Our Communications
「くふっ…… はぁ〜」
僕の胸の上で彼女が大きく息をついた。目の前には、仰け反り気味の彼女の体がある。
少し乱れ気味の茶褐色の髪が、うっとりとした顔にまとわりついている。
そして、そこから下りてくる僕の視線が必ず止まってしまうのは、鎖骨の下にある二つの艶やかな膨らみだ。
零れ落ちそうなほどたっぷりと実った白桃が二つ。僕が腰を突き上げる度に、ふわりふわりと揺れ、その先端には鮮やかな薄紅に染まった小さな木の実が、僕の目を楽しませてくれた。
彼女が後ろに逸らしていた顔を、ゆっくりと僕の方に向けた。
「イった?」
「ん……」
小さく頷きながら、彼女は頬を染める。さっきまでの大胆な彼女と同じ人物とは思えないほど、恥ずかしそうに微笑んだ。
だけど、まだ二人は繋がったままなんだ…… そして僕は、今はまだ強い刺激の真っ只中にいる。
さっきまで……
宇宙から帰還して久しぶりに夜を過ごす時は、いつも激しいものになる。
会いたくて、会いたくてたまらなかった日々の借りを返すかのように……
夕方地球に到着すると、迎えに来てくれた彼女と一緒に家路についた。そこには彼女の手料理が待っていて、それを美味しくいただいた後、僕は何かに急かされるように大急ぎで風呂に入った。その後彼女も同じく風呂をすませる。
後は、待ちかねたように僕が彼女を抱き上げて、ベッドルームに直行するのだ。
そして……さっきまで……
互いの着ているものを、毟(むし)り取るように脱がしあってから、僕らは激しく抱きあった。
二週間と一日ぶりの再会。その間ずっと恋焦がれていた彼の女(ひと)の体とぬくもりを感じながら、僕はむさぼるように彼女を愛撫した。
一度目はあっという間に互いにイってしまう。出会う前から高ぶっていた心と体に前戯は必要ない。僕も彼女もすっかり準備が出来ているのだ。
いつも通り、彼女の上で僕は一気に昇りつめた。まるで、渇望し尽くした砂地に水を蒔いたように、乾いていた喉が水を一気に飲み干したように、たっぷりと潤されていく。
僕らの心と体が潤いを取り戻すための作業。それが、再会して最初の儀式。
それから……
次は、僕らの本当の愛の交歓の時がやってくる。今度はゆっくりと、そしてたっぷりと……時間をかけて……
しばらくゆったりと抱きしめあってから、僕は再び動き始めた。僕の体は既に第二ラウンドに向かって行動を起こしつつある。
彼女の方ももちろん…… 上気した頬でうっとりと僕を見つめている。これから起こりうるであろうことを、夢見ているように……
まずは、隣に横たわる彼女の体を上から下にくまなく探る。目と手と唇、すべてを駆使して……
彼女はそんな僕の愛撫を気持ち良さそうな声で答えてくれる。
そして彼女の手が僕の背中に鋭く食い込んできた。
「ああっ……古代くぅんっ!」
プチエクスタシーを感じているのだろう。
僕はご満悦だ。そして同時に発せられた彼女のその声が、僕にとって最高の媚薬となる。
「雪……好きだっ……」
そして僕の声も、彼女をさらにエクスタシーの世界にいざなう。
その後は……
僕は、ベッドに組み敷いていた彼女を抱き起こした。向きあうように座って、軽く彼女の唇をついばんだ。それから上下を逆転させる。
そう、今度は僕がベッドに仰向けに横たわって、彼女を上にした。
「なぁ〜」
僕は甘えるようにそう呟きながら、彼女の手を導いて特別なお願いをする。
彼女は、ちょっぴり気恥ずかしそうにはにかんだが、本当のところ、僕が何を求めているのかよく知っているのだ。
彼女が行動を起こす。
その動きは、とても自然でなんの違和感も持たない。
だけど……僕はふと考えた。
彼女はいつからこんな風に大胆になったんだろう。恥じらいを残しつつも、躊躇することなく僕に触れ、僕を愛撫する。
初めてのころは、僕に触れられただけで飛びあがるほど恥らっていたはずなのに……
だが今は、こうやって愛されることが、一番自然な気がする。互いの体に触れて触れられることが、僕らにとって大切なコミュニケーション。
僕らの愛の証明……
迫りくる快感のために、僕は夢想の中から我にかえった。
見上げると、彼女は紅潮した頬でうっとりと見つめながら手を動かしている。
はじめはゆっくりゆっくりと……
ああ、なんて気持ちいいんだろう。
だんだんとスピードを増して…… そしてっ!
