か・あ・さ・ん……

 88888HITのキリ番GETのミカさんから、イラスト付きでのお話依頼は、『雪ちゃんに甘えまくる古代君』。しかも、とても具体的にお話を提案してくださいました。
 ちょっとあいワールドの古代君では想像できないくらいの甘えんぼ具合は、雪ちゃん大ファンのミカさんワールドならでは……かな?
 ってわけで、これはあいワールドとミカさんワールドの融合世界、アナザーワールドの二人です。



 古代進、ただいま休暇中。結婚して数ヶ月。まだまだ新婚ほやほやのアツアツムード……のはずだった。

 ところが、残念な事に妻の雪がやたらに忙しい。新しいプロジェクトが始まったとかで、一昨日と昨日は会議で出張。夫を一人家に残して一人旅。その上、夜遅く帰宅すると同時にバタンキュー。待ちぼうけの夫はそのままフテ寝と相成った。

 今夜こそはと思いきや、その会議の資料整理だとかで遅くなると、さっき電話がかかってきた。電話の向こうで申し訳なさそうに詫びる妻の顔を見ていると、強くも言えない。いいよいいよとやさしく言ってみたものの……することもなくて、手持ち無沙汰。その上、実はとても……寂しい。

 いつもなら飲みに行こうと誘い誘われる悪友たちが、揃いも揃って宇宙の彼方で仕事中となると、一人部屋で過ごすしかなかった。
 だが、3日も一人で夜を過ごしていると、さすがに侘しくなってくる。「はあ〜」とため息も漏れてしまう。時計を見ると、午後6時。

 「とりあえず、シャワーでも浴びてから夕飯とするか」

 シャワーを早々に終えた進は台所に立った。が、何か作るのも面倒くさい。雪が冷凍保存してある料理をチンするだけでも面倒で、冷蔵庫を覗きこんで缶ビールを出してプシュッと開けた。
 それから何かツマミはと、冷蔵庫をまた探る。今朝、雪が漬けこんでいたハムのマリネを見つけ、後はきゅうりを丸まんま一本。チーズをひとかけら。

 ソファーにどっかと座ると、ビールをぐびり、マリネを手づかみでむしゃむしゃ、きゅうりをがぶり、チーズをぱくりとやる。

 「晩飯はこれでいいや……」

 ちらっと、雪の怒った顔が浮かんだ。妻が見たら、栄養が偏るだの足りないだのと始まりそうだ。だが、今回は自分が仕事で旦那の世話ができないのだから、文句もあるまい……と進は開き直った。

 ボリッ、はぐっ、ぐびぐび…… なんともいい加減な夕食はあっという間に終わる。目の前のテレビは、ニュース番組をやっている。特に際立った事件もない。平和といえば平和。面白くないと言えば、面白くない。
 一応、宇宙戦士、戦艦の艦長としては、それなりの世間事情も把握しておかねばと、朝と夕方のニュースだけは家にいる限り毎日見るようにしている。

 「ったって、面白くもねーな……」

 雪が一緒だと、つまらないニュースだって、話題になったり、議論のネタになったりするのだが、それも相手がいないことには始まらない。

 古代進、結構一人で夜を過ごした経験はあるはずなのに、雪と暮らし始めてからは、地球の部屋で一人きりというシチュエーションにだんだんと耐えられなくなってきた。

 食事も終えてする事もなく、しかたなく、冷蔵庫からもう一本缶ビールを出してきて封を切った。プシューという音とともに泡が少し溢れ出す。

 「おーっととと……」

 慌てて、口で迎えに行く。口の周りについた泡をなめながら、さて何をしようかと考えた。きょろきょろと部屋を見まわす。別に代わったものは見当たらない。

 ここ数日、妻が忙しくて整理整頓ができないままだ。その辺に脱いだ服や雑誌がちらばってたりする。だが、彼は全く気にならない。歩く場所とごろんとなるソファーの上があいていればいい。どうせ、ちらかしたのは全部自分なのだ。それに、きちんと整理されて閑散とした部屋はそれだけで、もの悲しいじゃないか……

 結局、何も見当たらなくて再びテレビを見た。リモコンであっちこっちとチャンネルをいじくる。

 「たいした番組してねぇなぁ…… ん?」

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(背景:地球屋)