今日は、なんの日?


時は2205年夏。平和を取り戻した地球では、一組の新婚夫婦が暑い夏を熱くすごしていた……!?






ふうっ、暑いなぁ〜

もうそろそろ8月も終わりだってのに、まだまだ暑い日が続いている。

健康のために、冷房はできるだけかけないほうがいいのよ、なんて雪は言うけど、やっぱり暑いものは暑い!
開いた窓からは、風が入ってくるとはいえ、その風だって爽やかとは言いがたい。

そんなこんなで、リビングで、ランニングとパンツ一丁で、大の字になってうだっている俺がいた。

「はぁぁぁ、暑いなぁ〜〜〜〜!」

思わず口をついてしまった俺の頭の上から、声がした。

「どうしたの? 進さん」

顔を上げると、それは当然ながら、我が家のもう一人の住人、つまり俺の奥さんの雪だ。

ちなみに、俺たちはまだ新婚半年あまりのアツアツカップル。

え? 夏にアツアツなんて暑苦しい? 気にするなって! そっちのほうはいくらアツくてもいいことになってる!

けど、やっぱり暑いもんは暑いな、ははは……

「あ? ああ、どうにも暑くてさぁ」

むっくりと体を起こした俺の前に、雪もすこんと座った。

「ふふふ、そりゃあ夏ですもの」

やっぱり彼女も暑いのか、薄いタンクトップとショートパンツ姿。タンクトップの下は何も付けてないみたいだ。う〜む、絶対に来客があっても玄関に出せない格好だよな。

それにしても、胸元の膨らみがなんとも悩ましい。じゅる……

おっと、待てよ、今はまだ真昼間。それに、昨日の晩もたっぷりと……とっとっと、まあ、それは今はいいとして……

「ちょっと冷房かけていいかなぁ?」

俺は恐る恐るお伺いを立てた。できるだけ冷房はかけないようにといいつつも、この暑さには、さすがに雪も反対できなかったようだ。

「そうねぇ、かけてもいいけど、緩めにね」

「りょうか〜〜い!」

女房殿のお許しが出て、俺はさっそく窓を閉めて冷房をかけた。

しばらくすると、涼しい風が部屋の中に充満してきた。ほっと一息。

「はぁ、生き返った」

「まあ、大げさね、うふふ……」

満足そうな俺を見て、おかしそうに笑う雪も、やっぱり涼しくなって気持ちがいいみたいだ。

「今年も残暑厳しいからな」

「ええ、でも暑さをたっぷり感じるのも、たまにはいいことよ」

「ええっ? 暑いものは暑いぞ!」

「だって、ごく普通に四季を満喫できることだけでも、とっても幸せなことだと思わない?」

突然、雪が真面目な顔になってそう言った。

そう言われてみればそうだったな。俺もすぐに雪のその気持ちはわかった。

確かにほんの数年前までは、放射能のせいで四季どころの話じゃなかった。

あの頃は、暗い地下都市で、いつも同じ温度で一年中を過ごしていたんだ。四季のある日本の季節が、どんなに恋しかったことだろうか……

「そうだな、あの頃に比べたら、この暑さもありがたいってことか」

「ええ……」

二人して、あの頃の辛かったことを思い出してしんみりとした。

それからしばらくて、急に雪が嬉しそうな大きな声を上げた。

「あらっ? そう言えば確か今日は8月25日ね?」

見ると、雪はカレンダーをじっと見つめている。

「ああ、そうだけど、なんかあったっけ?」

リビングにかけてあるカレンダーには、特になんの印もついていなかった。

確か今日は……お互いが休暇だということ以外は、何も予定はなかったはずだけどなぁ?

