レモンティー(宇宙戦艦ヤマトIII 第4,6話より)
進と同期の生活班炊事科の平田、彼がなぜ進にレモンティーを入れるのか…… そんな疑問に答えるためにできた話です。彼ら二人には、訓練学校時代に、共に訓練に耐えた友情があったのです。
 (1)

 16時間に渡る訓練の後、宇宙からの流れ弾を処理したヤマトは、太陽系の惑星間を順調に航海していた。乗組員達もやっと訪れた静寂の中、ほとんどの者が眠りについていた。

 第一艦橋を出た進も、廊下を歩きながら、緊急要員以外はもういないことを確認して、艦長室へ戻ろうとした。そこへ、雪が後ろから声をかけた。

 「艦長、お疲れ様です」

 雪は、今回の旅では、進の事をできるだけ艦長と呼ぶ事にしている。私情が入らないようにという進の決意を後押しするつもりで。

 「ああ、雪か…… 君も疲れただろ? 早く部屋に戻って休めよ」

 進は、疲れたときには、雪の姿を見る事が何よりも心をなごませることではあったが、公の場では、常に艦長と生活班長として接することを自分に課していた。

 「ええ、でもなんとなく寝つけなくて…… あ、お茶でも入れてきましょうか?」

 「ん? そうかい。じゃあ、平田がさっき作ってくれたレモンティーが、確かまだ残ってると思うんだ。取って来てくれるかい?」

 さっき平田が作ってくれた紅茶を、おかわりしそこなった事を思い出して、進はそう言った。

 「ええ、わかったわ。部屋に帰って待ってて、すぐ行くから」

 雪はそう言うと、ティーラウンジへ駆けていった。

 (2)

 雪が、ティーラウンジのサーバーに着くと、平田が一人まだ後片付けをしていた。

 「平田さん、まだいらしたの?」

 「ああ、森班長…… 今、土門とさっきのミサイル破壊を確認した後、ここの片付けをしていたところなんですよ。すぐ終わりますから先に休んでください」

 「いいのよ。艦長がさっきのレモンティーの残りが飲みたいっていうから、取りに来たの」

 「えっ? あ、すみません。もう、さめてしまったんで、たった今処分してしまったんです。今、新しく作りますから、ちょっと待ってください。」

 「まあ、それならいいのよ、平田さん。艦長には、私が何か冷たいものでも持っていくわ。お湯を用意するの、面倒でしょ?」

 「いいんですよ、すぐですから、そこにかけて待っててください」

 平田は、一旦片付けた紅茶のセットをまたひっぱりだすと、お湯を沸かし始めた。ヤマトには給湯システムがあるが、紅茶を入れるには、やはり再度沸騰させた方が美味しいらしい。
 平田の手際のいい作業を眺めていた雪がポツリと言った。

 「平田さんのレモンティー、本当に艦長お好きよね……」

 「は? あ、いえ…… すみません、フィアンセの森班長を差し置いて私が入れるのは変ですね。これからは気をつけます」

 「ううん、そうじゃないのよ、そんなことは全然気にしてないわ。でも、なにか特別に大切にしてる何かが二人の間にあるように思えて。あっ…… 聞いちゃいけないことだったかしら?」

 平田が雪に遠慮して困っているようなので、雪は慌てて言い添えた。

 「……いいえ…… 私と艦長は……同期なもので。えっと……今だけ古代と呼ばせてください。古代とは宇宙戦士訓練学校で同じ釜の飯を食った仲間なんですよ」

 平田は、空を見つめるような格好をして、昔に思いを馳せていた。

 「島君達とも一緒なのね」

 「はい、でも、私は2度受験に失敗して、古代たちより2歳年上ですけどね。1度目は体力不足で、2度目は試験直前に骨折して体力試験を受けられなくて…… それでも、どうしても宇宙戦士になりたくて、3度目にやっと…… まあ、そのころになると、若者の数も減ってきてたんで、玉石混交っていうか、私なんか何かに役に立つだろうくらいで合格したようなものでしたね。それ比べて古代と島は、訓練学校で常にトップを争ってたし、私なんかはとても足元にも及びませんでした。

