006 心の変化
みーこさん作



初めて彼女に会ったのは・・・・いや、あれは会ったというよりも<見かけた>といった方が良いかも知れない。

あれは中央病院の廊下だった。
だけど、びっくりしたよな。よく世間では<他人の空似>なんて言うけど、まさにあの時のことにぴったりの言葉だ。

だって、そっくりだったんだ。
その見かけた女の子と火星の美女が。

一瞬、火星の美女が息を吹き返して俺の目の前に現れたのかと思ったくらいだ。

そう思ったのは俺だけじゃなくて、一緒にいた島も同じだったらしい。
それにしても、あの時のアイツの顔・・・
ポカンと口開けてさ、まったく見事なマヌケ面だったぜ、ハハハ・・・。

女の子はそんな俺達のほうを軽く一瞥すると、あっという間に去っていった。

それからはイスカンダルへの航海の準備に追われて、その女の子の事は記憶の片隅に追いやったままで、思い出すことも無かった。

でも、まさかヤマトで一緒にイスカンダルに行く事になるなんて・・・・!
その時の俺は想像もしていなかったのさ。



火星の美女にそっくりだった女の子の名前は<森 雪>。
美人でスタイルも良くて・・・
しかも、ヤマトの<生活班長>で<レーダー担当>ときた。

俺は正直言って、こんな看護師あがりの女の子にそんな大役が務まるのかと思った。
他の乗組員たちは、綺麗な彼女の顔とスタイルにのぼせ上がっていて、中にはチヤホヤする連中までいたからな。

俺は絶対に認めなかった。
あんな<お嬢さん>が俺と同じ第一艦橋で任務にあたるなんてこと・・・。
どうせ何も出来やしない、すぐに根を上げて、ホームシックにかかって『地球に帰りたい。』 なんて言い出すに決まっているさ。

そんな時の女の子ほど厄介なものは無い・・・と思う。
はっきり言って、俺は苦手だ。
女なんていう生き物をどう扱っていいかなんて、わかったもんじゃない。

でも、まぁ、いいや・・・。
同じ第一艦橋勤務と言っても、任務以外の関わりを避けることなんていくらだって出来る。
女の子の扱いは、島や南部のほうが慣れているだろうし・・・。
そうだ、そうだ、必要以上の関わりを持つのは極力避けよう、
・・・・・と思っていた。



・・・・だけど・・・・



「古代君!健康診断には遅れずに来て頂戴!」
「古代君!野菜を残さないで!」
「もうっ!娯楽室を散らかさないでっ!!」



・・・・・何なんだ?!彼女は・・・!

大体、女ってもっと大人しくて、優しくて、儚げなもんなんじゃないのか?!

あれじゃあ、口やかましい学校の先生と同じじゃないか。

『怒った森君もかわいくていいねえ。』
なんてワケのわからない事を言うやつもいたけど、俺にはどこがどうかわいいんだかわからなかった。

それに彼女って、やたら俺にだけキツいように思う。
現に俺に対する態度と島に対する態度は、全く違う。
アイツとは仲良さそうに話すのに、俺に対してはケンカ腰だもんな。
さらに付け加えるならば、もの凄い負けず嫌い、ときたもんだ。

俺が一体、彼女に何をしたって言うんだーーーーーっ!!

いいさ、構わないさ、どんな態度を取られようと、俺は気にしないさ。
どうせ、俺には関係ない。

それに、イスカンダルまでは1年の、しかも未知の航海だ。
あれくらいの気の強さがないと、持たないさ。



だけど・・・・



いつの頃からか、彼女の態度が変ってきた、・・・・ように思う。
具体的にはいつからとか、どんなふうに、・・・とかはわからないけど、視線が変ってきたというか、ケンカ腰な態度がなくなってきたというか。

そして、俺も・・・・

アルファ星に願い事をかける彼女の事を<あんな、おそろしい星に願い事をするなんて、女ってやっぱりわかんねえや>なんて思いながら、つい、聞いちまった。
『何をお願いしたの?』・・・・なんて。

『ある人が私の事を好きになってくれますように、って』

それを聞いたとき、俺の口は俺の意思なんて関係なく動いていた、
『ある人って誰?』・・・・って。

結局、教えては貰えなかったけど、なんだかその相手が誰なんだか気になって仕方がなかったな。島か、南部か、加藤か、それとも真田さんか?

