絆−君の瞳に映る人は−

--- Chapter 4 ---
                                 

 (1)

 進たちのプロジェクトが始まってから、1ヶ月が過ぎた。諒の采配に、チームワークの良い放射能研究所のメンバー達、そして、進たち現場からの参加者も加えて、内容が極めて充実してくるのが分かった。

 プロジェクトの進行は順調であったが、進の心はやはり晴れないままだった。諒と雪が二人で話すのを見るたびに、心の中で波がたつ。それが、さりげない会話であったとしても、進の心を突き刺してくる。だが、進はそれをいちいち雪に言って、仕事の邪魔になるようなことはしたくなかった。
 仕事の後の進と雪は、相変わらずで、二人だけの時間は楽しかった。そこでは、二人とも意識して諒のことを話題にしようとはしなかった。それが、二人の心に少しずつわだかまりになりつつあるというのに。

 「……というわけで、今日までの中間発表とさせていただきます」

 諒が、メンバーも同席させての、長官への状況報告を行った。古代守参謀も同席していた。

 「うむ、良く分かった。楽しみな内容になってきているようだな、上条君。それで、プロジェクトの最終発表はいつ頃できそうだね。」

 「はい、やはり現場の方々から色々と指摘がありまして、それをもう少し詰めないといけませんので、やはり、あと1ヶ月はいただきたいのですが…… 10月一杯にはなんとかまとめたいと思っています」

 「いいだろう。11月の頭に防衛会議を設定するから、その時の議題にしたいと思う。その線でよろしく頼むよ」

 「わかりました」

 肝心なところを終え、場が和んだ時、長官が諒に尋ねた。

 「ところで、森君の秘書ぶりはどうだね?」

 「それはもう、大助かりですよ。雪さんには、プロジェクトの方でも大いに活躍していただいているんですが、個人的には、秘書を勤めていただいている方がうれしいですね。長官、このまま私に貰い受けさせてもらえませんか」

 諒は、笑顔でそう答えた。進と雪は、その言葉に思わず長官の顔を見た。

 「それは困るよ、上条君。私だって、今は我慢しているんだからね」

 「あははは……やはりそうでしょうね。 いや、失礼しました。」

 雪は、諒の言葉がただのお世辞だったのだと、思ってホッとしたが、進は、渋い顔をしたまま、じっと下を向いた。守はその進の表情に気づいた。

 長官が引き上げると、諒は、雪に言った。

 「雪さん、今日の研究会の件なんですが、午後1時から、アメリカのリッター教授との会談でしたね。それだけでしたか?」

 諒は、今日のスケジュールを雪に確認した。雪は手帳を見るまでもなく答えた。

 「ええ、個別会談の予定はそれで終了です。研究発表の方を、何か見られるんでしたら、時間を取る事もできます。あと、夕方からの懇親パーティーがありますが、参加されるんでしょう?」

 「そうですね。ちょっと立ち寄りたい研究発表があるので、それは自分で自由に回ります。雪さんは何か見たいものはありましたか?」

 「ええ、できれば、この発表を……」

 「それじゃ、一緒に行きましょう。古代君はどうですか?」

 「いえ、私は今日は、古代参謀と砲弾のことで相談したい事があるので……」

 進は、固い表情のまま答えた。

 「わかりました。あっ、それから、雪さん。夕方のパーティーですが同行してもらえませんか?」

 進は、二人の姿を見ないようにしていたが、耳には容赦なく会話が入ってくる。

 「はい?」

 「今日は、海外からの出席者が多いので、おそらく、皆さん、ご夫人連れだと思うので、あなたにも付きあって欲しいんですが…… もちろん、仕事として」

 「……分かりました」

 仕事として、といわれると、断る理由もなくて、雪はそう返事するしかなかった。雪は、このプロジェクトも秘書の仕事も、仕事としては満足していたが、進が、仕事中は笑顔をほとんど見せないし、できるだけ雪の方を見ないように努めているようで嫌だった。諒は、平然とした顔で雪を呼び、業務を依頼する。それは、まるで進がいることなど眼中にないように、自然だった。

