057 コスモゼロ
みーこさん作




ふう・・・・・・

今日は私の出番はなかったわね。
今日だけじゃなくて、ここ数日私はここでじっとしている。

ということは、ガミラスの影がない。
そう、ヤマトを取り巻く環境は平和だってことね。

それはとても喜ばしいことなんだけど、ちょっぴり私は
た・い・く・つ☆
あら、ごめんなさい、不謹慎よね、私ったら。


え?私?
そうね、自己紹介しなくちゃね。
私はコスモ・ゼロ。
言わずと知れたこのヤマトの戦闘班長、古代 進の愛機。
艦載機隊の人達からは<チーフ>って呼ばれてるわ。


そうそう、こんな時うちのチーフはいつも訓練に私を連れ出してくれるんだけど
今回はそれもなくて、とっても物足りないの。



うちのチーフと言えば・・・
どうしてあそこまでなのかしら?

私もたくさんの若い男性を見てきたけど、
彼は 『重要文化財』、いえ、『国宝』級かしら。

・・・・ちがーーーーう!!

『 宙 宝 級 』 !!

あんなに可愛い彼女にあんなふうに見詰められて
その気持ちにちっとも気付かないなんて。

彼女の瞳はとってもお喋りですもの。
「私、あなたが好きなのよ!」
豪速球ストレートに語っているわ。

ええ、ええ、今にも口に出すんじゃないかと思うくらい。

フツーはあんなふうに見詰められたら、気付くのよ。
フツーはね。

それが証拠に周りの人達は気付いてる。
彼女が彼を好きなんだって。

加藤君だって、山本君だって・・・
そして、メイン・クルーと呼ばれる人達だって。

・・・・・・気付かないのは

そう!チーフ、彼だけなの!!



だからと言って、彼が彼女のことを思ってないかと言えば
それはそうじゃないのよねぇ。

彼女が少しでも彼に近づこうとすると、あの慌てっぷり。

わざと距離をおいているのが、よーーーーくわかるわ。

うまく口が回らなくて、どもっていることだって珍しくない。

語尾がきつくなっているのも、決してわざとじゃないってわかるんだけど・・・・。


時々、大切なものを見るような目で、ここを去っていく彼女の背中をじっと見ている。
そんな時は、いつも私を磨きながら溜息を付いて、
『俺・・・森君には嫌われてるよなあ・・・。』
なんて、呟いていたりするのよ。


・・・・・・・・それなのにねえ・・・・・

あれは不味かったんじゃないのかなぁ・・・・・・。

彼女が私に触れたときの、あの彼の態度は。

もちろん、「触るな!!」

なんて・・・。



戦闘機を操る人間が、どんなに私たちを大切に思ってくれているのかは
加藤君たちを見ていてもよくわかる。

宇宙(そら)を駆ける時、私たちは一心同体。
お互いに命を預けあうのだから。

どちらかにミスがあってもその結果は明らか
運命共同体、ともいうかしら。


自分の愛機を信用の置けるメカニック以外には触らせない人も少なくない。
むしろ、それが普通だと言ってもいいくらい。

戦闘機冥利に尽きるわよ。


彼も普段は自らの手で私を整備し、磨いてくれる。
戦闘の時は、動物的だとも思える直感で指揮を取り、敵を倒していく彼だけど
ここに帰ってきて、私の面倒をみてくれている彼はまるで別人のように穏やかで優しい。



あぁ、それなのにねえ・・・・

あの時の彼女、チーフの大声にビクッ!と肩を震わせて。

そりゃあびっくりするわよねえ。

一瞬、大きな瞳を見開いた彼女に、今度はチーフが驚いた顔をして
小さな声で 『ごめん。』

彼女、そんなチーフから視線を逸らすと、小走りに格納庫(ここ)を出て行っちゃった・・・。

あぁ、少しでも女の子の扱いを知っている男性なら
ああいう場面では後を追いかけるんでしょうけど。

・・・・・・・どー考えても、無理、うちのチーフには無理☆

でも、あの後のチーフの落ち込み具合は凄いものがあったわね。
まるでブラックホールに吸い込まれたみたいだったもの。



あぁっ!!もうっ!!
ほんとにイライラしちゃうわ☆

私が人間の言葉を話せたら、言ってしまいたいわよ、
『あなたたちは両思いなのよ!』って。
おせっかいだろうとナンだろうと。
だって、もう見てるほうがじれったくてじれったくて。



それに、ここのところ彼女の視線が何だか痛いのよね。
最初は気のせいかと思っていたけど。

どう思い直しても気のせいなんかじゃない。

彼女の私を見る目が違ってきているの。

あれは、あれはね・・・明らかに・・・

嫉妬の目☆

はぁ〜〜〜〜、私に嫉妬しても仕方ないでしょ???

でも、あんな切なそうな目で見られると、
こっちまで苦しくなっちゃうじゃない。

確かに古代 進はイイ男よ。
どーしようもなく鈍感で、他に類を見ないくらい不器用でも。
彼女は見る目があると思うわ。

でもねえ・・・この分だと・・・
二人の気持ちが通じ合うのはイスカンダルに到着するまではもちろん
地球に帰りつくまでに・・・
うーーーーん、どうかしら・・・っ?



前途多難???ううん、大丈夫

お節介・・・いえ、世話好きな仲間達もたくさんいるし
何だかんだいっても、みんなふたりが上手くいくことを望んでいるわ。



それに、私にだって好きな人くらいいるのよ。

あ、誤解しないでね
私の好きな人はチーフじゃないから。

チーフも好きよ
だけど、好きは好きでも意味が違うのよ、あの人とは。

あの人はもっと大人で、落ち着いていて・・・・



あ、うわさをすれば何とやら、だわ。
あの人の足音がする。

今日、ここに来るのは初めてね。
うふふふ・・・・う・れ・し・い。



そうそう、あんなふうに鈍で不器用であなたを悩ますチーフだけど
ずっと好きでいてやってね、雪ちゃん☆
応援しているわ。

おわり


楽しいコスモゼロの一人語り……
相棒のことを心配するゼロの心遣い、かわいくてあったかいですね。
古代君は本当に幸せもんです!

でも、ゼロって女の子だったのね〜
さすが、じゃじゃ馬娘だわ!(笑)

なお、この作品は、みーこさん作の『011ライバル』と対応しています。まだご覧になれてない方は、ぜひご一緒にどうぞ!
あい(2008.4.23)

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