058 さよなら〜永遠の別れ〜


 
さよなら……




遠く……

永遠の国へ

遠くへ旅立って行ってしまった人に

僕がこう告げるのは

もう何度目だろうか……



最初のさよならは


僕にとって一番大切な人たちだった

お父さん……

お母さん……

もっともっと一緒にいたかったのに

もっともっと教えてもらいたかったのに

もっともっと……

何もかも僕には必要だったのに……

突然いなくなってしまった二人に

残された僕の心には

ふさぎきれない大きな穴が

ぽっかりとあいた



何年もの年月がたち

僕の心の穴が少し埋まりかけた頃

その穴を一番頑張って埋めてくれた人がまた

遠い国へ行ってしまったと聞かされた

さよなら……!?

やめてくれ!!

そんな言葉なんて

ちっとも言いたくなかったんだ!

僕はまだ

これからもまだ

ずっとずっと頼りにしていたかったのに……

兄さん!!



それからは戦いの日々

一緒に戦い続けた仲間たちに

何度さよならを言わなくてはならなかっただろうか

何度帰ってきてくれと

その命をすがったことだろうか……

だけど誰もが戻ってきてはくれなかった

ただ僕の夢の中で

哀しそうな笑顔を返してくれただけだった



それは……

太陽系のはずれの星で

マグネトロンウエーブの星空の中で

七色星団の輝きの中で

哀しき最期を迎えたガミラス星で

ダイヤモンドの山で……



友であり仲間であり同志でもあった彼らは

その中で散っていった……

帰ってこない彼らのために

僕はその都度ただ一言

さよなら……と

小さくつぶやきながら涙するしかなかった……



それからやっとたどり着いた

僕らの希望の星で

さよならを言ったはずの兄さんに出会えたときは

僕の心に大きな夢と希望とがわきあがった

戦いも終わってこれからは

僕はもう

さよならって言わなくてすむんだと……

そう思ったら

無性にうれしかったことを

今も忘れはしない

それなのに……



夢にまで見た我が地球を目前にしたときに

その悲劇は起こった

それは……

僕にとって何よりも大切な人との

さよなら



心密かにではあるけれど

旅の中でその優しさと美しさを感じ

心から愛した人がいた

その人に

さよならを言わなくてはならなくなったあの瞬間

僕の心は……

穴があくなんて生易しいものではなかった

一瞬にして凍り付いて

二度と……

永遠に融けない氷に覆われてしまったような

そんな気分だった



最悪の気分!最低の気持ち!

もう自分が生きていることさえも

疎ましく思えたあの瞬間

さよならなんて

全然言いたくなかった!

それよりも一緒に連れて行って欲しかった

それがその時の……

まごうことなき僕の気持ち



そんな僕に

地球からの光明が差して

奇跡が起こる



そう……

愛する人が僕の手に

戻ってきてくれた!!

希望の星で兄を再び手にした僕が

母なる星で

愛する人を再び手にすることができたんだ



その時の嬉しさは……

とても例えようがなくて

どんなものにも変えがたく

今度こそ僕は

もう二度とさよならを言わなくてすむんだと

そう確信した



けれど……

さよならは

やっぱり僕から立ち去ってはくれなかった



僕の愛する人をこの僕に返してくれたのは

彼女の命を再び生へと押し戻してくれたのは

僕が尊敬してやまない彼の人だった

そしてその人は……

彼女の代わりに

静かに遠い世界へと一人旅立っていった



母なる地球を目にして

優しい涙とともに

眠るように……

地球を救うという

最大の任務を全うしたことを

しっかりとその目に焼き付けた

その後で……



さよなら

さよなら……

さようなら……

他に告げる言葉も思い浮かばず

僕は心の中で

何度もそう繰り返し続けた



いつか彼の人に

この日が来ることは

僕らにはわかっていたのだけれど

それでもやっぱり

それは突然で

とてつもなく悲しくて……



僕が心から敬愛する彼の人へ

心からの涙を送りたい

悲しい別れではあるけれど

あなたはきっと

人生に満足を感じて

最後の夜を眠ったのだと……

そう信じているから



ありがとう……

ございました

僕らに大切なものを残してくれて

僕らが大人になるために

その手を差し伸べてくださって

僕らに希望を残してくれた

あなたに感謝の心を込めて

もう一度

言わせてください



ありがとう……

そして

さよなら……と



けれど覚えていてください

あなたの残したものは

永遠に僕らの胸に残り続けるという

そのことを……



本当に本当に

ありがとう……ございました

FIN
 


昨日、ヤマトの楽曲を作曲してくださった宮川泰氏が、急逝されました。今日はその宮川氏への追悼の気持ちを込めて、PART1古代君の思いを綴ってみました。

沖田艦長を見送る古代君の心に寄せて、宮川氏への思いを記しています。

宮川泰氏の作られた数々の名曲は、私の心の中に永遠に残ることでしょう。

謹んで、宮川氏のご冥福をお祈り申し上げます。

(なお、当作品は、PART1終了時点の古代君ということで、この後の展開(完結編での復活)に関しては含んでおりません)
あい(2005.3.22)

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(背景:Holy-Another Orion)