僕らのクリスマスイブ






外はちらちらと粉雪が舞う……

暗い夜の彼方から

白い使いが幾千万と落ちてきて

クリスマスイルミネーションの七色の輝きに

真っ白な綿帽子をかぶせてくれる

寒い冬の空

けれど僕らの部屋の中では

クリスマスツリーの光が

イルミネーションに負けない色合いで七色に輝いている

そう今夜は

僕らが二人きりで過ごす

初めてのクリスマスイブの夜



幸せで熱くて激しくて

それでいて優しい瞬間(とき)が過ぎて

深夜……

僕はふと目を覚ました



隣で眠る君の姿が

いつにも増して美しく見えるのは

今もまだ降り続く雪と

輝き続けるイルミネーションやツリーの光

それら8つの輝く色たちのせいだろうか?

それとも僕の

君への愛しさの……せいだろうか……



思えば、僕らにとってクリスマスは……

あまり楽しい想い出がなかったよな?

あれは5年前

出会って初めてのクリスマスは

イスカンダルへ向かうヤマトの中だったね

それもオクトパス星団手前で出くわした嵐の中

いらいらしながら、ただひたすら待ちぼうけをくらってたっけ

あの時はあいつと取っ組み合いのけんかになったりして……

とてもクリスマスなんて気分にはなれなかった……



それから次のクリスマスは

僕らにとって唯一の楽しかったクリスマスだったね

君のご両親と一緒に楽しいパーティができて

僕は家族のいる幸せを何年かぶりに味あわせてもらえた

君と想いを通じ合わせての

初めてのクリスマスだったから


本当はもっともっとロマンチックなものにできればよかったんだけど……

それを言ったら贅沢ってもんだよな

けど……

君と見たあの晴れた空の星々の美しさは

今も忘れられないよ



次の年も

僕らはヤマトの中にいたよね

あの悲しくて辛い戦いのすぐ後で……

新しい乗組員たちを乗せて再び立ち上がったばかりだったね

君は、疲れがちな新人達を力づけようと

今も僕らの部屋を飾ってくれている

あのツリーを艦内で飾ってくれたんだったね


本当なら……その頃は

僕らの新婚家庭で新妻となった君が

飾るはずだったツリーだけれど……

僕は……

君の温かな心遣いに感謝しながら

心の奥底に隠した君の微妙な胸の痛みに

心の中で謝っていたっけな……



その次の年はもっと最悪だったな

僕はヤマト、君は地球

離れ離れになってしまった上に

僕は大切な肉親を亡くして

君は辛い任務で心も体も大きく傷ついて……

けど……

ただ互いに互いが生きているということだけをよすがに

過ごしたあの年のクリスマスイブの夜


ヤマトの中にいても

君がいないそこは

寂しくて辛くて悲しくて……

あんなに寂しいクリスマスは

両親を失った年以来だった気がするよ

ただ……

去年ヤマトを飾ったあのツリーが

君の部屋で輝いていることだけを

僕は祈っていた



次の年も……

ははは……結局またヤマトの中だったよな

僕は艦長、君は生活班長

そこには

厳しく自分を律して、君を遠ざけた僕がいた

だけど心の奥で君を求め続け

もがき続けている僕もいた


だから僕は

あんな夢を見たんだろうな

そう……

まだ僕ができ得ていなかった

君に……プロポーズする夢、だった

ほんのひとときの幸せな夢だった

翌朝、君の顔を見て

素直にMerry Xmasと言えた時

僕はほんの少しだけ肩の荷をおろせたような気がした

本当に少しだけだったけれど

幸せを感じた

そんなクリスマスの朝だった



そして今年……

僕らの大切な人と大切な艦(ふね)を失って

それでも僕らは

生きていくことを選んだ

あの人の遺志を抱きしめて

君と二人で生きていくことを選んだんだ


僕は君に心からの求愛と

最初で最後の結婚の申し込みをした

君は

それを笑顔で受け入れてくれた……

そう、僕らは生きていくんだ

これからずっと

僕は君と……二人で

そして……

奇跡の生還を果たしたあいつは、彼女と二人で……



今日はクリスマスイブ

静かに粉雪が舞う寒い冬の日

君と二人きりで過ごす初めてのクリスマスイブの夜は

豪華な装飾も瀟洒なレストランもなかったけれど

君が大切に持っていてくれたツリーと

心のこもったプレゼントと

僕らの静かな部屋での落ち着いた食事


それから雪の中の散歩に

心地よいピアノの曲を耳にしながらの

さりげない会話に包まれて

僕は生まれて初めて

幸せで満ち足りたイブの夜を過ごした

そんな気がした



僕の大切な人

大好きな君

本当に素敵なクリスマスイブの夜をありがとう

そして今度こそ僕は

年が明けたら

君を……

幸せな花嫁に……するよ



Merry Xmas……

これからは毎年

君とこんな風に静かなイブの夜が

過ごせますように……

二度と悲しい戦いが起こりませんように……






ありがとう……あなた

私、決して忘れないわ

辛かったり悲しかったりもしたけれど

あなたとのクリスマスイブの日々に感じたそれぞれの想いを……

それから今年の

とっても素敵なクリスマスイブをプレゼントしてくれた

あなたへの深くて熱い想いを……

いつまでも……いつまでも……

Fin


Merry Xmas 2005!!
今年も静かにクリスマスイブの夜がやってきましたね。

古代君と雪のクリスマスを彼のモノローグの形で年を追って書いてみました。

本当は新しいお話ができればよかったのですが、うまくまとまりませんでしたので、こんな形でのクリスマスイブになってしまいました。

一応、拙作「二人のWhite Christmas」の続きになります。二人で熱い時を過ごした後、目が覚めた古代君の雪への愛のメッセージでした。
眠ってる雪ちゃんに対しては、いつも雄弁な古代君でありました(大爆)

それでは皆さまも、素敵なクリスマスイブをお過ごしくださいませ。

       

(背景:Four seasons)