 (古代君、何か言ってくれてもいいのに…… そうでなかったら、そんな顔をしないで! もっと、しっかりしてよ)

 雪は、進にいら立ちとかすかな怒りを感じていた。進は、雪の視線を感じていたが、視線を返すことはしなかった。

 「では、そう言う事で、今日は、こちらに戻りませんから、佐藤君、後はよろしく頼みます。他のメンバーでも、研究発表を見たい人は行ってください。では雪さん、行きましょうか。」

 諒たちが出ていくと、佐藤と放射能研究所からきた他のメンバーが噂話をした。

 「ねぇ、佐藤さん。上条副所長と森さんって、いい感じじゃないですか? 副所長もあんなにもてるのに、いままでは本人には全然その気がなかったようですけど、森さんにはなんかすごくいい笑顔を向けてませんか? 二人は恋人同士になってたりして……」

 「うん、確かに、上条副所長もそろそろ身を固めてもいい時期だし、森さんなら申し分ないね」

 進にも、当然この話声は聞こえているはずなのに、進は手をぎゅっとにぎったまま、何も言わなかった。その姿を守はじっと見つめていた。

 (2)

 進と守が問題にしていた部分について、十分に検討した結果、最終判断は真田に仰ごうということになった。近々、真田のところへプロジェクトの代表が行くことになっていたので、その時でいいだろうという結論に達したのだった。もう外は薄暗くなってきていた。

 「進、一緒に飯でも食っていこう。」 守が、進を誘った。

 「うん、いいよ。」 進も、久しぶりで兄と二人の食事をする気になった。

 二人はにぎやかな居酒屋へ入った。こういった居酒屋の方がかえって周りに会話が聞こえない。二人は、ビールと何品かの惣菜を注文すると、話し始めた。

 「どうだ、進。この仕事は? 地上勤務もたまにはいいだろ」

 「うーん…… 俺はやっぱり、飛んでる方がいいけど……」

 進は、でてきた料理をつつきながら、つぶやいた。

 「面白くないか?このプロジェクトは……」

 「そう言うわけじゃないけど……」

 「チーフの上条は、俺が見てもいい男だ。科学者としても、人間としても立派な男だぞ。彼と一緒に仕事していて、そうは思わんか?」

 「そうだね……」

 歯切れの悪い進の態度に、守はとうとう笑い出した。

 「はははは、やっぱり、お前、上条のこと嫌いなんだろ」

 「なんで、俺が!……」

 「雪のことがあるからさ」

 「うっ……(バレてる)」

 「どうして、今日、佐藤たちが噂しているのを否定しなかった? 雪は自分のフィアンセだって。上条の恋人ではないって」

 「そんなこと、別に言う必要ないじゃないか…… 仕事では、俺と雪はただの同僚のつもりでいつもやっているんだ」

 「ただの同僚にしては、ずいぶん、しかめっ面してたように見えたが……」

 「兄さん!」

 「はははは…… けど、そんな強がり言ってていいのか? 上条はずいぶん雪のことを気に入ってるようだぞ。元々幼なじみだから親しみもあるのかもしれないが、進、お前、雪のことがっちりつかんでおかないと。兄貴の俺がいうのも変だが、上条にあれだけ大事にされて、惚れない女がいるんだろうかと心配になるよ」

 「やっぱり、兄さんもそう思うのかい……」

 進はため息交じりに言った。進が心の中に思っている不安を守に指摘された。自分より諒の方がどれを取っても優れているような気がして、進は自分に自信をなくしかけていた。

 「心配するな大丈夫だよ、進。雪はきっと例外だと思うがな。それに、お前だってどこにだしても恥ずかしくはない立派な宇宙戦士じゃないか」

 守は、すっかりしょげてしまった進を慰めて、さらに言った。

 「だからいつも言ってるだろ、お前達早く結婚しろ。結婚すれば周りだって落ち着くさ。婚約してるんだから、話は早いもんだろ」

 「う……ん」

 しかし、今の進にはそれを言い出すことができそうにもなかった。進は、雪と諒のことを自分の中から追い出してしまいたかった。プロジェクトさえ終われば…… 進は、いつの間にかただひたすらプロジェクトの終了を祈るようになった。

