命、繋いで
−Chapter 5−
(1)
それから2日が過ぎた。全てのスタッフの努力のおかげで、ヤマトは瀕死の重傷から立ち上がり、アクエリアスの最後のワープを阻止すべく、動き始めた。
この日、既に18回のワープを終了したアクエリアスは、地球から600光年の宇宙にいた。そして、後数時間で19回目のワープが行われるはずだった。
そのワープアウト地点へ先回りするのが、ヤマト次の目的である。
最終決戦を前に、作戦会議を終え中央作戦室から出てきたクルー達は、それぞれの部署へ散った。しかし、古代進と森雪は、すぐに第一艦橋へ向かわず、連れ立って医務室に向かった。
進は、二日間たっぷり休養して、英気を養った。だからもう完全に回復している――少なくとも、本人はすっかりそのつもりだった。
ところが、雪はまだうんと言わない。念の為回復具合を確認しようと、今まさに半ば強制的に医務室に連行されようとしている。ワープを前に、佐渡に最終検査をしてもらおうと言うのだ。
コスモゼロの一件の後、進は雪に頭が上がらない。今日もこの検査に、少しは抵抗を見せたのだが、雪はガンとして受けつけなかった。進は、廊下を歩きながら、最後の抵抗を試みた。
「雪は本当に心配性だな。あれ以上寝たら体がなまってしまうってほど寝たんだぞ。だから、もう大丈夫だよ」
さっき雪の切なる瞳に負けて、うんといったものの、進としては、まだまだ戦闘準備で確認したいことがある。本当は1分1秒たりとも時間を無駄にしたくなかった。だが、雪はどうしてもうんと言ってくれなかった。
「あなたがこの二日間、大人しくしてたのは、よぉくわかってるわ。あの坊やが覗きに行っては、報告してくれたもの。でも、だめ! 古代君がまた今度、無茶して何かあったら、困るのは他のみんななのよ。人に迷惑かけないつもりなら、ちゃんと自分の体のことを自覚しておいてもらわないと……」
「ふうっ、はいはい…… わかりましたっ」
言い出したら聞かない雪である。そのことは、誰よりも進が良く知っている。今日もその壁は高そうだ。進は、とうとう抵抗するのをあきらめた。
(2)
「しかし……なぁ」
医務室に向かって並んで歩きながら、進の口元から、思わずくすっと笑いが漏れた。それを雪がすぐに見咎めた。
「なによ、古代君! 笑ってる場合じゃないでしょう!!」
「ああ、ごめん。けど……なんか、将来が思いやられるなぁって思ってさ。俺ってずっとこんな風に、君に叱られ続けるんだろうなって思うと……」
進がチラリと横目で雪を見て、肩をすくめた。将来という言葉に、雪の顔が紅潮した。ふと、この戦いの後の二人の生活のことが思い浮かばれて、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。そんな生活をまた過ごすことができるのだろうか、と祈るような気持ちになる。
だが、今はそんな甘い夢に浸っていてはいけない。自分に対しても、気を引き締めさせるつもりで、厳しい言葉を返した。
「まあっ! あのねぇ、あなたの自覚が足りないからこんなことになるのよ! それでいつも私が悪者にならなくちゃならないんだわ!」
「ほら、その顔。そんなに目を三角にするなって。やっぱりヤマトで一番恐いのは、君だよ、間違いない! けど……」
進は、きょろきょろとあたりを見まわして、誰もいないことを確認すると、雪の肩を抱き寄せて、ぷいっとそっぽを向いた頬に、軽く唇を寄せた。
「怒った顔も、なかなかかわいいな」
「あん、もうっ、知らないっ!」
ぷいっとふくれっつらの雪の顔を見て、進は、はははと笑った。地球の命運をかけた決戦を前に、わざとのように、明るく振舞っている進だった。
(3)
医務室でも、最後の決戦に備えて、各種の薬品や設備の準備がぬかりなく行われていた。その手を止めて、佐渡は進から採血をし、健康診断を行った。
