分の考えてた事が、あんまりにも恥ずかしくなって、私、真っ赤になってしまった。そんな顔でそっぽを向いた私を覗きこんで、古代君ったらくすくす笑い出すんだもの。もうっ、やあねっ! ああ、頬が熱い……

 そうしたら古代君も笑いながら、でもちょっとはにかみながら耳元で囁いてくれた。

 「俺も……雪とおんなじこと、考えてたよ」

 えっ!? んっもうっ、やだっ! 古代君ったら…… 私はもっともっと恥ずかしくなって、耳まで真っ赤になってしまった。胸がきゅんとなった。


 
 それから、俺達はエアカーで俺のマンションに向った。途中、マンション近くのスーパーに寄って夕食の材料を買う事にした。

 エアカーの中で、雪はとりとめのない噂話をしてくれた。兄貴が旅行はどうだった、なんて意味深に尋ねるんだとか、島に食堂で出会ったら、顔を見るなりニヤッとされただとか…… 相変わらずみんな、俺達のことをからかってくれてるみたいだ。
 二人で旅行に行ったのは、兄貴も知ってる事だから、今度会ったら何か言われるだろうなとは思ってるけど。うーん、こりゃあ、やっぱり相当覚悟しておかないとだめだなぁ。

 けど、さっきのエアポートでの雪の顔……真っ赤になって、かわいかったなぁ。きっともう夜のことでも考えてたに違いないんだ。俺が宇宙にいる間も、毎晩あの夜のことを忘れられなかったみたいに、雪もそうだったのかなぁ?

 ああ、いかんいかん! ちょっとそう言うことを考え始めると、俺は反応してしまう。今、雪に見られたら、まずい…… 焦ってアクセルを踏み直していると、雪にその様子を気付かれた。

 「古代君どうしたの? なんか変な顔しちゃって……」

 「えっ!? い、いや別に…… に、兄さん達には困ったもんだなって思ってな」

 「うふふ……でも、みんなが心配してくれてるんだから、ありがたいわ」

 雪はそう言って笑った。それはわかるけど…… まあ、この前の初めての時だって、兄さんからのアドバイスは実はものすごく役に立った。次の日、雪に手馴れてたって言われたくらいだから、ぶっつけ本番だった(そりゃあ当たり前だ!)俺としては、めちゃくちゃ得意な気分になったもんな。
 今回は、俺も雪も少し慣れたし、もう少し大胆にしてもいいかなぁ。

 「あ、そうだ、雪。明日は休み取れたのかい?」

 「ええ、明日とあさって。ねぇ、明日どこかに連れて行ってくれる?」

 「ああ、いいよ」

 「うれしいっ!」

 雪が両手を合わせて大喜びしている。

 よしっ! 明日は休みか。と言うことは、今日はこれから俺のマンションで二人で晩飯を食って、それから…… うんっ!今夜は、雪を……帰さないからなっ!!


 
 スーパーに着いた。晩御飯、何にしようかしら? 古代君に聞いてみよう。

 「古代君、晩御飯何がいい?」

 「ん? ああ……別になんでもいいけど」

 「うーん、なんでもって言われるのが、一番困るのよねぇ」

 「……そう、言われても……」

 手料理を食べたいって言ったのは、あなたなんですからね。決めてちょうだい! そんな顔をして睨んだら、古代君も困った顔してたけど、ちょうど目の前にあったミンチ肉を見つけて、

 「あっ!そうだ。ハンバーグがいいな」

 って言った。ということで、今晩のメインディッシュは、煮込みハンバーグにすることにした。じゃああと買うものはぁ……野菜がたまねぎとにんじん、マッシュルームもいるわね。付け合わせには、ジャガイモを茹でて、にんじんのバター煮にしようかな。あ、ジャガイモとバターも買わなくちゃ。それから、スイートコーンの缶詰が確か古代君のうちにあったと思うから、それも使って……

 私が、色々考えながら、あっちこっちとカートを押しながら、買い買い歩く後ろを、古代君ったら、手持ち無沙汰な様子で付いて来るの。なんだか、とってもかわいい! スーパーでの彼っていつもそう。それでいて、なんだか変なものをかごに放り込むんだから。