あぁ、どうしてそんなことが気になるんだ?俺・・・!
彼女とは任務以外の関わりを持たないようにするんじゃなかったのか?!

そうだ、そうだったじゃないか・・・・・!!

それにそんなことに気を取られているヒマはないはずだ!
またどこからガミラスが攻撃してくるかわからないし、俺達には地球の存亡がかかった大切な任務があるんだ・・・!!

森 雪のことなんて、いちいち考えている余裕なんて無いんだ!









な、なんだよ・・・・!?加藤に山本・・・・!!
それに島!相原!南部も太田も――――っ!!

お前ら変だぞっ!!

どうしていなくなるんだよ!?

俺と彼女が話していると・・・・!

それに、なんだ!?その何か言いたそうな目つきは!顔つきは!!

う・・・っ!
と、徳川機関長に、真田さんまで・・・・っ!!



わ、わわわ・・・・!!

た、頼む・・・!そんな視線で俺を見ないでくれ・・・・!
お、落ち着かないじゃないか・・・・!

「ねえ、古代君、この前のミーティングのことなんだけど・・・・。」

うわ――――っ!!
来た―――っ!!

し、心臓がドキドキする・・・・。

しっかりしろ!俺は戦闘班長じゃなか・・・!
ガミラス兵と遭遇したって、こんなに緊張しないぞ・・・・!

お、俺、一体、どうしたんだ・・・・!?
何なんだ?この気持ちは・・・・!?

ええい・・・・っ!!

俺個人の感情に俺自身が振り回される時間も、考えている時間もないはずだ!!
俺には、俺達には、ヤマトには、人類の未来が託されているんだ・・・・!

そうだ・・・!そうだ・・・!!そうなんだぞ!!進!!


だけど・・・・









・・・・細かったよな・・・・、彼女の肩・・・・。
・・・・・・俺の手の中にすっぽりと入っちまいそうで・・・・。

か細くて・・・ちょっとでも力を入れたら、壊れてしまいそうだった・・・。

それに・・・・女の子って、あんなに柔らかいんだ・・・。
男でも、細いヤツはいくらでもいるけど、
・・・・・あんなにも違うものなのか・・・・?


あの時、俺の胸に飛び込んで来た彼女を・・・・
俺は本気で守ってやりたいと・・・・思った・・・・。

普段は強がっていても、やっぱり<女の子>なんだ・・・って思った・・・。



・・・・・・。



本当に、マジで・・・・俺、・・・

いつから、こんな気持ちに変ったんだろう・・・・。


初めて彼女を見かけたときは、確かに『綺麗だな・・・・。』って思ったけど・・・。

その後は・・・・。

あの時か・・・・?それとも・・・・あの時か・・・・?やっぱりあの時か・・・・?!

・・・・わからない・・・・、全く、わからない・・・・!!


大切な任務の真っ只中だというのに・・・・、俺は・・・・。

でも・・・・、

彼女にあんなふうに見られるのはイヤじゃない・・・・よな・・・・。
くすぐったいような、照れ臭いような気分になるけど。



それにしても・・・・だ・・・・。

一体、俺のこの妙な気持ちは何なんだ・・・?!

一体、どこから来るんだ・・・・?!



なんだかお互いを意識し始めたようですが、雪ちゃんはともかくとして古代君・・・・。自分の気持ちの変化に自分自身が付いていっていません(^^;

こっそり教えてあげようか?それを<恋>って言うのだよ、こっだい君☆
by みーこさん(2005.12.2)

(背景:Holy-Anoter Orion)

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