その後二人は、血液の検査結果が出るまで、しばらくそのまま待つことにした。佐渡は今日の診断結果を、カルテに記入している。
ふと気がつくと、いつの間にか、二人の横にあの少年が来て立っていた。進と雪の顔を見ると、ニコリと微笑んでから、佐渡の見ている資料を覗き込むように、首を伸ばした。
しばらくして、データがコンピュータからプリントアウトされてきた。佐渡は、そのデータを上から下までじっくりと見、次に進の以前の状態を記したファイルを取りだし、それと何度も見比べてから、「よし」と短く頷いた。
「ああ、もう心配要らんな。この前の増血剤と十分な休養が効いたようじゃのぉ。血中成分も健康時の古代のデータの95%以上まで戻っておるわ」
「ありがとうございます、佐渡先生」
大丈夫だと言いながらも、心配もあったのだろう、心から安心したように嬉しそうに微笑む進と雪を見て、佐渡はおかしそうに笑った。声がからかい口調になる。
「やっぱり、24時間体制の看護人がよかったのかのう? 古代……」
「せ、先生!」 「もうっ、やだわ、先生ったらぁ」
照れて真っ赤な顔になる二人を見て、佐渡は「ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ」と大きな声で笑った。相変わらずの反応に、いつになっても、この二人をからかうのは楽しいものだと思う佐渡であった。
そんなからかいの言葉を逸らそうと、さっきまで劣勢だった進が、今度は雪に威勢を張った。
「ほら見ろよ。だから、何でもないって言っただろう? 雪は心配し過ぎなんだ。もう大丈夫だって言ってるのに、どうしてもって言うから」
「あらっ! 古代君の大丈夫ほど頼りにならないものはないわよ! さっきも言ったけど、だいたいあなたはねぇ、いつも……」
人前だというのに、口論を初めそうになる二人を、佐渡が笑いながらなだめた。
「こらこら、ほれ、そこで坊やが笑っとるぞ。はずかしいじゃろうが」
「えっ!?」
二人は同時に、さらに頬を赤く染めて、例の少年の方を見た。佐渡が言うように、少年は笑いを一生懸命に押し殺しながら、二人の方を見ていた。
それを見て、進と雪は、再び顔を見合わせると、恥ずかしそうにうつむいた。
「すみません……」
と、少年が可笑しそうに顔をほころばせながら言った。
「ねぇ、こういうのを、夫婦喧嘩っていうの?」
どこでそんな話を聞いてきたのか、「夫婦喧嘩」の意味もわかっているのかいないのかわからないが、突然出てきた言葉に、進たちはびっくりした。
「夫婦っ!?」 「ち、ちがっ!……」
焦って否定しようとする進を制して、佐渡があっさりとそれを肯定した。
「そうじゃ、お前さんも大きくなったらなぁ、こんなしっかりした嫁さん貰うんじゃぞ。ちょっと恐いが、頼りになるぞぉ」
実は、少年がそんな言葉を知っていた犯人は佐渡だった。いつかの進と雪のやり取りを、佐渡に聞かせた時、「あれは夫婦喧嘩だから、笑って見とればええんじゃ」と笑ったのである。少年は、そのことをしっかりと覚えていたらしい。
「せんせいっ!」
雪が困った顔で叫んでも、佐渡はニコニコしている。少年も、きらきらした眼差しで二人を見た。
「うん。僕、大きくなったら地球でお姉ちゃんみたいな強いお嫁さん探すよ。お兄ちゃん見てたら、怒られるのって楽しそうなんだもの!」
「あっはっはっは、強いとはええのう、そうじゃろそうじゃろ」
佐渡は大受けして笑い出した。進も少年の言葉には苦笑するしかなかった。ある意味では当たっている。ちらりと少年の顔を見ると、彼は嬉しそうに進を見返した。
こんな風に、少年は進や雪、佐渡らと親しくなっていた。この二日間も、医務室と進の病室を、何度も行ったり来たりしていた。