「うふふ…… そうかぁ、今日は8月25日だったんだわ」

やけに嬉しそうにニマニマと笑い出す雪。その笑顔の意味が、俺にはさっぱりわからなかった。

「なんだよ、急に。何があるんだよ?」

「あ〜ら、あなたったら覚えてないの?」

問いただす俺に、雪はちょっと眉を吊り上げてから、意味深な顔をした。

「はぁ? 覚えてないって、何を?」

「だから、今日は、私たちにとってはとっても大事な日なの、うふふ……」

何を思い出したのか、すごく嬉しそうな顔で笑っている妻を見つめながら、俺は急に背筋がぞくっと寒くなるのを感じた。

それは、決して冷房が効き過ぎて、ではない。

つまり、その……あれだ。

俺はまた何か、二人にとっての大事な記念日を忘れたんじゃないかと思ったわけだ。

俺は考えた……

えっと、結婚したのは今年の1月で、まだ記念日は来ていないし、雪の誕生日は来月だろ? でもって俺のはもう終わったし……

ちょっとひねって、初めてのえっちの日ってのは? いや、アレは秋だったよなぁ〜

それとも、初デートとか初キッスとか? いや、これも違うな。

う〜〜ん、こんなクソ暑い日に、俺たち何やってたっけなぁ??? わからん!

「えっと…… その、なんだ……」

なんの日だかさっぱりわからず、ごまかしていると、雪はふうっと小さく息をついた。

「やっぱり男の人ってダメねぇ」

雪に冷めた目で見られて、俺は少しばかり落ち込んだ。

だから、俺にそ〜ゆ〜たぐいのことは聞くなって言ってるだろ!……と言えればいいんだが……

「うっ……」

やっぱり俺には返す言葉が出なかった。すると、雪は今度はほのめかし作戦に入った。

「おぼえてなぁい? もう6年前のことよ!」

「6ねんまえ〜〜!?」

おいおい、いきなり6年前かよ! そんな前のことなんて、一日一日いちいち覚えてるわけないだろ! それにあの頃って、まだ地球が放射能に覆われてた頃じゃないのか?

第一、俺たち出会ってたっけ?

「もうっ、大切な日なのになぁ」

俺が見当もつかないって顔をしたら、雪はすごく残念そうな顔をした。

「だから、6年前って言えば、まだヤマトが飛び立つ前だろう?」

「そうよ、ヤマトがイスカンダルへ初めて航海に出た年よ」

そうか、やっぱり6年前ってあの年だったんだ。けどなぁ〜

「ってことは、俺立ちまだ出会ってないじゃないか」

「そうだったかしらぁ?」

といいながら、雪はまた意味深にふふんを笑う。もうっ、笑ってねぇで、いいから早く教えろって!

「出会う前から二人にとって大事な日なんて……?」

想像がつかなくて困った顔をしていると、雪が顔をぐいっと俺の目の前に突き出した。

「ほんっとに出会ってなかった?」

「え? いや、まあ、子供の頃会ってたから、出会ってなかったわけじゃないけど……」

そう、俺たちは子供の頃、偶然三浦の海で会ってたってことが、去年になって初めてわかったんだ。あんときはびっくりしたよなぁ〜

その頃から、俺たちは出会う運命だったんだって思うと、とっても嬉しかった……が、今日はそれではなかったらしい。

「そうじゃなくって! 8月25日よ!」

「だから8月25日だろ? ヤマトが発進したのは10月初めだったから、それよりひと月以上も前のことじゃないか」

「ええ、じゃあ、冥王星での決戦は?」

突然の雪の質問に俺は驚いたが、彼女のほうは、ワクワクしたように目をキラキラさせている。

冥王星決戦がどう関係するんだ?

「え? 冥王星って? あの日本艦隊が惨敗した奴だよな」

「ええ」

「えっと、待てよ、あれは……確か8月の21日だったはず」

「そう。そのあと、あなたと島君は、サーシャさんのカプゼルを拾って、帰還途中の沖田さんの艦に同乗して地球に戻ってきたのよね?」

なんとなく誘導尋問ぽい感じで、雪は俺が地球に帰還した日のことを思い出させたかったらしい。

「ああ、そうだ。それが確かあの4日後だから、あ、そっか、25日だ!」

「ということは……?」

その時、カキ〜〜〜〜ン!と大きな音が、俺の頭の中でなったような気がした。

ああ、わかった!わかったぞ!!!

