025 帰りたい……
「帰りたい…帰ってあなたといっしょに…二人だけのおうちで…あなたと…」
痛々しく、弱々しい声…。
息をするのにも辛い筈なのに…。
美しい瞳に涙をいっぱい溜めて、僕の胸に顔を埋めて震えている君…
僕は思わず抱きしめた。
「帰りたい…」
ヤマトに乗っていて君が僕にこんな風に願い事を言うのは初めてだ。
出来ることなら叶えたい。
いや、帰ろうか。
このまま抱き上げてコスモゼロに乗り込み地球へ…
ここには十分な設備がない。
地球に帰ったら最新の設備と優秀な沢山のスタッフと医療技術がある。
雪は助かるかも知れない…。
敵前逃亡、軍規違反、卑怯者と罵られてもかまわない。
雪が、俺の雪が助かるのなら…。
雪に視線をおろす。
と、同時に顔を上げた雪の視線とあった。
愛しさが込み上げて思わず、
「雪、か・・」
雪、帰ろう地球へ。今すぐ
と言いかけた俺の唇に愛しい人の唇が触れた。
本当に一瞬の、ほんのわずかに触れただけだったが…
「ゆ…き…」
戸惑っている俺の顔を白い細い指がやさしく触れる。
「ありがとう・・・私頑張るから…古代君も頑張って…ねっ…」
にっこりと微笑んでいる顔は神々しい女神…
もう一度雪を抱きしめた。
涙が溢れそうになるのを一生懸命押さえ込みながら、
「雪、必ず必ず帰ろう地球へ。一緒に帰ろうな雪,一緒に…」
それ以上言葉にならなかった。
彼女もただ首を縦に動かして、力の出ない腕で精一杯俺を抱きしめてくれた。
「また、来るから・・・」
愛しい人に口づけする。
今度は熱く、深く、このまま時が止まってしまえばいいと願うほど…
病室のドアが静かにしまった。
「帰りたい…」
彼女の言葉が繰り返される。
―帰ろう、雪。いや、帰るんだ。必ず一緒に。帰るぞ、雪!―
今回古代君の気持ちを私なりに考えてみました。
地球のためだったら自分の事は後回しの彼ですが、でもやっぱり本当のところは・・・
かずみさんの「帰りたい・・・・・・」の古代君を見ながら書いてみました。
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