 あっ、ほらぁ。今姿が見えないなって思ってたら、また、なんだか持ってきたわ。あ、かごに入れた。

 「なに、入れたの?」

 「えっ? なんだかうまそうだったから……」

 照れくさそうな顔をして笑う古代君。えっ?何を入れたかって? チョコレート菓子に、ビーフジャーキーやら酒のつまみ、それからチーズ。なんだか太りそうなものばっかり。古代君って意外とこういうものが好きなのよ。でも、ちっとも太らないから、それだけ激しいトレーニングしてるんだとは思うけれど。

 あらっ? この箱は…… きゃっ! これってあの……いわゆる家族計画の……!? 焦って古代君の顔を見たら、彼ったらそっぽ向いたまま。
 でも、私ピルを飲むことにしたから、いらないんだけどなぁ。古代君の背中をつんつんと突っついて、小さな声で言った。

 「ね、これ、返してきて。大丈夫だから、私ちゃんとしてるから……」

 ちょっとびっくりした顔をしてたけど、古代君それを手にした。

 「いいのか?」

 「私、元看護婦よ。そう言うことは……わかってる」

 やっと古代君は納得したみたいで、さりげない顔しながらそれを戻してきたみたい。でも……古代君ありがとう。ちゃんと気遣ってくれてたのが、とても嬉しかった。

 さあて、買い物終了! さあ、会計を済ませて帰りましょう。


 
 俺のマンションに着いた。相変わらずきれいに片付いている。雪は俺のマンションの鍵を持っているから、ここの管理もほとんど雪がやってくれている。俺が帰る前には、ここに来て掃除やら片づけやらしてくれているようだ。
 ありがたいけど、毎回帰るたびに、なにか物が増えているのにはあきれる。どう考えても、既に雪の趣味の部屋になっているような気が…… ここは俺のマンションだぞ! なんて、言えるはずないけど…… 雪に倍になって言い返されるのが関の山だ。

 「さあ、作るわよ!」

 雪が腕まくりした。その姿がかわいらしくて、思わず後ろから抱きしめてしまった。

 「あ……ん……」

 恥ずかしそうに身をよじる姿が、俺をさらに刺激する。力づくで雪の体を自分のほうに向けると、俺は雪の唇を奪った。
 彼女は面食らって一瞬体をひこうとしたけど、すぐにやめて積極的に反応を示し始めた。同じくらいの情熱で、キスを返してくる。
 彼女の唇は、柔らかくて甘い味がする。唇と唇で軽く触れ合った後、俺はそっと舌で彼女の唇を割った。軽く開いた彼女の口の中に俺の舌が侵入する。そして、彼女の舌と絡み合う。

 唇が密着するのにあわせて、体の密着度もさらに増した。彼女の腕は俺の首筋にしっかりと抱きついてきた。すると彼女の胸の膨らみが、きちんとふたつ、俺の胸にやんわりと当たる。ああ……気持ちがいい。ぴりぴりとした快感が体中を駆け巡り、それはやがて俺の中心に集まってくる。

 このまま、雪を抱いてベッドルームに行ってしまおうか…… そんな俺の高ぶりを感じたのか、雪が少し力をこめて俺を突き放した。

 「だめよ、古代君。晩御飯作らないと……」

 「雪とこうしている方がいい」

 「……あとで……ねっ」

 雪は少し紅潮した顔で恥ずかしそうに微笑むと、エプロンを掴んで台所に駆け込んで行った。
 はぁ〜、ちょっとため息がでた。でもまぁ仕方ないか、夜はまだ長いんだ。まずは腹ごしらえしよう。

 俺も呼吸を整えると、台所に行って、おとなしく雪の料理を手伝うことにした。


 
 食事の仕度は順調に進んだ。古代君もさっき私を抱きしめた時の熱い眼差しを一旦は鎮めて、ハンバーグ作りに励んでくれている。

 本当に、さっきはくらくらしてしまった。古代君のキス、とっても情熱的で……私を抱きしめる腕の力……すごく強かった。抱きしめられた快感で、私もう、ぼぉっとなってしまったわ。一瞬頭の中が真っ白になって、ああこのまま古代君の腕のなかで朝まで過ごしたいって思ってしまったくらい。

 でも……太股のあたりに、古代君の高ぶりが当たった時に、ドキッとしたのと同時に、はっと我に返ってしまった。だって、晩御飯もまだだし……シャワーも浴びたかったし……
 一日働いて汗や仕事場の周りの雑然とした匂いがついたまま、古代君に抱かれたくなかったんだもの。きれいな私を、見て触れて欲しいんだもの。