「え? あっ、ああっ!!」

そうか、そういうことだったのか。あれが8月25日かぁ〜〜

「うふふ、そういうこと!」

「そっか、そうだったっけなぁ〜」

思い出してみると懐かしい。俺はあの日の出来事を脳裏に思い起こしていた。

「そうそう、あの時はただ廊下ですれ違っただけだったけど……」

「俺と島は君に見とれちまって、ポケッと立ち尽くしてた」

「うふふ……」

見とれてと言われたことが嬉しかったのか、雪は満面の笑みを浮かべた。

「そっか、あの日が6年前の今日だったのかぁ〜」

やっと思い出した俺に、雪も満足そうに微笑んだ。

「ええ、そうなのよ。でも……うふふ、あの時は、ちょっとムッとしてたのよね。何よ、人の事じろじろ見て、いけ好かないわ、なんて思って……」

そう言いながら、雪はいたずらっぽく横目で俺をみた。

それには俺も負けずに言い返した。

「へぇ〜〜 それじゃあ君は、そのいけ好かない奴を、6年後には旦那にしてしまったってわけかい?」

その答えがおかしかったのか、雪はくすぐったそうな笑い声を上げた。

「くふふふ…… そ〜ゆ〜こと! でも、なんだか縁って不思議なものね」

「そうだな。俺もあの時は、君がこうして俺のそばにずっといてくれるようになるなんて、夢にも思ってなかったもんな」

懐かしそうに話す俺の横に、雪が滑り込んできた。

「そうなの?」

雪の手が俺の胸にそっと乗せられた。ドキン……

「けど、あの日以来、俺は君のことが頭から離れなくなった」

見上げる雪の瞳が、何かを求めてきらりと輝いた。

「まあ……」

雪の体が俺の胸に擦り寄ってきて……

「ヤマトで一緒になったときは、心の中でガッツポーズしてたさ」

「うふふん〜」

雪が嬉しそうに喉を鳴らす。

さらに雪の両腕が、俺の首の後ろに回され……

当然体は俺の胸の上に重みがかかり……

彼女の柔らかな二つの膨らみが、俺の胸に押し付けられてふんわりとつぶれた。

ごっくん……つばを飲み。

どっくん……心臓が大きく鼓動し。

もっくり……え〜っとなんだ、なにがだな、その、元気になった!?

しかし、さすがの俺もちょっと焦った。なにせお天道様は、頭の真上の時間である。

「お、おいっ、ちょ、雪……まだ昼間だぞ」

「なにがぁ?」

女房殿のうっとり潤んだ瞳は……

うん、こりゃ120%誘ってる! 絶対に間違いないぞ!!

ええいっ! こうなりゃ、受けて立たないわけにはいかないぞ。よぉ〜っし、ふっふっふ……

「ったく、誘われちまったものは、受けねば男が廃るってもんだな」

「あ〜ら、何のことかしら? んふっ」

とぼけやがってこの野郎!……と思いつつ、俺の顔はもうすっかりニヤケテル。

「問答無用! じゃあ行くぞ! 出会って6年目の記念日の……」

言うが早いか、俺は彼女を押し倒し、手は彼女のタンクトップの下の膨らみをむんずと掴んでいた。

「ああ、はぁ〜ん……」





ったく真昼間っから、リビングで何やってんだ、お前らは!

……て言うのは、なしだぜ!

なんたってここのオーナーは、俺たちが夏に負けないほどアツアツしてるのが、お好みなんだからさっ!!

ちゃんちゃん(^^;)


 出会って6年目のお二人さんは、幸せ一杯ルンルン新婚カップルとなっておりました……とさ!(笑)

 当サイト6周年の記念作は、とんでもない与太話になりました(^^;) でもまあ、こういうサイトですからそれもいいでしょう?ねっ!(笑)
 なぁんにも考えず、笑ってやってくださいませ。

 ということで、何はともあれ、『古代君と雪のページ』は、6周年の日を迎え、7年目に突入することが出来ました。
 これからも、あきもせず、二人のラブラブ話を書いていきたいと思いますので、お暇な方はこれからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

2006.6.21 あい

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