 それが、たまたま古代と部屋が同室になったことがあって、それから親しく話をするようになったんです。古代は、あの頃はガミラスへの憎しみをぎらぎらさせて、ちょっとつっぱってましたが、根はいい奴だってすぐわかりました。私なんか歯牙にもかけなくてもいい存在なのに、一生懸命フォローしてくれましたから。

 ははは…… これでも、私も砲術希望だったんですよ。それが、いつも訓練で遅れをとっては、教官に居残りをくらって…… そんな時、古代が必ず付き合ってくれるんですよ。自分も訓練になるって言ってね」

 *************訓練学校時代**************

 「おい! 平田!! やって見ようぜ。ほら、あの的を狙って……」

 「すまないな、古代。いつもいつも…… だけど、どうしてなんだか、狙いがうまく定まらないんだ。じっと見て撃ってるはずなんだが……」

 「うーん…… 腹に力が入ってないんじゃないか?銃を撃つときは、俺は臍に力を入れて撃つようにしてるんだ。やってみろ、ほら、ここ! よーし、一回深呼吸して見ろ! 落ち着いたか。うん、いいぞ! それから撃ってみろ」

 進は、平田の臍のあたりをこぶしでぐっと押し付け、そのまま射撃を始めさせた。

 「おおっ! なんかいい感じだ。お前の手に力をかけるようにすると狙いがぶれないよ」

 「な!そうだろ? 俺の手がなくなってもできるか?」

 「よし! やってみるよ…… ウン! この感じだ。わかる!!」

 「そうか!! よかったな。 これが基本だからな。あっははは……」

 *********************************

 (3)

 「そんな古代にわたしがしてやれたことといえば、美味しい飯を作る事くらいでしたね。料理は元々興味があったので、訓練学校の食事じゃ足りなくて、夜食をよく作っては食べましたよ。寮にはお湯を沸かす程度の簡単な台所があっったんでね。
 古代は、材料をなんとか調達してきては何か作ってくれって…… ははは…… いつも腹減らしてましたよ、あの頃は。その中でも古代が一番気に入ってたのは……」

 「もしかしたら……炒飯?」

 「あっ、ご存知なんですか? 今も好きなんですね?」

 平田は、雪がみごとに言い当てたのでニッコリ笑った。

 「ふふふ…… 一度作ってくれたことがあるの、古代君。あれ、きっと平田さんに教わったんじゃないかって、今思いついたものだから」

 雪は、以前進が得意げに作った炒飯の事を思い出して、くすっと笑った。

 「わたしは教えてませんけど、見てたんですね、古代。好きだったんですよ。ご飯とねぎと卵だけあれば作れるからよく作りました。うまくいけば、鶏肉かチャーシュー入りのを。古代はいつもうまそうに食べてたなぁ……」

 雪は、あの頃の進が平田の作った炒飯をおいしそう食べる姿が目に浮かんだ。

 (古代君、食べてるときはほんとに幸せそうだもの……うふふ)

 「あっと、お湯が沸きましたね。茶葉に入れて蒸らしますから、あと5,6分ほど待ってください」

 「茶葉によって蒸らし時間が違うの?」

 「ええ、そうなんです。この葉の場合は、5,6分ですけど、もっと長く蒸らすのもありますし……」

 平田は、紅茶の葉をティーポットに入れると、保温カバーをかけた。

 「ほんとによくご存知ね。それで、なぜ砲術希望から炊事のほうに入ったの? 土門君みたいに希望の班に入れなかった口?」

 「いいえ。土門はいずれ、希望の任務に着くことになるでしょう。それだけの力のある男ですから。古代もそれがわかってて、わざと関係のない部署に配置したんだと思います。将来、戦艦を背負っていく人間は、艦内のいろいろなところを知っておいて損はありませんからね。古代はそれだけ土門に期待してるってことでしょう。そんなことくらい、森さんもご存知じゃないですか?」