 「ハンバーグ全部できたぞ」

 「あ、はぁい。じゃあ、このホットプレートで焼いてね。もう温まってると思うわ」

 「わかった」

 古代君、機嫌良くやっている。彼ってわりと器用なのよね。手伝ってもらうと結構役に立つの。っていうか、ちゃんとやれば、もしかしたら私より料理できたりして……
 最初は下手だった私が一生懸命勉強してきて、料理の腕を披露するものだから、私に遠慮してか、古代君、自分で料理するところを今のところ見せたことはないけれど。ずっと一人暮らししてたんだから、自炊もしてるはずだし……

 古代君がハンバーグを焼いているうちに、私は付け合せと煮込みの為のソースを作った。

 「ハンバーグ焼けたぞ」

 古代君がお皿に焼けたハンバーグを入れて、私の隣りに立った。

 「あ、じゃあ、そっちのおなべに入れて。デミグラスソースを作ってあるから」

 「うん……」

 古代君、ハンバーグをなべに入れながら、やたら私にくっついてくる。わざと体をひっつけて……

 「んっ! もうっ……」

 私が少しよけると、彼ったら、またぐっと体を押しつけてくるの。そして今度は、首筋にキスの雨。いやよっ!くすぐったい!!

 「うふふふ…… だぁめ…… くすぐったいわ」

 片手で彼の体を押しやって、やっと逃れた。彼ったら、少しばつが悪そうな顔をして照れくさそうに笑っていた。
 ほんとはね、私だって、あなたにずっとくっついていたいのよ。でも……もうちょっと後でね。

 それから間もなく、できた料理を二人してテーブルに並べて、美味しくいただきました! 古代君ったら、口開けてあ〜んして「食べさせて」だって。もうっ!甘えん坊!!なんだからぁ。大好きっ♪


 
 食事が終わって、後片付けもすんだ。後片付けは、俺としてはめちゃくちゃ真面目にやった。本当は、さっきみたいに、隣りの雪の体に触れたり、キスしたりしたかったけど、そんなことをしていると、楽しみの時までにまた時間を要してしまうし、ここはぐっと我慢して、片付けることを優先することにした。辛かったぞ!

 「お茶を入れるわね。古代君、先にリビングで休んでて」

 片付けが済むと、雪はいつものようにティーポットに茶葉を入れ始めた。俺は、先にソファーにゆっくりと腰を下ろして、テレビをつけた。
 ここまでの過程は、今まで何度も繰り返してきたことだ。そして、いつもなら、ここでお茶を飲んで、とりとめない話をして、それからキスをして…… その後、俺は湧き立つ気持ちを押さえながら、雪を彼女のマンションまで送って行くんだ。

 けど、今日からは違う。雪と俺は、もう最後まで愛し合った仲なんだ。だから、今夜は帰さない。雪を一晩中抱きしめていたい。だから、言うんだ。雪に……

 そんなことを考えていると、雪がお茶を持ってリビングにやってきた。紅茶のいい香りがしてくる。雪もお茶の入れ方が随分うまくなったもんだ。最初は、どうしたらこんなまずい味を出せるのかっていう、お茶の入れ方してたもんなぁ。
 そう言えば、島の話だと珈琲もそうだったらしい。珈琲の方は俺はあんまり味がわからないから、別にそんなもんだと思って飲んでいたけれど。

 「はい、古代君。どうぞ」

 「ん、ありがとう」

 そう答えると、雪はにっこり笑って、俺の隣りにちょこんと座った。並んでお茶を飲みながら、テレビに映る古い映画を見るでもなしに眺めた。
 俺はお茶を一気に飲み干すと、雪の顔を見た。照明を少し落した部屋で見る彼女の横顔は、幻想的な美しさを醸し出していた。

 本当に、綺麗だ……

 そう言葉にしたいんだけれど、なかなか口に出せない。俺っていつもそうなんだ。なかなか気の利いた言葉をうまく出せない。兄貴にはいつも言葉が足りないって叱られるんだけど……

 「なあに?」

 俺がじっと見ているのに気付いたのか、雪が俺のほうを見て微笑んだ。その顔がまたなんとも言えずかわいらしくてきれいだった。ドキッとした。恥ずかしくなって、顔を正面に向けた。でも……言わなくちゃ! 言うぞ!! そのまま前を向いたままで俺は言った。

 「あのさ……雪…… 明日、休みなんだろう?」

 「ええ……」

 「……泊まっていけよ、いいだろ?」

 ああっ! 言ってしまった!! どきどきしながら、彼女の顔をそっと見ると、雪はポッと頬を染めて恥ずかしそうにうつむいている。どうしよう、嫌だって言われたら……

 そうしたら、雪が小さくコクリと頭を下げて頷いたんだ! やった!!