 (3)

 諒との一日の仕事とパーティーへの出席も無難に終えて雪はほっとしていた。

 「雪ちゃん、今日はごくろうさんでした」

 諒は、進がいないと雪のことを「雪ちゃん」と呼ぶ。雪は、なぜか諒にそう呼ばれるのが心地よかった。幼い頃の二人に戻ったような気がするからかもしれない。

 「ね、雪ちゃん、まだ時間も早いし、僕の家に行かないかい? 母さん、雪ちゃんに会ったらびっくりするよ」

 諒に誘われて、雪はなつかしい諒の母親の顔を思い出していた。

 「そうね、私も一度お会いしたいわ。でも突然尋ねて行って大丈夫?」

 「暇にしてるんだから、いいんだよ。さっ」

 諒の家の前まできて、雪はびっくりした。それが見上げるほどの豪邸だったからだ。

 「これが、諒ちゃんの家? すごい家ね」

 「僕の家というより、僕の義父(ちち)の家だよ。上条財閥の本拠地だからね…… でも、僕には関係のない話さ。僕はいつもは、研究所の近くに住んでるから」

 (あの上条財閥が、諒ちゃんのお義父さまのだったのね。同じ上条といっても、まさかそんな人と諒ちゃんのお母さまが結婚されてたって知らなかった)

 雪は、家屋敷の立派さに圧倒されそうになった。諒の家に入って、応接間に通されると、メイドがお茶とケーキを持ってきた。ほどなく、諒の母が入ってきた。

 「諒、久しぶりね。元気そうでよかったわ。今日は素敵なお嬢さんをお連れなのね。はじめまして。私、諒の母の上条香です。」

 母親のかしこまった挨拶に諒はプッと吹き出した。

 「母さん、わからないの?彼女の事・・・」

 「え?」

 そう言われて、雪の方をじっと見ても、まだ香には雪の事を思い出せなかった。

 「お久しぶりです、おばさま。森雪です」

 「もり……ゆき?…… まぁまぁ、どうしましょ、雪ちゃんなの? まあ!こんなに大きくきれいになって……」

 香は、やっと雪に昔の面影を見つけて、うれしそうに近くまで来て軽く抱きしめた。

 「おばさまも、とてもお元気そうで……」

 雪は、それから諒と香と3人で昔の思い出や、今、一緒に仕事をしていることを話した。懐かしい思い出が次々と出てきて、話が弾み、時間があっという間に過ぎてしまった。

 「そろそろ、おいとましますわ。おばさま、楽しいお話でした。今度は、私の両親の方へもいらしてくださいね」

 「あら、もう、そんな時間? どうもありがとう、懐かしかったわ。また、来てちょうだい。雪ちゃんならいつでも、大歓迎よ。諒、ちゃんと、雪ちゃんを送ってくのよ」

 「あら、いいですわ。一人で大丈夫です。諒ちゃんは、せっかく、久しぶりにご自宅に帰られたんですからゆっくりしてらしてください」

 雪は遠慮したが、近くのターミナルまで送ってもらった。雪は、諒の母との会話で久しぶりになごやかな気分になった。

 「諒ちゃん、今日はどうもありがとう。とても楽しかったわ」

 「雪ちゃんに来てもらって、母も大喜びだったよ。またいつでも来てやって。僕がいなくてもいいから」

 「ええ、でも、諒ちゃんのお母様の再婚相手があんな大物の方だったなんて知らなかったわ」

 「義父は、いい人だよ。いわゆる金持ちとは全然違うんだ。僕も最初は心配したよ。母はこんな世界でやって行けるのかって…… でも、義父は、ちゃんと母を守ってくれたし、仕事を少し減らしてでも、母のことを思いやってくれていた。義兄も、義妹も、僕達を家族として迎えてくれた。信じられないくらいラッキーだったんだ。僕は、残念ながら商売には興味がないから、義父の助けはできないけど、義父は、僕の仕事を評価してくれているし……」