 「ふふふ…… さすが平田さんね。平田さんに土門君を預けて正解だったわ」

 「はは、買いかぶりすぎですよ。私は、最初から炊事班希望だったんです。ある時、訓練で怪我をしましてね。足を複雑骨折したんです。入学前に一度骨折した場所をもう一度やったもので、もう全速力で走る事ができなくなって…… あの時も、古代に助けられたんです……」

 (4)

 *************訓練学校時代**************

 「今日はサバイバル訓練をする! 24時間以内に、これから渡す地図の全項目をクリアして、ここに戻ってくること! もし24時間を過ぎた場合は、罰として1週間のトイレ掃除だ!」

 教官がニヤっと笑って言った。訓練学校も後半になり、ここまで訓練を積んできた面々にとって、今日の訓練を24時間以内にこなす事くらいは簡単な事だった。進も、渡された資料を見て、これなら17,8時間もあれば大丈夫だと、ほくそえんでいた。

 「よし! 行け!」

 教官の掛け声に一斉に皆が出発した。

 「おい! 島!! 競走だ。どっちが先に帰りつくか!」

 進は、今日も島をライバル視してにらみつけた。

 「おお! 負けるもんか!! この前は、俺が勝ってるからな。今回もいただきだぜ!」

 「ふん! あれは、お前の得意分野だっただろうが、今日は、射撃が多いから俺のものだぜ!」

 トップ争いをする二人を前方において、平田は必死について行こうとした。今回は、なんとかベスト10までに入って、皆を驚かせてやるんだ、と意気込んでいた。

 しかし、その意気込みとはうらはらに、平田はだんだんと先頭から遅れをとるようになった。

 (よし! ここで引き離されたらもう追いつけない! 近道をしよう!!)

 地図を見ながら、平田は近道を探した。好都合にそれが見つかって、平田は他の訓練生とは別の道に入った。しかし、それが間違いの元だった。そこは、厳しい崖道で平田はそこから足を踏み外してしまった。

 「わああああああ!!!」

 平田は大きな声を出して崖から滑り落ちた。

 「ん?何か声が聞こえたぞ。あの声、平田のような……」

 トップを走っていた進は、丁度、近道からあがった地点に来ていた。すぐ後ろには島が迫っていたが、進はその声が気になって、道をはずれて崖を降りていった。

 「おおい! 誰かいるのかぁ!!」

 進の叫ぶ声に、平田ははっとして答えた。

 「おおい! 崖の下に落ちたんだ! 助けてくれぇ!!」

 平田は必死に叫んだ。

 「平田か?」

 進にはっきりと平田の声が聞こえた。
 その声を頼りに進はずんずんと崖を降りていって、崖の最下部で倒れている平田を見つけた。

 「おい! 大丈夫か? 平田」

 「古代……すまない、足を折ったみたいだ……」

 「何! 歩けないのか?」

 「ああ、だめだ…… ここにいることを確認してもらえればいい。後で迎えに来てもらえないか。今は訓練中だ、先を急げ」

 平田は助けを求めたものの、訓練中の仲間を頼るわけにはいかないと思った。

 「何言ってる。怪我をしているものを置いて行けるものか! さあ、俺に掴まれ!」

 「俺を背負ってあの崖を登るつもりか? それは、無理だ! 悪いが後で、なにか道具を持ってきて引き上げてもらわないと……」

 平田が目線を上にやると、切り立った崖はほとんど垂直にそびえているように見えた。

 「無理かどうかやってみてからだ! さあ!!」

 進は平田を自分の背におんぶすると、崖を登り始めた。切り立った崖は、降りるときはあっという間だが、登るとなると、まるで上から迫ってくるようにきつかった。

 「くそっ!! こんなくらいで負けてたまるか!!」

 進は平田を背負ったまま、歯を食いしばって、ゆっくりゆっくりと崖を登っていった。そして、途中少し広い場所を見つけて休んだ。その間の進の呼吸は激しく乱れ、はぁはぁと何度も大きな呼吸を繰り返していた。その姿に平田は感謝と謝罪の気持ちでいっぱいになる。

