037 君へ



朝、目が覚める

外からは明るい朝の日差し……

僕は広いベッドの反対側に

そっと手を伸ばした

その先にあるのは……

君の美しい背中



艶々とした柔らかい髪がかかる肩から

細い腕をなぞって

滑らかに繋がる先は

君の温かな手のひらと

細くてきれいな5本の指

その手をぎゅっと握り締めると

君は目を覚ました



――おはよ……

振り返った君の笑顔は

どんな朝日よりもまぶしく

僕の顔を照らす

僕は目を細めることしかできない

君がまぶしすぎるから



そんな僕を……

君はチョッピリ怪訝な顔で見上げた

――どうしたの?

――いや……別にどうしたわけじゃないんだよ

ちょっとばかり照れてしまって

視線を逸らした僕を

君はじっと見つめている



――ただね……

僕は言葉を続けたけれど

そこで続きをつまらせた

『君がとてもまぶしいから……』

ただ……

そう言いたかっただけなんだけど

僕の口からは

その言葉が素直に出てこなかった



それは

いつものことではあるけれど

僕の口は

愛の言葉をつむぐには

やけに不器用で……

心の中では

こんなにも君の事を思っているのに

こんなにも……君への想いを

たくさんの言葉にして温めているのに

僕の口からは

うまくこぼれてこないんだ

自己嫌悪……



けれど君は

なぜだかとても嬉しそうに微笑んだ

――うふふ……変なひと

そう言って君は微笑んだ

その笑顔に僕は勝手に思うことにした

多分……きっと……君は

口に出して言えなかった

僕の想いをわかってくれたんだって



なぜなら……君は

僕の胸元に寄り添って

僕が大好きなとっても甘い微笑を浮かべてくれたから

それから……

華奢だけどあったかな体で

ぎゅっと抱きしめてくれたから



それから僕が大好きな

とっても耳に心地よい声で

好きよ……って

囁いてくれたから……



君へ

世界中で一番大好きな君へ

たった一つ願い事を言おう



お願いだから

いつまでもその笑顔を

時々でいいから

僕のために……

僕だけのために向けてくれないかい?

それだけで僕は

こんなにも幸せな気分になれるんだから……



結局

またしてもそれを言葉にできなかった僕は

その気持ちを体中いっぱいに込めて

君に負けないくらい

強くぎゅっと抱きしめた



君が嬉しそうに

んふふ……と喉を鳴らす

朝の日差しが

優しく僕らを包んでくれていた



Fin



 気持ちいっぱい、だけど口下手古代君の巻……(^^;) ま、今更のことじゃないですけどね! ほとんどシリーズ化してますし、雪ちゃんもよぉ〜〜〜っくわかってることですわ(笑)

『でもね……たまには、ちゃんと言葉にして欲しい時もあるのよねぇ〜』(by 雪ちゃん)(*^^*)
あい(2006.2.1)

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(背景:pearl box)