 雪は諒の話を聞きながら、諒がとてもいい家族環境にいることを知ってうれしかった。

 「ほんとに、いいご家庭でよかったわね」

 「ああ、だから、今度の母の注目は僕の結婚問題らしくてね。見合いの話を次から次へと持ってくるから困ってるんだよ」

 「うふふふ、そうなの? 諒ちゃんなら素敵な彼女がたくさんいそうなのに」

 「それがね、全然なんだ。きっと、昔、僕におませなことを言っては困らせてたかわいい女の子のことが忘れられないんだよ」

 諒は、真面目な顔をして雪にそう言った。

 「えっ?」 雪は、もちろん、それが自分のことを指していることに気づいた。

 「あっ、あの……それは……」

 雪は、どう答えていいかわからなかった。

 「ははは…… 別に答えを期待していないよ、雪ちゃん。でも、古代君に不満でもあるなら、いつでも僕が君をひきうけるよ」

 雪は、諒の目が雪をやさしく見つめているのを感じた。

 (ありがとう、諒ちゃん。でも、わたしは……)

 (4)

 雪を送ってきて家に戻ってきた諒に、香はさっそく声をかけた。その声はうきうきしていた。

 「ねえ、諒。雪ちゃん、とても素敵なレディーになってるのね。びっくりしたわ。あなた達お似合いよ。あなたもそろそろ、お嫁さんを真面目に考えて欲しいと思ってたけど、雪ちゃんならとても素敵じゃないの。あなたったら今までどんなお嬢さんの写真を見せても、興味ないような顔してたけど、雪ちゃんがいたからなのね」

 「母さん、話が飛躍し過ぎだよ。たまたま、僕と雪ちゃんは最近再会して、一緒に仕事をする事になっただけだよ」

 諒は、雪との付き合いが長くはないことを母に伝えた。

 「あら、でも、あなただって、まんざらでもないような顔してたわよ。」

 香はそれでも、引かずに言った。

 「だめですよ、母さん。第一彼女にはれっきとしたフィアンセがいるんですから」

 諒は、母の浮かれた気持ちを押しとどめるように言った。

 「あら、そうなの・・・残念だわ。でも、結婚されてるわけでもないんだから、チャンスはあるかもね」

 「母さん!」

 諒は、母親に対してはぴしゃりと否定してみたが、自分の心の中では複雑な思いが湧き上がっていた。

 (雪ちゃんのこと、ほんとに惚れたのかもしれない。いや、もしかしたら、10年前離れ離れになった時から、僕は雪ちゃんが大人になって現れるのを待ってたのかもしれない。あの、小さいくせにおませだったかわいい雪ちゃんが……
 でも、出会うのが遅かった。彼女には最愛の男性がいる。古代進、地球を救うため、自分の命をかけても必ずやり遂げる男。しかし、あの男、男としては確かに立派だが、本当に雪ちゃんは幸せなんだろうか。あの男を愛しつづけることが…… 僕は本当に出会うのは遅すぎたんだろうか……それとも)

 諒の心の中に雪の存在がどんどんと大きく広がっていった。

 (5)

 プロジェクトが始まって、1ヶ月半、防衛会議も11月3日と決まり、それに向かって、最後の詰めの議論が毎日続いていた。諒は、あれ以後も雪に対する態度は変わりなかった。そして、進は心にわだかまりを残したまま、仕事にまぎれて、雪との時間を過ごす事がめっきり少なくなっていた。休みの日も献上して、進は黙々とプロジェクトを進めていた。そのため仕事だけは順調に進んでいた。

