Second Anniversary には花束を……
ピンポーン! 玄関のベルが鳴る音がして、続いてガチャリとドアの開く音がした。
「あっ、進さんだわ!」
今日帰還する予定の進が帰ってきたらしい。雪は玄関に駆けていった。
すると…… そこには大きな花束が?……立っていた。
そう、雪にはまるでそんな風に見えたのだ。胸に抱いた大きな花束が、持ち主の顔をすっかり隠してしまっていた。
「どちら?……さまですか?」
雪が恐る恐る尋ねると、その花束の影から愛する夫の顔がひょこりと現れた。
「すすむさん!」
彼は恥ずかしいのか、顔を紅潮させてもじもじしていたが、びっくりして大きな目を見開いている雪を見て、意を決したように大きく息を吸った。
そして……にこりと笑って言った。
「2周年おめでとう、雪!」
はにかみながら、進はグイッと両手を妻の前に伸ばして、その大きなバラの花束を差し出した。
「えっ!?」
「あれ? 自分たちの事におめでとうってのは、変だったかなぁ? なあ、雪?」
真っ赤な顔で笑いながら、進が言った。しかし、結婚2周年目の新妻は、夫に渡された花束を受け取ると、それを抱きしめたまま動かなくなった。夫の質問にも答える気配がない。
進が首を傾げながら玄関を上がって、妻の顔を覗き込んだ。
「雪……?」
「……あり……がとう……」
ふっと顔を上げた妻の目には、美しい涙が光っていた。
それは、2207年の年が明けてまもなくのこと、古代家の玄関での出来事。優しい夫からの結婚2周年の愛のプレゼントに涙する妻。素敵なカップルの素敵な記念日。
絵に描かれたような光景に、みなさま、古代君って素敵な旦那様になったのね、と思われたことでしょう。
でも…… 本当に……? あの古代君が? それは、続きをご覧になってから。
(写真:風の鈴写真館、切分線:Flowers(現、見晴橋粗材製作所))