049 あこがれ


生活班長、僕のあこがれの人が誰だか、ご存知ですか?






あれはもう3年前になりますね。

僕が宇宙戦士になりたいと思ったのは、イスカンダルから帰ってきたヤマトを見てからでした。

TVでインタビューを受けていたあの頃の艦長が、言葉少なに、そして自慢などひとつせず、とっても真面目に応対している姿を見て、あんなに若いのに凄い人だって感動しました。

それから、艦長のことやヤマトのことをもっと知りたくて、ヤマトの特番を何度も見たり、ヤマトの活躍を記した伝記を見つけては読み漁ったり。

そしてその度に、艦長の戦闘班長時代の活躍話に興奮し、心踊り、血が騒いだことを良く覚えています。

一生懸命に今も地球を守ってくれているであろう艦長たちヤマトクルーの人たちを知って、僕もそんな人間になりたいと思うようになったんです。

僕はその後すぐ少年宇宙戦士訓練学校の願書を手にしました。



それからの艦長とヤマトの活躍も良く知っています。

一時は地球の命令にも背いて宇宙平和のために飛び出していったことも……

占拠された地球をひそかに抜け出して、ヤマトで敵の本拠地まで行って帰ってきたことも……

全部全部、すごいと思いました。

だから僕はいつか艦長みたいに、戦艦を動かしてみたいと思うようになったんです。

僕は艦長にあこがれてこのヤマトに乗ったんです。

この前、訓練学校に艦長が来られて面接した時は、天に昇りたいくらい嬉しかったです。

艦長に会えたのはもちろん、あこがれのヤマトに乗れるってことになったんですから……

僕はあこがれの艦長とヤマトに出会えることを心から楽しみにしていました。



だから僕のあこがれの人は、この3年余り、艦長だったんです。でも……






あなたに初めて会ったのは、僕がヤマトに着任した日でしたね。

あなたの第一印象は、ふたつ……

ひとつは……ごく素直な反応。

戦艦にはとても似合わないほどの……すごくきれいな人だなって思いました。

そしてもうひとつは……爆発的な怒りっていうんでしょうか?

「なんでこの俺が女の下で働かなきゃなんねぇんだ!」って…… ほんとマジで憤ってましたから。

だって僕は、艦長の下で働きたくて砲術班を希望していたんですから。



でも……

そのふたつ目の印象を覆すには、時間はかかりませんでしたよ。

誰もがあなたを尊敬の眼差しで見ていたし、あなたの指示には……そう、あの艦長でさえ、素直に従っていたんですから。



正直言って、僕はすごく驚きました。

だって、艦長は僕が目指していたあこがれの人だったんですよ!

それに戦艦では艦長が一番偉いんだって思ってましたから……

いえ、本当にそれに間違いはないんけれど……



あなたのおかげで、生活班に配属になってからの僕は変わりました。

あなたと一緒に仕事をするようになって、僕は今まで知らなかった戦艦の本当の姿を見たような思いがします。

表から見える華々しい戦いだけが、戦艦の姿じゃないってことを、僕は初めて知りました。

戦艦が円滑に機能するために必要なのは、僕ら生活班の仕事なんだってことを……

狭い艦内での長い航海の中で、人と人が快適に暮らしていくために必要なことが一杯あるってことを……

そんな気配りと心遣いを、あなたはさりげなく、本当にさりげなく、こなしていくんですよね。

あなたの仕事振りを見て、僕は本当に素晴らしい人に出会えたと思いました。



それから……

僕は、仕事以外でもあなたという存在に深く惹かれてしまったんです。

あなたの役に立てる人間になりたくって、僕は何もかもそれはそれは一生懸命頑張りました。

あなたは僕の上司で、あなたにとっては僕は、まだまだ取るに足らない人間であったとしても、

いつかは、あなたから認められ、一人の男として見てもらえるかも知れないと、

それだけを心の糧に過ごしてきたんです。

いつかあなたが、僕のことを振り向いてくれるかもしれないっていう淡い期待を胸に……

仕事に励む理由としては、ちょっと動機が不純だったかもしれませんけど。



だけど……

とんでもない事実が、今頃になって僕の知るところになりました。

艦長は……

艦長が、あなたの恋人なんですってね? いや、恋人だけじゃなくって、地球では一緒に暮らしてて、結婚の約束もしていて……

この話を聞いた時、僕は気が遠くなりそうでした。

最初は信じられませんでした。

だって艦長は、いつもあなたには厳しいことばっかり言ってましたから。

艦長とあなたとは仕事の話以外にするのを聞いたことありませんでしたから。

あなたが艦長のこと、ものすご〜〜〜く気にして気を配ってることは知ってましたけど……

もしかしたら、あなたの片思いなんじゃないかって思ったくらいでしたから。

もちろん、あなたが頑として主張することに、艦長が最後は負けてたことだけは、ちょっと不思議に思いながらも、それがあなたの実力だって思ってましたけど。



でも……違ってたんですね。

二人の関係を知った僕が、あなたと艦長を観察する機会が増えてきてからは……

僕、気付いたんですよ。

あなたが艦長に接する時にちらりと見せる女らしい仕草と、生活班長として以上の優しい心遣いを、

そして……!こっちの方が驚いたんですが、

艦長がこっそりあなたを見るときに見せる、なんともいえない優しい眼差しに……

僕は強く感じました。

あなたと艦長が、本当はとっても愛し合っているんだってことを、

二人の絆がとても深くて強いものだってことを。

だから、僕があなたに振り向いてもらえることなんて、絶対にありえないことも……



けれど、僕は今もはっきりと宣言できます。

今も艦長に、あこがれています。

一緒にヤマトに乗ってからもっと凄い人だとわかりましたし、だからこそ、少しでも近づけたらいいなって思っています。

でも今は……

あなたほど優しくて強い人はいないって思っています。

僕はもちろん、ヤマトのクルーの誰よりも、いえ、艦長よりもずっとずっと……です。

そう、あなたには、まるでこのヤマトを包み込んでいるような大きな愛を感じます。

僕は、あなたが好きになりました。



人間として、女性として……

僕のあこがれの人は、生活班長、あなたなんです……



大好きです…… 雪……さん……

決して口にできないことかもしれないけれど、

絶対に届くことのない想いかもしれないけれど、


僕は……決して後悔していません!!

おわり


届かぬ思いに胸熱くする土門君です(^^;)
本編じゃあ、そんな思いに身を焦がしてたなんて話はちっとも出てこないんですが、私の中ではこれがもう当たり前になっちゃってまして……

今までに何度も彼の思いは書いてきたんですが、何度書いても、お姉さん(いや、おばさんだろって!?)応援したくなっちゃう〜〜!って思っちゃいます(爆)

それだけに、IIIラストの土門君を思うと、辛いですね〜〜〜
あい(2004.9.8)

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