 
 すごくどきどきしてる。古代君ったら、いきなりあんなこと言うんだもの。覚悟も期待もしてたけど…… でも、やっぱり恥ずかしい。だけど、嬉しい。
 ゆっくり顔を上げて古代君の顔を見た。そうしたら、すごく嬉しそうな顔をした古代君に、ぎゅっと抱きしめられた。

 「雪!!」

 嬉しさで、胸が苦しいくらいに締めつけられる。嬉しくて気持ち良くて、私も彼の胸に顔を摺り寄せた。しばらくそうやって抱擁を楽しんでいたけれど、私が顔を上げたのを合図に、再び彼の唇が私の唇に寄せられた。

 熱いっ!! 熱気を帯びた彼の唇を感じる。幸せってこんなことなのかなって思ってしまう。

 古代君の唇が私の口から離れて、首筋をたどり始めた。

 「あ……」

 背筋を走る快感に私は思わず声を漏らしてしまった。彼の唇はゆっくりと首筋から胸元へと降りて行く。片手のひらが服の上から私の胸をやんわりと掴んだ。

 ああ、このまま流れに任せてしまいたい…… そう思いながらも、どこかで理性が警鐘を鳴らす。そうだ、まだシャワー浴びてないのよ。そう思ったら、自然とそれが口に出ていた。

 「シャワー浴びたいわ…… お願い」

 古代君が、頭を上げた。上気した顔が、ちょっと困ったような表情になって私を見ている。ごめんなさい、何度もあなたの手を止めてしまって…… でもでも……まだ私…… すごく恥ずかしいんだもの。だから、できるだけ綺麗になって、心と体を着飾ってそれから……抱かれたいの。

 古代君は、なんとか自分の欲求を抑えて、優しく言ってくれた。

 「ああ、行っておいで。お先にどうぞ。俺は後で入るから」


 
 雪はシャワールームに消えた。うーん、たまらないよなぁ。もう我慢の限界に来ている。もう俺は爆発寸前だ。見ろよ俺のここ、痛いくらいに張りきってる。鎮まれ!お前!!
 俺は深呼吸を一つ二つして落ち着こうとした。雪の姿が見えない分、いくらか高ぶりは納まったが、もうここまできてしまったら、逆戻りはできない。
 ただ、雪に無茶を言いたくなくて、なんとか我慢したんだ。次はもう絶対に彼女を放さない! 今夜は雪を……どうしてやろうか。

 この前の時は、雪も俺も初めてで、恐る恐るってところもあった。初めての晩は、彼女の体のことをを随分と気遣ったものだった。苦痛だけが残るんじゃいけない、そう思った。
 二日目、三日目には、少し気持ちは楽になったけれど、でも昨日の今日って感じだったから、やっぱり遠慮があって……
 もちろん、気持ち良かったし、彼女を抱きしめて彼女の中に入れたことだけで、十分に感じたけれど。俺としては、本当はもっともっと強く激しく抱きしめたかった。愛したかった。

 だから、今日は…… もう少し思いきり愛したい! 息つく暇がないくらい、彼女を……感じてみたい。 だけど、彼女は嫌がるだろうか……?

 シャワールームに入ってから、もう15分になるけど、遅いなぁ…… 覗きに行ったらまた叱られそうだし……
 早く出ておいでよ……雪っ!!


 
 シャワーのお湯がとても気持ちいい。体中をなぞる流れがとても心地いい。

 私まだドキドキしてる。ああ、またあの古代君のたくましい胸に身を預けて……それから…… 
 この前は、彼とっても優しかった。気を使ってくれてたのがよくわかった。今まで女性との経験はないって言ってたけど、嘘じゃないの?って言うくらい……上手にリードしてくれたと思う。彼はお兄さんからの受け売りだって照れ笑いしてたっけ。 

 でも守さんったら、彼にどんなこと教えてるのかしらね。あの人は大人だから、色々経験ありそうだし。
 まあ、余計なこともふきこんでくれたおかげで、あの次の日、古代君を一日悩ませちゃったけれど……うふふ。それはお愛嬌ね。