 「いえ、それはだめです!そんなことをしたら、敵の攻撃で被弾した箇所から、もれた放射能がこの地区とこの地区へ流れて行く可能性があるじゃないですか!」

 「しかし、古代君。この案でいかないと、全体をサポートできなくなる。それに、その可能性なら我々も検討したが、ほとんど可能性は低いという結論になったんだよ」

 「いくら可能性が低くても、可能性があるかぎりだめです。私達はですから……ここで」

 進が佐藤と真剣になって議論していた。そこまで黙っていた上条が口を開いた。

 「とすると、古代君。代案でもあるのかい?」

 「はい、この部分にこれを……」

 進は、説明したが、諒はそれを否定した。

 「それは無理だよ、そこにそんなスペースはない」

 「それがそうでもないんです。雪、昨日写したビデオをパネルに表示してくれないか」

 「はい。これは昨晩、実際にちょうどドックにいた巡洋艦「きふね」の中を撮影させてもらったものです。問題の箇所ですが、これを見てください。ここに、設計図では狭いと思われていたスペースが実際にはこれだけの余裕としてでてきているんです」

 雪は的確にビデオ画面を指しながら説明した。

 「佐藤君どう思う?」

 佐藤は、真剣な顔をしてその画面を食い入るように眺めていたが、意を決したように言った。

 「ええ! これならやれるかもしれません!! この件について、一日お時間をもらえませんか。我々もさっそく現場を確認して検討して見ます。副所長、古代さん」

 「そうか、分かった。頼んだよ」

 佐藤が元気良く飛び出して行った。進と雪はホッとして顔を見合わせて微笑んだ。

 (古代君の笑顔、久しぶりに見たわ。昨日、遅くまで手伝って本当に良かった)

 残った進と雪を見て、諒は言った。

 「さすがですね、古代君、雪さん。そんなところに目をつけるなんて」

 「古代君が、一度あのタイプの巡洋艦に乗ったことがあって、たしか、あのスペースが取れるんじゃないかって言いだしたもので、昨晩急に思い立って行ってみたんです」

 「昨晩って、昨日も夜の10時まではここにいたよね、その後にかい?」

 「ええ」 雪はこともなげにそういった。進は、一旦考えるとどうしてもそれを検証したくなる。それに雪はいつも付き合っていた。それも、雪にとっては楽しいひとときであるはずだった。けれど、進はそんな時も義務的に話すばかりで、雪が話しかけても生返事しかしない。そんな進に雪はどうしていいか分からず、今にも爆発しそうになっていた。

 「いつも思うが、一体、君達はいつ寝てるんだ?って思うことが何度もあるね。よく、いつもこんな短時間で調査してくるものだ。あきれてしまうね。だけど、君達を推薦した長官の選択は全く正しかったということだね」

 「我々は一旦戦場に出たら、その艦内のクルーの全メンバーの命について責任を持たなくてはなりません。たとえ、一人でも命を粗末にするわけにはいかない。それが、ひいては地球を守る事につながるんです。万一の可能性もなくしておきたいのです。そのためのプロジェクトですから」

 進は真剣な表情で言った。そんな時の進の顔が雪は大好きだった。

 (古代君、とてもいい顔してる。あなたがいちばん素敵に見える顔ね。でもいつものあなたをとりもどしてくれないと、私の心に不安が広がってしまうのよ…… いえ、もう今広がっているの、実際に!)

 プロジェクトが大詰めに差し掛かってくると共に、進たちが議論の中心になることが多々あった。それが、進たちをこのプロジェクトに呼んだ理由でもあったし、進たちはそれに見事に答えていた。諒にとって、望むべき展開となったことはとてもうれしく思っていた。それと同時に、進のあまりにも真摯な地球防衛への態度に驚きも隠せなかった。

 (話には聞いていたが、これがヤマトのクルーの精神なのか、20歳そこそこの青年がそこまで地球や人類のために真剣になれるものなんだろうか。彼はそんな責任をしょって重くはないのだろうか。並の人間としての幸せを望んだりしないんだろうか。他人のことなど気にしないで、雪ちゃんとの二人だけの平凡な幸せを……)

 諒は、進と雪を見つめながら、考えていた。

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