(4)
進が休養していた二日間。少年は、ちょくちょく進の病室にやって来た。「お姉ちゃんの代わりに見張りに来た」と言って笑うだけで、特に何を話すわけでもなく、しばらく部屋をうろちょろするのだ。
いまだに少年は自分のことを話したがらない。それで代わりに、進が自分の子供時代のことや、家族のこと、年の離れた兄のことなどを話した。
そんな話を、退屈しないで、いつも面白そうに聞くのだ。そして、進の幸せな少年時代の話を聞くと、ふと寂しげな羨ましそうな顔をする。
そんな時、進は、少年が生まれた星ディンギルの人間関係の希薄さを思い出しているのかもしれない、と思った。
そして結局、また何も言わずに出て行くのだった。ただそれだけだったが、進と少年は、なにか心が通じ合うのを感じていた。
進は、少年の顔を見て、そんなことを思い出していた。それから、進は、おもむろに立ち上がった。健康に太鼓判を押されたのだ、ここにいる理由はなくなった。
「さあっ! これから色々と忙しいんだ。雪、行くぞ!」
「はいっ。坊やは安全なところで隠れてるのよ。いいわね」
雪が声をかけると、彼はコクンと頷いた。
「わかった…… お姉ちゃんもお兄ちゃんも気をつけて」
佐渡と少年に見送られて、二人は医務室を後にした。その時の少年の心には、見送る笑顔とは別に、複雑な思いが入り混じっていた。
ディンギルの人々とは違う、地球人のやさしさに触れた少年は今、人を思いやるという気持ちに目覚めた。
進を気遣う雪の姿、弟の次郎を思う兄の姿、若い二人を温かく見守る佐渡の姿、そして、命がけでヤマトを守ろうとしたあの艦(ふね)の姿……
人のためを思うことが、どれほど美しいことなのか。どれほど心を温かく、時には熱くさせるのか…… 彼は、この数日間で、生まれて初めてそれを知った。
僕ができることはなんだろう?――ずっと考えて、彼が出した結論は、やはりこれしかなかった。
地球とディンギルの戦いをなんとかやめさせること。父親を説得して、あの水惑星の動きを止めてもらうこと。ディンギルの人にも、地球の人と仲良くしてもらうこと。
あの二人のために、ヤマトのみんなのために、そして地球の人々のために……
しかし、彼には、どうすれば父の元にその意志を伝えに行けるのか、それがわからなかった。
(5)
進たちを見送った後、少年をアナライザーに預けて、佐渡は一人、艦長室に往診に来ていた。
椅子に座った沖田の体をくまなく検査した後、佐渡はほっと息を一つついて自分も椅子に座ると、持ってきた酒をぐびっと飲んだ。
「どうかね? 佐渡先生」
「ああ、特に問題はないようですな。だが、久々の大ワープですからのう。何があるかわかりませんのでなぁ。何か体調でおかしいところはありませんかな?」
「特には…… わしはどこもなんでもないんだが……」
沖田が外の宙を遠い目で見た。
「ん?」
「なんと言っていいかわからんのですが、最近、ヤマトがかわいそうに思えてきましてなぁ」
外を見ていた顔が、くるりと振り返ると、佐渡の方をじっと見た。目深にかぶった帽子と蓄えたひげのために、沖田の表情はわかりにくい。だが、長年の付き合いの佐渡には、彼の瞳の憂いが手に取るようにわかった。ぽつりと言葉を繰り返した。
「かわいそう、ですか……」
「200年の眠りから覚まされたあの時から、ひたすら戦い傷つき、それでもまだ戦い続けているこのヤマトが…… もう、眠らせて欲しいと訴えているような……そんな気がしてきてね」
「艦長……」
「なあ、佐渡先生」
「なんですかな?」
「この戦いが終わったら、ヤマトはもう……眠らせてやってもいい、そう思わんかね? そして、わしらも……もう……」
「…………そうですなぁ、ヤマトと一緒に、我々もいい潮時かもしれませんな」