 だけど……今日の古代君は、この前とちょっと違うみたい。なんていうか、すごく私のことを求めてるっていうのがわかる。だから、きっと……とっても……ああ、だめ。もう頭の中が変になりそう。

 下着の洗濯終わったかしら。お泊りになるかもしれないって思っていたけれど、着替えなんか持ってきたら、いかにもって感じだし、さすがに用意できなかった。
 服の方は、仕事が終わって着替えたばかりだから、明日もそのままでもいいけれど、下着はそういうわけにもいかないし…… 洗濯機をスピードモードにしてセットした。10分でOKだった。お風呂を出る頃にはできてるわよね。
 パジャマは…… 古代君のを勝手に借りようかとも思ったけれど、バスローブを見つけたからそれにした。だってすぐ脱ぐことになるんだし…… きゃっ、私ったら……やだわ。自分で考えて赤くなってしまった。

 また……ドキドキシテキタ。もう……そろそろでよう。また古代君が心配して覗きに来たら困るから。


 
 後ろに気配がして振り返ったら、バスローブ姿の雪が立っていた。シャワーで温まったせいか、上気した赤い顔をしている。それとも……これからのことを思って?
 俺は立ちあがると、吸い寄せられるように雪の前まで歩いていった。雪ははにかみながら言った。

 「古代君……お先でした。このバスローブ借りたわ。よかったかしら?」

 「ああ、いいよ。あ、じゃあ、俺、入ってくる!!」

 俺は、早々に雪の前から逃げ出した。なんたって、あのまま立っていたら、すぐにでも雪を抱き上げてベッドルームに直行してしまいそうだった。

 脱衣場で服を脱ぎ捨てて、シャワーを全開にして浴びた。激しい水飛沫(みずしぶき)が上がる。体に突き刺さるほどの水圧が気持ちいい。熱いお湯は、高ぶった俺の気持ちをさらに刺激してくる。

 ああ、早く雪を抱きしめたい!! 俺の分身は、もうこんなになってしまっている。早く早く……

 俺は、戦闘警戒中のシャワータイムに負けないくらい速く体を洗って、頭を洗って……風呂場から出た。

 頭を乾かすドライヤーもいい加減にして、バスローブだけ羽織って、俺が出てくると、彼女はソファーに座ったままテレビを見ていた。俺の姿に気付いているのかいないのか、振り返ろうともしない。

 俺は、彼女の後ろに立って、肩から前に両腕を回して抱きしめると、耳元で囁いた。

 「もう……寝よう」


 
 古代君がバスルームから出てきたことは、気付いていた。でも、振り返るのが恥ずかしくて、心臓がばくばくしてて、そのまま動けなかった。
 そうしたら、彼が後ろから抱きしめてくれた。

 「もう……寝よう」

 ドキッ! 耳元で囁く声と僅かな吐息が、私の体にピリリと電流を流す。いよいよ……なのね。

 私は立ち上がって、古代君に肩を抱かれ、体を預け、もたれるようにして、二人並んでベッドルームに入った。

 昨日、部屋の掃除に来た時に、きちんとベッドメイクしておいたからベッドはきれいになっている。
 古代君はそのベッドの掛け布団を勢いよくはいだ。そして、体を起こしてもう一度私のほうを見て……「雪!!」そう力強く言うと、力いっぱい抱きしめ、そのまま、二人ともベッドに倒れこんだ。

 上向きに寝た私の目の前には、覆い被さっている彼の顔が間近に見える。その瞳は、私を求めて激しい炎を燃やしていた。

 ああ……古代君…… 私を……抱いて!

 言葉にはならなかったけれど、古代君は私のそんな思いを感じ取ったように、私をもう一度抱きしめると、あっという間にローブの紐を外して、私の前をはだけた。そして、自分の着ていたものも脱いだ。彼はバスローブの下にはなにも着ていなかったみたい。彼の裸がまぶしい。厚い胸板が私を圧倒する。

 彼が私に近づいてくる。ふわっと暖かな空気が私の体の周りに流れる。体がきゅうっと硬くなるのが解った。彼が目を細める。そして、今度は私の背中に手を回して、ブラのホックを探った。私も少し背中を浮かせて彼に協力する。だから……すぐに外れた。