 「古代、もういいよ。やっぱり先に行ってくれ。俺はここで待つ。そうでないと、24時間以内のゴールもできなくなる!」

 「だめだ! そんなことよりも、平田の方が大事だ! 必ず登りきってみせるから」

 そう言って、進は汚れて真っ黒になった顔で笑った。平田には、この進の笑顔と白い歯がいつまでも忘れられないものとなった。

 時間はかかったものの、進はようやく崖を登り終えた。そして、そのまま平田を背負って残り全ての項目をこなしていった。当然、前にも後ろにも誰も見えず、24時間を大幅にオーバーして、進と平田はスタート地点に戻った。

 スタート地点では、他の訓練生と教官が心配そうな顔で待っていた。

 「遅くなってすみません。古代と平田、ただ今到着しました」

 「うむ……」

 教官は、平田を背負っている古代の姿に、状況をすぐに把握したようだったが、それには言及せずに言った。

 「古代、平田……タイムオーバーだな。明日から、二人は罰としてトイレ掃除一週間だ!」

 「そんな!! 教官!! 私が悪いんです。ですから、私が一人でします」

 平田は、大慌てで教官に言った。進も意外な顔で教官を見たが、教官は何も言わなかった。軍の規律というものは、理由の如何にかかわらず絶対だと言いたかったのだろう。すると、進はなんの言い訳もせず毅然として言った。

 「いえ! 掃除は自分が一人でします。どんな事があったとしても、遅れたのは事実です。平田は骨折していて動ける状況ではありませんから」

 「古代!!」 平田が叫んだが、その声は無視された。

 「よし、わかった! 古代! お前一人でトイレ掃除だ。救護班!平田を担架に乗せて医務室まで連れていってやれ。 ……古代、ご苦労だったな。休んで、食事をとれ。以上だ! 解散!!」

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 (5)

 「結局、古代はそう言い張って、一人でトイレ掃除1週間やりましたよ」

 「ふふふ…… 古代君らしいわね。いつだって、誰一人として置いては行けない人だから。その後どうなるかなんか関係なくね」

 「ええ、それから私はしばらく入院生活でした。このまま訓練学校をやめようかと考えていたんです。古代は、暇を見つけては見舞いに来て、あきらめるなって励ましてくれました。でも、退院しても、やはり私の体は戦闘班としてやっていくのは無理だってことがわかって……

 退院すると、私は古代にお別れのつもりで、レモンティーを入れてやったんですよ。わたしは紅茶党でして、いつも自分でいれて飲んでたし、古代にも何度かいれてやった事があったんです。

 古代は、私が、そのレモンティーを別れのつもりで入れたことに気がついていたんでしょうね。真剣な顔でそれを飲んで、そして言ったんです。

 『なあ、平田、兄さんから聞いた受け売りなんだけど、戦艦って言うのは、何日もその艦内で生活しながら戦いをするんだ。そんなとき、一番大事なのは何だと思う? 食い物さ! 人間、食が満たされてると余裕ができるもんだ。そして、美味しい飲み物…… 『腹が減っては戦はできぬ』って昔からいうじゃないか。平田、お前にはその才能がある! お前、そんな道に入って戦艦を支えてみないか?』

 古代のその一言で、私の将来が決まったんです。私は、そんな道もあるんだって、はっと気がつきました。

 そして、それぞれが現地訓練に出ていく日、古代は、島と一緒に火星基地での訓練だと聞きました。私は、炊事科を希望し、そのまま訓練学校に残る事になりました。別れの日、私と古代は『お互い進む道は違っても、その道のプロフェッショナルになろう!』と誓い合ったんです。

