083 プライベートコール


 
彼のいない夜……

自分の部屋に戻って遠い星の彼方の彼を想う

会いたいな……

古代君……



彼は今、木星のガニメデ基地

宇宙では地球と同じ標準時を使ってるから時差はない

時計の針は夜の10時を指している

今ごろ彼は、宿舎に戻ってシャワーを浴びて……

それから、私のためにプライベートコールをくれる

これが彼の基地にいる日の日課……

彼からの電話……まだ来ないかしら?

さっきからわたし

受話器ばっかり見つめてる



プル……プルル……プルル……

電話のベルが鳴る

こんな時間に私の部屋にコールが鳴るのは、きっと

あの人から……





 はい……

 あっ、やっぱり古代君!

 えっ? どうしてわかったのかって? うふふ……それはないしょっ!

 うふっ、それより仕事はど~~お?

 そう、暇なんだぁ~~

 でもいいじゃないの。平和が一番だもの……

 けど?

 だからなぁに? もう、もったいぶらないで言って!

 一日中?

 えっ? やんっ、もうっ!(真っ赤) でも……とってもうれしい…… 私も……おんなじよ

 うん、楽しみに待ってるわ……

 早く……会いたいな……

 (好きよ……)←心の中で



 あ、雪?

 えっ? よくわかったなぁ? なんで……?

 ちぇっ、女ってのはいっつもそればっかりなんだからなぁ。まあいいけどさっ

 ん? めちゃくちゃ暇だな

ああ、護衛艦ったって、全く攻めてくるやつなんかいやしないし、
ただ宇宙の海を漂ってるだけって感じだよ

 まあ、そりゃあそうだけどさっ、けど……

 あっ……いや、なんでもない

 ん、だから、さ、あんまり暇だと一日中…………

……………………………………

君のことばっかり考えてしまうんだ……(真っ赤)

 うん……来週、地球に戻るから……

 ああ、好きなところ連れてってやるよ

 僕も……会いたいよ

心の中で→(好きだ……)
 




ふうっ……

彼女にかけるプライベートコールが終わる……と

突然脱力したみたいになる

かける前はあんなにドキドキしてソワソワしてうれしかったのに……

今はもう、またすぐ彼女の番号をコールしたくなっている俺がいる……

会いたいよ、雪……

電話だけじゃ……画面だけじゃ、全然足りないんだよ

でも……

来週は……君に会えるから



さあ、もう寝よう……君の夢を見ながら……

君に会える日を楽しみにしながら……

おやすみ、雪……
 

FIN
 


 どちらかというとポエム的な短いお話になりました。最初は雪だけ、それから後で古代君だけのバージョンを入れたのが、なんとなく自分的に気にってます(*^^*)
 ちなみに、時期はおわかりだと想いますが、イスカンダルから帰ってきて間もないころ、付き合い始めてしばらくはたってるけど婚約も……まだの頃かな? 一番盛り上がってる頃かも(笑)
あい(2003.9.19)

close

(背景:Holy-Another Orion)