Relax Time2〜いつまでも……幸せ〜


 夏の昼下がり…… 外はやっぱり猛暑。でも……家の中はとても快適な温度になっている。
 静かな時…… 二人のRelax Time……


 二人揃っての休日。今日は部屋でゆっくりしようってことになって、私も彼も、好きな場所で好きな格好で、好きな本を読んでいる。

 とっても、静かで…… 柔らかな空気が流れている。


 ふと顔を上げて彼の姿を見た。彼はじゅうたんの上に腹ばいになったまま、サイエンス雑誌を開いて読んでいる。なんだかこの雰囲気覚えがあるような……?

 あっ、そう言えば……と思い出した。去年の今ごろも確かこんな風に時を過ごしたことがあったような……そんな記憶が……頭の中に浮かんだ。

 そうそう、その日も彼は好きな植物の専門書を、そして私はロマンス小説を読んでいた。
 今日も……ほとんど同じ。読んでるものは少し違うけれど、後はまるでデジャブーみたいな同じシーン。
 だけど……

 だけど、多分去年とはちょっぴり違ってる……と思う。だって、私達、あの頃と違って今は一緒に暮らしてる…… 一緒のベッドで……眠ってる―正確には眠ってるだけじゃない―

 だから……


 そんなことを思いながら、彼を見つめていると、彼が振り返って私を見た。
 あ、そうそう、あの時もそうだったわ!

 「どうした?」

 「ううん、別に…… なんでもないわ」

 私は肩をすくめてくすりと笑った。だって、この会話も確か同じだった気がするんだもの…… そしてその後彼は照れたように……

 あ、あらっ? 彼の反応が、あの時と………………違うみたい!

 彼は照れくさそうな顔はせずに、嬉しそうににこりと笑って腹ばいになっていた体を起こした。そして本を置いて私が座っているソファーにやってきた。
 それから私の隣にぴったりとくっついて座ると、耳元で囁いた。

 「大好きな人の顔だから見てたんだろ?」

 「えっ?」

 彼がにやりと笑う。もしかして……彼も去年のことを思い出したのかしら?
 彼の言葉が耳元から体の中を駆け巡り、私の体にぴりりと柔らかな電流が流れたような気がした。

 「うふふ…… そうねっ」

 彼の言葉に負けないほど、柔らかにそれでいて艶々しい声で私が答えると、彼は嬉しそうに喉を鳴らした。そして、

 「ちょっと休憩……」

 そう言うと、彼はいきなり横になって、頭を私の膝の上に預けてきた。それから私の体に背を向けるような格好で横向きにソファーの上で寝転んだ。

 「あんっ……」

 いきなりでびっくりして、私は甘えたような抗議するような小さな叫び声を上げたけれど、彼はまったく意に介さない。

 「少し昼寝……」

 とだけ言うと、腕を胸のあたりで組んだまま、その瞳を閉じた。

 「古代君……!」

 私が呼んでも、まだ眠ったわけでもないだろうに、彼は答えを返してこない。それどころか、技とらしくも寝息をたて始めた。

 「ん、もうっ!」

 と膨れてみたところで、どうしようもない。それに私だって彼の頭を無理やりどかせるつもりもなかった。
 だって……膝の上で眠る彼の姿って……とってもかわいいんだもの! ちょっと重いけれど、仕方ないわね。

 最近、彼はたまにこうやって私の膝の上でしばしの惰眠をむさぼることがあるの。
 そして、その後は…… うふふ、内緒!


 私は彼を膝の上に置いたまま、しばらく本を読み続けた。でもやっぱり彼のことが気になって、文章に入り込めない。

 少し経って、彼が本当に寝息をたて始めた頃、私は持っていた本を脇に置いて、そっと手のひらで彼の髪の毛をなぞった。
 少し天然パーマの入った彼の髪の毛は、見た感じとは違って、意外と柔らかで手に触れる感触もなかなか気持ちがいい。何度かなぞった後に、今度は手櫛をするように、指をさし込んでなぞってみた。すると、彼は気持ち良さそうに頭を少し動かした。

 「う、うん……」

 彼は小さな悩ましげな声を上げた。うふふ…… 起きてるのかな? 私は心の中でちょっと期待する。
 だけど、予想に反して彼の瞳は閉じられたまま。気持ち良さそうにスースーという呼吸の音だけが聞こえてきた。

 その気持ち良さそうな寝顔を見ていると、私まで眠くなってきた。ソファーの背中に体を預けて、そっと目を閉じた。膝にかかる重みと温かさが、彼の存在を私に強く伝えてくれる。

 そんな時、私はとっても幸せなんだなって思える。そして私も、柔らかな夢の世界に落ちていった……


 どれくらい眠ったのかしら? まだ私は眠っている……と思う。ただ、太ももの上を何かがゆっくりと動いているのが感じとられた。それは、とっても……キモチ……イイ……
 たぶんそれは……彼の手のひら……ね?

 その手のひらは、存分に私の足のあたりをなぞりさすってから、とうとう足の内側に入ってきた。内股のあたりはとても感じやすい。
 それに彼は私のどこがとっても感じるかを……この半年あまりで学習した。だから、そのことを誰よりもよく知っている―というか、彼しか知らないのだけれど―
 彼はその部分を重点的に攻め始めた。

 「あ……んんん……」

 思わず声が漏れてしまう。それほど気持ちがいい。再び私の体の中に電流が流れ始めた。同時に彼の動きもさらに艶かしく速くなっていく。そして……

 「はっあん! だめぇ……」

 それまで半分夢うつつだった私の頭に鋭い快感が走る。それは彼の手が、私のスカートの中に入りこみ、薄い布ごしに私の大切な部分に触れた瞬間だった。
 私はそこではっきりと目を覚ました。そして体を起こして彼の手を抑えようと手を伸ばしたけれど、彼の手は既に潤いを秘めた部分へ潜入することに成功したあとだった。

 「雪……もう濡れてる……」

 彼の嬉ししそうなその呟きに、私は顔が火照ってしまった。半分寝ている状態で、それでも私の体は彼の愛撫に的確に答えていたみたい。

 「古代……く……ん……」

 うずき始めた私の体は、素直に彼を求めている。
 そして、後はもう……彼の思うがままだった。私達は、昼の明るい日差しの入るリビングルームのソファーの上で、とても濃密に愛し合った……


 しばらくして、二人の情熱は充分に満たされて、心地よい疲労感に変わっていた。
 狭いソファーの上で、彼に寄り添いながら、そっと彼の顔を見上げると、彼は優しい目をして私を見ている。

 「好き……」

 私がそう呟くと、彼もニコリと笑って「僕も……好きだ」と言ってくれた。そしてもう一度たっぷりと甘いキッスを貰う…… エンドレス……


 いつまでも……きっといつまでも……こんな風に幸せでいたい……私達のRelax Time。

 去年とは少し違ってる。
 一緒に暮らし始めてからは、いつの間にかこんな風にPassionate Timeに変わってしまうことが多い。
 そしてまた……静かにRelax Timeに戻っていくの。

 いつまでも……そんな幸せ。抱きしめていたい……

 古代君、アイシテル! 

おしまい

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(背景:姥桜本舗)