081 星の彼方に


 
夜……

子供達を寝かしつけてそっと子供部屋を出た

賑やかだった子供達の声が消え

ひとりの時間になると

急に……寂しくなる



部屋の窓を開けて空を見上げると

夜の空一杯に星々が輝いていた

あの人は……今

遠い宇宙(そら)の向こう

星の海の彼方にある

遠い距離を隔てたあの星に……

私のそばにはいてくれない



ほんの少し前

あの彼方の星まで行ってきたばかりなのに

あなたに会ってきたばかりなのに

もう会いたくて

もう抱きしめてもらいたくて

ほろりと涙が一つ

零れ落ちた



会いたい……あなた

あなたは今何をしているの?

ひとり?

それとも誰かと一緒?



光すら何万年もかかる距離に隔てられた

私とあなた

私がどんなに頑張っても

今の私の心は

あなたには届かない

私のいないあの星で

あなたは今

何を考えているの?



今まであなたはずっと私を

私だけを見つめていてくれた

もうずいぶん前になるけれど

初めて会ったその時からずっと……

結婚してからも変わらぬ愛を

ずっとずっと私に向けてくれていた

どんなに辛い出来事が起きても

あなたの愛があったから

私は強くなれたし

幸せでもいられたの



でも……

でももし……もしも……

あの星で

あなたのその瞳に

他の女(ひと)の姿が映ったとしたら?

あの星で出会ったあの女(ひと)に

あなたが初めて私以外の女性に

愛を感じたというのなら

こんなに遠くにいる私に

それをどうやって止めることができるというの?



いつも……

あなたの愛はまっすぐで

どんなときもまっすぐで

私にだけ向いていてくれた……

いつもいつも……

だから……

ほんの少し前までは

それが永遠に続くものだと思ってた……

そう信じてた

でも……それは間違っていたの?



私にしか感じたことのなかったあなたの愛は

まだ未熟なままで

真の愛を知らないままだったとしたら……?

あの女(ひと)を知ることで

あなたの愛が大人になったのだとしたら?

ああ……

私はあなたを止めることなんて

できやしない……

あなたがあの女(ひと)への愛に

目覚めたというのなら

私にはもう……

どうすることもできない……のよね?



ねぇ あなた

もしもあなたが本当に

私より愛する人を見つけたのなら

私に感じる以上の愛を

他の誰かに感じたのなら

お願い……

隠したりしないで

どうか私に教えてちょうだいね



それはとっても悲しいことだけど

それはとっても耐えられないことでもあるけれど

あなたには

一番愛している人のそばにいてもらいたいから

一番求める人のもとでいてもらいたいから……

胸はズキズキと痛むけど

それが私の……

一番の幸せだと思うから



子供達のことも心配しないでね……

私が大切に大切に育てていくから

あなたの分も一杯一杯愛してあげるから……

ほんとよ……

ほんと……

ほんと……なんだから……

だって私と大好きなあなたの子供達だもの












ううん、うそよ、うそっ!

嘘にきまってるっ!!!

『私』のうそつき〜っ!!



私にそんなことできるはずがないじゃない!

誰かにあなたを譲ることなんてできるはず

ないじゃない……

だって

貴方のいない人生なんて

私には何の意味もない

ずっとずっとそうだった

ずっとずっとそう思ってきたの

そう……

あの日からずっとそれは

私の中のたった一つの真実だった





お願い、あなた

必ず帰ってきて……

私の元へ

私と子供たちが待つ

あなたの故郷の星、地球へ……

そして抱きしめて

あなたの力強い太い腕で……

あなたの厚い胸元に

私の顔をうずめさせて!

お願い……だから





苦しいほどに

あなたを

愛してる……







FIN


これはなんだ!? と言われたら…… はいっ! そうです(^^;) 当サイト常連さんならすぐにピーンときてしまうアレでございます(汗)

もうおわかりになられたと思いますが、あの更新がずっと止まっております某拙作の雪奥様でございます。

この作品は、ちょうど連載が止まっている直後、旦那様と別れて地球に戻ってきたばかりの雪ちゃんの心境になります。

愛する人の幸せを祈る気持ちと、愛する人を誰にも渡したくない気持ち、雪奥様は一人葛藤しているというわけでして……
ううっ、辛いよね〜(;_;)

で、一方のお気楽!?単身赴任中の進旦那のほうはというと、一体どうしてるんでしょうね?
まあそれは、連載が始まってからのお楽しみってことで……

え? そろそろ続きがUPされるのか?……ですって? あははは……あははは…… ただ、笑ってごまかしつつ去っていくあいでした(大爆発!!)


※ この作品は、拙作『ラランドの白い花』Chapter15直後の雪の心境を綴っています。筋の見えない方で、理解したいと思われる方は、お手数ですが、拙作『ラランドの白い花』をお読みくださいませ。
あい(2006.4.24)

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(背景:Holy-Another Orion)