ヤマトも自分達も一線から退いて、あとは後進に任せたい。佐渡も同じ気持ちだった。
「古代をはじめ、ヤマトの子らは、もう一人前になってくれた。彼らはもう、ヤマトがなくても大丈夫だ」
「ヤマトがなくても…… ヤマトで培った力と、仲間達との友情は、決して消えることはありませんからのう」
佐渡は、部屋に備え付けのコップを取り出して、酒を半分ほど注ぐと、沖田に差し出した。沖田は、軽く微笑んでそれを手にした。
「わしはヤマトを眠りから起こした張本人だ。この戦いを無事に終えたら…… いや、必ず終えて、そして、ヤマトがもう一度眠る時には…… その時は、わしの手であの坊ケ崎に、帰してやりたい……」
コップを見つめながら、ふと漏らす言葉に、佐渡も黙って頷いた。
(6)
第一艦橋では、島が一人ワープの最終確認を行っていた。航路計算の最終チェックのため、太田は第二艦橋に行っている。
第一艦橋は誰もいなくとも、静かではない。あちこちで計器類が反応し、電子音が聞こえたり、ちかちかとランプがともったりする。時には、艦内通信で話している声まで入ってくる。
島は、ヤマトの自席に座っていると、とても心地よかった。自分の体がその椅子にしっくりとなじむのだ。ふつふつと、戦いへの決意が沸き上がってくる。
(あと数時間後に、最終ワープに入る。それが終わったら、決戦……だ。次郎! 見ていてくれ。俺達はきっと地球を守って見せるからな! また、一緒にサッカーをやろうぜ)
地球に思いを馳せながら、前方の窓から外を見た。限りない宇宙が眼前に大きく広がっている。宇宙を背景に、大声で笑う次郎ややさしい眼差しの両親の姿が思い起こされる。
しかしそこには、地球はない。ただ、暗い宇宙と限りなく無数の輝く星々が見えるだけだ。じっとみつめていると、次郎や家族の顔が、今度はテレサのはかない姿に変わっていった。
戦いへの決意の影に隠れる思いが、島の心を締めつけた。
(テレサ…… 君は今どこにいるんだい? 僕は……いったいどこへ行けばいいんだろう)
島は、ポケットに入れたホログラムカプセルを、ぎゅっと握り締めた。
(7)
その時、ツイーンという音が鳴って、足音が聞こえてきた。と、島が見ていたテレサの像が、窓に映った雪の姿に変わった。
島が、はっとして振り返ると、二人はすがすがしい笑顔で、近づいてきた。
「島、予定通りに進んでいるか?」
進は、隣の戦闘指揮席にドカリと腰を下ろすと、いつも通りの口調で話しかけてきた。雪も何も言わずに、レーダー席についた。二人はいつもと同じ二人だった。
「ああ、大丈夫だ。予定通りにワープできる。心配するな。それより、古代、体の方どうだったんだ? ちょっとでも不調なところがあるなら……」
まだなにか言いたげな島を制止するように、進は右手を前に差し出し、眉をしかめた。雪も顔を上げて二人を見た。
「おいおい、お前までなんだよ。心配性は雪だけにしてくれってんだ。ああ、大丈夫だよ、佐渡先生が太鼓判を押してくれたよ!」
「ほんとか? 雪」
進の答えじゃ信用できないとばかり、島は、体を斜めにひねって、後ろの雪を見て尋ねた。
「うふふ…… ええ、ほとんど大丈夫ですって。でもね、古代君ったら、それを聞いたとたん、もう鬼の首でもとったみたいに、威張りだすのよ! 何かあって困るのは、私達の方なのにねぇ、島君!! 自分でよく注意するように、もっと言ってやって」
ここに来る前に、またいつもの言い合いでもしてきたのか、と思うと、島の口元から思わず笑みがこぼれた。そして、雪が投げかけた言葉に呼応して、何かを言おうとしたが、進に先んじられてしまった。
「あのなぁ、この二日間、ずっと大人しくしてたんだ。これ以上じっとしてたら、おかしくなっちまうよっ!」
進としては、さっきから同じことばかり言われている上に、ニヤニヤ笑って見ている島の手前、引っ込みがつかなくなった。
