Tender Night





嵐の後の静けさ……

そんな言葉が一番似合う今このひととき

ほぉっと一息をつく私に

あなたの視線が優しくからんだ……



さっきまで行われていたのはクリスマスパーティ

乳飲み子のいる我が家が、今年の会場となった

大勢の友人達やその子供達と一緒に大いに楽しんで……



そして今……

親しき友たちは、それぞれの家庭に帰り

愛しき我が子たちは

もう……サンタの夢を見ているころ

そんな夜更けのひととき



――体、大丈夫?

――ええ、大丈夫よ

――疲れただろ?

――少しね。でも、心地よい疲れ……よ

――そうか、それならよかった




私が腰掛けたベッドの隣に

あなたもストンと腰掛けて

そんな会話をした



ほんの数ヶ月前

三度目(みたびめ)の出産を無事に終えた私の体調を気遣うあなたは

すっかり一人前の優しいパパね

そりゃそうだわね

だってあなたはもう……

立派な三児のパパなんですもの!



ふと私たちのベッドの隣に目をやると

ふわふわの飾りで囲まれた小さな小さなベビーベッド

そこに眠るのは……

と〜っても大切な

小さな小さな、私たちの……お姫様



私の視線の方向に気付いたあなたも

同じ方向に視線を向ける

愛し子を見るあなたのその瞳は

限りなく優しくて

私でさえやきもちを焼きたくなるほどで……


――かわいい?

――ああ、そりゃあもう……

――うふふ…… すっかり愛にメロメロね

――まあな

――やけちゃうわ

――あはは…… そう言うなよ。俺が愛が可愛いくてたまらないのは……



そこであなたは言葉を止めた

そして愛に向けていた視線を私に向けて

さっきの愛娘への視線に負けないほどの

優しさと愛しさのこもった瞳で

私を見つめた



――他の誰でもない。君が……産んでくれた娘だから……さ



そう言い終えてから

あなたは急に照れくさそうな顔になった



うふふ……

思わず口元が弛んでしまい

あなたにしては上出来のコトノハに

私の胸がことりと疼いた


――古代……くん



私が思わずこぼした懐かしい呼び名に

あなたは目を細め……

それから、優しくくちづけをくれた

温かくて甘い……くちづけを……





――さぁて、あいつらも寝たころだな。そろそろサンタ出勤の時間だ

そうつぶやくと

あなたはベッドの下に隠してあった子供達へのプレゼントを持って部屋を出ていった



行ってらっしゃい、優しいパパサンタさん……

でも……

戻ってきたら今度は私へのプレゼント

忘れないでね

愛―LOVE―という

あなたが世界中のなかで他の誰にもあげることのない

この世でたった一人私にだけ

くれるプレゼントを……

きっと

きっと……

おわり

 

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(背景:Four Seasons)