 ブラが外されると、彼はすぐに私の胸に顔をうずめる。手と唇で私の二つの膨らみを存分に味わうように、なで、さすり、舐める。

 「はぁ……ん……」

 声を出すのは恥ずかしい、と思うのだけれど、どうしても勝手に出てしまう。それくらい、彼の愛撫が心地いい。それに、今日の彼はとても、激しかった。力強くて、鋭くて、熱い……

 その後も、彼の動きはスピードアップしていった。胸を存分に愛した後は、徐々に体を下に下げていく。彼の手が私の最後の砦に触れ、そして一気に取り去ろうと掴む。私もほんの少しだけ、腰を上げた。その瞬間を彼は見逃さなかった。

 そして私達二人は、生まれたままの姿になった。


 
 綺麗だ、雪…… 本当に綺麗だ!! もうめちゃくちゃにしたいくらい可愛い!! 体中のすみからすみまでキスをして、なぞって舐め尽くしたいくらい……好きだ!

 「好きだ……大好きだ、雪」

 俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで、「わたしもよ」と答えた。今日の彼女の反応は、とてもいい。触れたところごとに、ピクンピクンと体が動き、その絹のような肌触りの素肌が、少しずつ赤みをさしていく。
 間接照明の薄明かりの中でも、そんな彼女の様子が手に取るようにわかる。

 下着を取り去る時、彼女はさりげなく協力してくれた。彼女も俺を強く望んでるんだって思ったら、もっともっと欲しくなった。今日はもっと自分の欲求に素直になろうと思った。だから、彼女をとても激しく求めた。

 彼女の程よい大きさの形の良い双丘を存分に愛した後で、俺は潤いを求めて、彼女の足をそっと広げた。一瞬、彼女の太股に力が入って、抵抗するのかな、と思ったが、すぐにその力が抜けた。そっとそこに顔をうずめた。

 「あ……だめ…… 古代君、恥ずかしい!」

 口でそう言って抵抗する彼女だけど、体は明らかに俺を迎えてくれている。俺はもう我慢できなかった。

 そして俺達は、再び一つになった。突き上げてくる欲望の全てを彼女の中に…… 頭が真っ白になるくらい、気持ちが良かった。


 
 今日の古代君は、この前の時と違う。最初からそう思っていたけれど、本当にすごかった。
 あの別荘での彼はやさしくて素敵だったけれど、今日の古代君が、本当の彼のような気がする。いつも闘志剥き出しに激しく戦う古代君のその姿を見たようなそんな気がした。
 彼の情熱に、私は翻弄されっぱなしだった。だけど……とても幸せだった。

 終わってから彼が、「無茶しすぎたかな?」なんて恥ずかしそうに尋ねてくれたけれど……

 「ううん、そんなことない。とても素敵だった……」

 私は素直な気持ちを答えた。そうしたら、彼はとても嬉しそうな顔をして、また私を抱きしめてくれた。

 しばらく、そうやって抱き合ってたけれど、彼が私に向けていた体を上向きにした。どうしたのかな?って思って、私のほうから彼にもう一度体を摺り寄せたら…… 彼が少し赤い顔になって私のほうを見た。

 「なぁ、雪…… もう一回してもいい?」

 私が頷くや否や、私はまた彼の激しい愛撫のうねりの中で、小さな小舟のように揺れ続けていた。

 そして…… 3度目に愛してくれたとき―その時は、彼はそれはもう丁寧に私を愛してくれて―私は初めて絶頂感と言うものを知った。

 古代君……愛しているわ。心から、あなたを……あなただけを……いつまでも…… アイシテル。


 
 やっぱり、雪は最高だ。最後は雪もすごく感じてくれていた。これで彼女も俺と同じくらい心地いい感触を味わってくれたのだろうか? こんなにすばらしい彼女だから、俺と同じくらい気持ち良くなって欲しい。そのために、俺ができることはなんでもしたい。

 今夜は本当に幸せだった。初めて結ばれた時の感動もとても大きかったけれど、今夜の素直な欲求のまま彼女を愛せたことがとても嬉しくて、それを彼女も受け入れてくれたことが、さらに俺の心を浮き立たせた。

 ああ、今度は、彼女の素肌を明るい陽光のもとで見てみたい。あの別荘では、三日とも俺が目覚める前に、彼女は先に起きていってしまっていた。明日の朝は、絶対に彼女より早く起きて……そして、朝日の中で彼女を愛するんだ。

 愛しているよ、雪。永遠に……いつまでも……


 

−おわり−

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