「だからそれが、ダメなんだっていつも言ってるでしょう! もう少し自重してって言ってるだけじゃないの」
「大丈夫ってったら、大丈夫なんだ! しつこいぞ、ちょっと」
「まあっ!!」
雪は両手をレーダーのある操作盤にバンとつくと、席から立ち上がった。雪のその勢いに、進が一瞬ひるんだ時、島が大声で笑い出した。
「わっはっはっは…… まさに、なんとかの喧嘩は、犬も食わねぇ、ってやつだな。これは、古代、お前が悪いよ」
「ちぇっ、佐渡先生と同じこと言いやがって……」
島にあっさりと雪に味方をされ、進は口をとんがらせた。その顔は、あの悪ガキだった頃の進そのままで、おかしかった。一瞬、あのイスカンダルへの旅の途中に戻ったのかと思うくらいだ。
だが、今はもう……それから何年も経っている。進と雪は、れっきとしたフィアンセ同士だし、喧嘩するほど仲がいい、というわけだ。
「ぷぷっ、誰が見てもそう見えるんだよ、お前達は!」
(8)
形勢が断然不利になった進は、話を別方向へ強引に持っていった。
「お前なぁっ! 人のことをからかってないで、自分のこと考えろ!自分のことを!! なぁ、雪、そう思うだろ?」
「えっ? ええ……そうね。島君もそろそろ……自分の幸せのこと考えなくちゃダメよ」
進から突然振られた雪だったが、それは本当だった。彼が自分達のことを案じてくれているのは、嬉しいが、彼にも幸せになって欲しい。そんな思いが口をついて出てきた。
「…………」
突然話を自分に振られた島は、笑い顔をすっと収めて、視線を下に落とした。雪がその様子に気付いて気遣わしげに言った。
「ごめんなさい。私達が言えることじゃないとは思うんだけど……」
「……ありがとう、雪。この戦いが終わったら……ゆっくり考えてみるよ。いろんな気持ちにけじめつけて……」
雪の心遣いの言葉を聞きながら、島は自分が何をしたいのか、言わなければならないのか…… もう一度思い出していた。テレサのこと、そして雪のこと……
幸せになって欲しいのだ、雪には。そのためには……
「だがとにかく、これが終わって地球に戻ったら、まずはお前達の結婚式だ! それが最初のけじめだからな! わかってるな、古代!!」
俺の気持ちのけじめのためにも、それをしてくれないと困るんだよ! そんな気持ちを込めて言った言葉だ。進にも、それはよくわかっていた。だから、また話をこっちに戻されて、少々不満気味ではあったが、きっぱりとこう宣言したのだ。
「ちぇっ、結局そこに帰ってくるのかよ! わかったよ、お前に何も言わせないくらいキチンと決めてやる!」
「おおっ、言ったな。雪、よぉく聞いとけよ!」
「うふふ、ええ…… 古代君も島君も二人とも楽しみにしてるわよ」
島は、雪に向かってウインクしながら、その微笑を心に受けとめた。二人は、やはり互いに心から愛し合っている。この戦いを終わらせれば、今度こそきっと二人に新しい未来がやってくる。島は、心からそう思った。そう信じていたかった。
(雪、幸せになれよ!! 地球に帰ったら、軽く笑いながら、君に俺のあの頃の気持ちを伝えよう。そして、俺も新しい道を歩き始めることにするよ)
戦いを前に、もう迷いは禁物だった。島は、地球を守ることだけを考えようと思った。そして、何もかも終わって、雪も幸せになったら…… その時には、テレサのホログラムももう一度見ることができるかもしれないと、思うのであった。
それからまもなく、予定通り、ヤマトはアクエリアスのワープアウト地点へ向けての大ワープを決行した。
古代進、森雪…… 島大介…… ディンギルの少年…… 沖田十三…… 佐渡酒造……
それぞれの思いを胸に秘めた、最後の決戦のために……
Chapter5 終了
(背景:Giggrat)