099 Honey Moon



 「まもなく当機はサザンアイランド空港に到着いたします。……シートベルトの確認をお願いいたします」

 飛行機の着陸を案内するアナウンスが入って、僕らは指示通りシートベルトを確認した。

 日本から数時間、タヒチのメイン空港から乗り継いだ小さな飛行機。まもなく目的の島に到着する機内は、期待に膨らむざわめきに囲まれる。

 「まあ、きれい……!」

 君はとても嬉しそうに歓声を上げた。僕もその後ろから君を抱え込むようにして、窓の外を見た。

 小さな窓から眼下を見れば、まるでクリームソーダを一面に撒き散らしたかのような、エメラルドグリーンの海が広がっていた。

 君は振り返ると、まぶしそうに僕を見た。僅かに口元を緩ませて…… そして輝くような明るい笑顔を見せた。

 「どうした?」

 「ううん、なんでもないの」

 それから君はもう一度眼下を眺めてから、うふふと笑った。

 「ほんと楽しみだわ……」

 よかった……

 君の幸せそうな声を聞くたびに、僕は嬉しくなる。

 やっと君を僕の奥さんにすることができて、それから君にごくごく普通の幸せを感じてもらえてるんだなって、思っただけで……

 それだけで僕は、体が震えるほど嬉しくなるんだ。

 何年も待たせてごめん。昨夜も話したけど、いろんなことがあったよな。
 僕が不甲斐ないばかりに、君には本当に辛い思いばかりさせてきたんだ。だから……

 「よぉっし! 着いたら思いっきり甘やかしてやるからな」

 君の体をぎゅっと抱きしめる。

 「きゃっ?」

 突然抱きしめられたのと、唐突な僕のセリフに、君は驚いたように振り返った。そして大きな瞳を開けて僕を見る。

 その視線に答えるべく、僕は同じ言葉を、それもすごく真面目に、真剣な眼差しで宣言した。

 「この旅のあいだ中、僕は君を目一杯甘やかすんだ!」

 ところが、君は全然本気にしてやしない。

 「ありがと!」と軽くいなすと、ただ嬉しそうにコロコロと笑っているだけ。さらに、

 「じゃあ、私もあなたをたっぷり甘やかしてあげるわ」

 なんて、ニッコリ微笑んでくれたりして。

 あのなぁ、ったく…… それじゃあ何にもならないだろう?

 「僕『が』『を』甘やかしたいんだよ!」

 『が』と『を』を必死に強調してみたけれど、君ときたら「はいはい」と笑うばかり。こりゃ、信用されてないな…… 今までの俺の行状のせいだろな? はぁ〜

 まあいいさ。後は行動あるのみ。きっと君に最高の思い出を作ってやるさ。期待してろよ!



 飛行機は無事に目的の島に到着した。小さな島の小さな飛行場だ。君の背中を押し、昔風のタラップの上から見渡すと、そこはまさに南国の景色だった。

 青い空、白い雲、エメラルドグリーンの海、色鮮やかな花々、そしておいしい空気――

 ほんの半年前まで、ここが灼熱の焦土だったとはとても思えない。
 アクエリアスの影響で予想以上に海水の復活が早かったこともあったし、この南太平洋地域は、人々の心の癒すための施設として、いち早く整備されたこともあるが……

 それでも、地球人類の復興への努力は、計り知れないエネルギーがあるんだと、感心させられてしまう。地球の人々は、こんな短いあいだに、地球に再び楽園を作ってしまったんだ。

 そう、ここは楽園。僕らの夢の中に描いていたとおりの美しい南の楽園なんだ。

 僕は、この楽園の景色を全部君に捧げよう。

 「さあ、行こうか」

 タラップから降りた僕は、隣に立つ君の肩をそっと抱きしめた。

 「ええ……そうね!」

 君は目を輝かせて僕の腕を取ると、軽やかな足取りで乗り継ぎのクルーザーが停泊している船着場に向かって歩き始めた。

 よしっ、行こう! 憧れのラグーンにある僕らのためのコテージへ。

 そう、僕らのHoney Moonは今始まったばかり――

Fin


 はい、二人のHoney Moon です(*^^*) もちろんタヒチの某島という設定で…… 本格的なHoney Moonのお話は、後日連載の中で書きたいと思っているのですが、これはその導入部というところでしょうか?
 二人の結婚記念日が近づいてきたところで、なんだか急に書きたくなってしまいました(^^;)
 古代君、ハネムーン中は雪ちゃんをたっぷり甘やかしてくれるそうですから、お楽しみにどうぞ!(笑)
あい(2005.1.13)

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(背景:pearl box)