「う……ああっ、雪……」
突如としてやってくる全身を包む快感の嵐に震えながら、僕は手を差し伸べると、彼女の胸をぐいっと鷲掴みにした。
「うあっ……んん……」
既に一度達している彼女の体はとても敏感で、僕の手の動きに大きく反応を示した。
互いの手の動きに会わせるように、二人の感度が同時に高まっていった。
僕はさらなる快感を求めて、彼女にそっと頼みごとをする。少しだけ躊躇しながら……
「雪、……で……してくれる?」
「ん……」
彼女は即座に頷いて、だがちょっとばかり恥ずかしそうに、視線を僕からはずした。
これも最初お願いする時は、相当に勇気がいったものだ。彼女に不快な顔をされたらどうしようかと迷いに迷って、それでも我慢できなくて、初めておずおずとそのことを口にした時、意外にも彼女は素直に応じてくれたのだ。
以来、僕はやみつきになった……
「ああっ、雪っ! もう……いい……よ。やめて」
ともすると息が上がりそうになりながら、絞るような声で僕が叫ぶと、雪はゆっくりと顔を上げた。
汗ばんで頬を染めた彼女は、潤んだ瞳で僕を見つめる。そして、遠慮がちなかわいらしい笑顔で呟いた。
「気持ち……よかった?」
「ああ、最高!」
僕は息を整えながら即座にそう答えた。すると、彼女も嬉しそうにニッコリと笑った。
「今度は君の中に入りたい……」
彼女は恥じらいながら頷いた。
僕はさっそく体を半分起こして彼女にチュッと音を立てて口付けてから、次の提案をした。
「上になってみる?」
彼女は声は出さずにこくりと頷いた。そして、僕は彼女の脇を抱きかかえて、僕の上に跨らせた。そして、僕らはあっさりと再び一つに繋がった。
「あふっ……」
彼女が吐息ともため息ともつきがたい声を出して、さらに腰を落とした。深く繋がる。
「ああっ……」
僕らの動きにあわせて揺れる二つの膨らみと乱れる髪。
そしてついに彼女の体が、ブルッと震えて硬直した。
それから、僕は彼女がエクスタシーの瞬間からゆっくり降りてくるのをおとなしく待った。
「イった?」
「ん……」
彼女がふんわりと僕の上に崩折れてきた。僕らはまだ繋がったままだ。
全身汗ばんだ体を密着させて、僕はしばらくじっと待つ。
それから、彼女の鼓動が落ちついた頃にこう呟くのだ。僕はまだ二度目の頂点に達していないままだから……
「もう一回、動いてもいい? それともまだ辛い?」
「……いいわ」
まだ余韻を僅かに引きずりながらも、呼吸が落ちついた彼女はそう答えた。
それを受けて、僕は再び上下を逆にして、甘く強く彼女を攻め始めた。
当然、もう僕だってそう長くは持たない。僕の二度目のエクスタシーは、まもなく訪れ、彼女と一緒に再び昇り詰めて、そして僕は広い草原の中に飛び込むように、果てた……
Our Comunications……
心と体の最高に幸せな瞬間(とき)が、僕らの間に、またひとつ積み重ねられる。
おしまい
(背景:Studio Blue Moon)