 そして私は、古代に言いました。『いつかまた、同じ艦で仕事をする事ができたら、必ずお前に紅茶を入れてやる。特上のやつをな』ってね。

 それから、古代がヤマトでイスカンダルへの旅に出たことを聞きました。古代なら必ずやってくれると信じていましたよ、私は…… だから、私も栄養士の勉強をして資格を取り、古代に負けないように、地下防衛軍で勤めながらプロフェッショナルをめざしました。

 そして、白色彗星との戦いの後、補充要員としてヤマトに乗り組むことになった私は、以来、古代の訓練後の一杯を入れ続けてるっていうわけです」

 「そう…… とても……いいお話をありがとう……」

 雪は、じっと聞き入っていた沈黙を破ってそう言った。目が少し潤んでいる。

 「ああっ! もう、時間過ぎてしまいましたね。ちょっと出すぎなかったかな? ん、大丈夫みたいです。月並みな話でしょう? けれど、私には一生を決める大切なことだったんです。
 でも、森さん。古代は、あの訓練学校時代、目の奥にいつも暗く鋭いものがあるように見えました。両親を亡くして自分は不幸のかたまりだっていうような…… 外見は明るくてそんなそぶり、全然見せてませんでしたけど……」

 「…………」

 雪は、ヤマトで初めて進にあった頃のことを思い出した。たしかにそんなことを雪も感じた覚えがあった。

 「それが、ヤマトに乗って久しぶりに会った時、その暗さや嫌な鋭さが全く無くなっていたんです。目の奥には明るさがありました。森さん、あなたに出会って古代は安らぎを見つけたんですね。古代が本当に必要とする人に会ったんだなって…… そう思うと私もうれしかったです」

 平田のやさしい心遣いが雪にはうれしかった。

 「平田さん…… ありがとう。私も古代君をいつまでも愛して大切にしていくわ。平田さんも……ね!」

 「はい。さ、艦長がお待ちですよ、早く持って行って下さい」

 (6)

 「艦長、お茶を持ってきました」 雪が艦長室をノックして言った。

 「どうぞ」

 「遅かったな。もう、寝ちゃったかと思ったよ」

 進は雪に笑いかけた。

 「ごめんなさい。平田さんが、残ったお茶を処分してしまってて、また新しく入れてくれたのよ」

 「なんだ、そこまでしてくれなくてよかったのに……」

 進が苦笑する。平田の心配りが嬉しくもありこそばゆくもあった。

 「でも、そのかわりにとってもいい話を聞いてきたのよ。平田さんのあなたに入れるお茶が特別美味しいわけ……」

 雪が微笑みながら、さっきの話を思い出して言うと、進にもすぐ、どんな話を聞いたのかがわかったようだった。

 「ん? ああ…… トイレ掃除の話かい?」

 「ええ、そう。あれやこれや…… ふふふ…… あなたらしい話だったわ……」

 「昔の話さ…… 俺も熱かったからな。意地でも一人でトイレ掃除をやるって言ったりしてね」

 「でも、そのおかげで素晴らしい生活班要員ができたんですもの。ね、艦長!」

 「ははは…… しゃべってないで、お茶でも入れろよ。雪も一緒にどうだ?」

 「ええ、お相伴するわ。平田さんの紅茶……」

 「なあ、雪。二人でいるときは、古代でいいよ。艦長って言うのはちょっと面映くて……」

 公私混同を嫌がっているのは進のはずなのに、そんなことを言い出す進に雪はなぜかほっとした。

 「うふふふ…… いいの? わかったわ。こ・だ・い・く・ん!」

 雪と進は、カップにいれたレモンティーを味わってのみ、今日一日が無事すぎた事を喜んだ。
 だが、このレモンティーが、平田にいれてもらう最後のレモンティーだということを、このときの二人はまだ知るよしもなかった。
 

数日後、宇宙に抱かれて永遠の眠りについた平田に対して、進は惜別の涙を惜しまなかった。

お わ り

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(背景:Giggurat 写真:地球屋)